『水たまりに映る空』
灰色の空、黒い煙をあげる煙突たち。
洗濯しても落ちない汚れを纏った作業服で今日も仕事。
ここ数年ずっと空は曇りっぱなし。
雨が降っても雨が止んでも空は灰色のまま。
今日も雨が上がった。今日こそはと願いつつ外に出たが案の定空は色を忘れていたまま。
あたりに水たまりができていて、少し湿気った空気。
水たまりを覗くと反射した空が映し出されている。
水たまりに広がる何かが反射した空を虹色に染める。
現実の空もこれくらい鮮やかに...
なんてもしもを願うよりも仕事に集中するしか
今を生きる方法が思いつかなかった。
語り部シルヴァ
『恋か、愛か、それとも』
最近ある男が気になっている。
ふとした瞬間にその顔を思い出してはため息が出る。
何度断っても奢ってくるしプレゼントを持ってくる。
申し訳ないから断ってるんだけどなあ...
あ、あと他の女の人と話しているのを見かける度に謝って
「そんなつもりは無いんだ。ごめんね」と言ってくる。
友人に話してみればみんな口を揃えて
「それはアレだね...」と答える。
あの男をの言動を思い返してみる。
最初勘違いをした私がバカみたいに思えてきた。
今日も別の友人に相談してみた。
「そりゃああんたのそれは殺意だでしょ。」
「あーやっぱり?」
私の勘違いは本当に恥ずかしいものだった。
語り部シルヴァ
『約束だよ』
「おじいちゃん...!」
「わしはもうダメじゃ...年は取りたくないものだな...」
ベッドの上のおじいちゃんはいきぐるしそうにわらう。
わたしはなにも言えないままおじいちゃんの手を
ぎゅっとにぎることしかできなかった。
「なあ可愛い孫よ、わしが死んだら悲しんでくれるかい?」
「もちろんだよ!約束!!でもしなないで!」
おじいちゃんの手をさっきよりつよくにぎりしめると
おじいちゃんはやさしくわらいながら
ねむるように目をつむった。
するとおじいちゃんのよこのきかいがピーとなる。
「おじいちゃん...?おじいちゃん!」
おじいちゃんはしんでしまった...
「まさか一日の内に家族が二人も死ぬなんて...」
「こんなことって...神様は残酷だわ。」
周りの哀れむ声がずっと聞こえる。
本当にどうしてこんなことになったんだろう...
そう思っていると夫が前でマイクを
持って涙を我慢する声で話し始める。
「えぇと...みなさん本日は祖父の○○と
娘のかなによる葬儀を始めたいと思います。」
語り部シルヴァ
『雨上がり』
傘に雨粒が弾ける音が止む。
傘を閉じて空を見上げると雨が降りやんだ。
さっきまで聞こえた雨の音が無くなっただけで
すごく静かに感じる。
雲は太陽の光がうっすらと差して
夕暮れの黄金色に染まっている。
雨の匂いと湿気った風は残っているがさっきよりも
気分が文字通り晴れたような気がする。
子供の頃ならスキップしていたかもしれない。
しかし...暑いな。
雨で幾分が気温が下がっていたのが湿気と
日光で蒸し暑くなっていく。
もう十七時過ぎなのにこれから暑くなっていくのかと思うと
さっきまでの雨が恋しくなった。
この蒸し暑さを流してくれるような激しい雨を。
語り部シルヴァ
『勝ち負けなんて』
四本目の矢を放った。
この瞬間に僕のチームの負けが確定した。
悔しい。だが負けたからと言って退出するまでは
雑になってはいけない。
残心、弓倒し、物見返しをして姿勢良く歩く。
退出してからみんなの元に戻る。
溢れ出んばかりの感情を声に出したかった。
けれどここは神聖なる道場周辺。
そんなことは許されないからただ悔しい思いを噛み締め
飲み込むことしか出来なかった。
試合を終え学校へ帰る道中、悔しさがずっと心残りだった。
あの一本さえ当てれていれば...もっと努力をしていれば...
自責の念で視界が狭く暗くなっていく。
そんなとき付き添いで来ていた後輩たちが
フォローしてくれた。
「先輩、最後までやりきった時の姿勢すごく綺麗でした!」
「結果は残念でしたけど、これからもご指導お願いします!」
後輩たちの言葉に励まされ自分が
どれだけ情けないか今気づいた。
過ぎたことは仕方ない。勝ち負けよりも
自分のやりたいことが出来るようになろう。
そうすればいつか自信を持ちつつ
みんなの力に繋がっていくはずだから...
泣きたい気持ちを抑え込み口角をあげて
後輩たちに「ありがとう」と伝えた。
語り部シルヴァ