語り部シルヴァ

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『マグカップ』

ガシャンと大きな音を立ててマグカップが割れる。
飲み物は幸い入っていなかったが
陶器の破片がかなり散らばった。
小さい頃からずっと使っていたから
そろそろ壊れるかなと思っていたが本当に急に壊れた。

陶器の欠片を一つ一つつまみあげる。
なんだか今まで使ってきた思い出を拾い集めている気分だ。
夏にはアイスコーヒーを、寒い日にはココアを。
何気ない日常の日々の中で嗜好品を味わせてくれた。

初夏なのに冷たくなった陶器は
まるで宿っていた命の終わりのような冷たさだ。

「...ありがとう。」
そう思ったから不意に言葉が零れた。

明日からのマグカップを買いに行かなきゃな...

語り部シルヴァ

6/15/2025, 10:54:06 AM