『好きになれない、嫌いになれない』
私はわがままだ。
どんなときも隣にいてくれる幼馴染がいる。
映画を一緒に行ったり、親が危篤状態だった時も
何も言わず私の手を握ってくれる。
かけがえのない存在だ。
クラスメイトによく「なんで付き合わないの?」なんて
茶化されるのも慣れてしまった。
付き合う...想像できないから。と答えは決まっている。
そもそも幼馴染のことは好きなのかわからない。
ずっと隣にいるから家族のような安心感はあるものの、
クラスメイトの惚気話に私たちを当てはめても想像できない。
一時突き放して嫌いになろうと思ったけど
それも一日で我慢できず謝って事が済んだ。
私は幼馴染を振り回すわがままな人だ。
それでも隣にいてくれる幼馴染の恋人に私は値しない。
好きとも嫌いともとれない二人の距離。
それが私たちだ。
語り部シルヴァ
『夜が明けた。』
空が明るくなってきた。
真っ暗だった窓がどんどん薄い青を足していく。
もうそんな時間になってしまったのか...
動画サイトで動画を流しつつゲームをしていたら夜が明けた。
何もしていないのに達成感があるのはきっとみんなが寝ている中一人起きていたからだろう。
変なプライドだ。
親が起きないように静かにドアを開ける。
玄関を出てすぐ横の犬小屋から今から散歩かと飼い犬が笑顔で顔を出す。
折角だから散歩に行くことにした。
街灯が素早く点滅しながら消えていく。
あっという間に明るくなっていく。
ふわぁとあくびが出て、思い切り伸びをする。
それからようやくあぁ、夜が明けたと感じた。
語り部シルヴァ
『ふとした瞬間』
公園の陽だまりでのんびり空を見上げる。
どれだけ寝ても眠気を誘うこの陽気には抗えない。
そう思う反面、心のどっかで焦りを感じている。
作業服を着ている人、スーツを着ている人。
そんな人たちを見ていると
「何をやっているんだ俺は」と思ってしまう。
それだけじゃない。のんびりしていたりとか
二度寝をしていたりとかそんな些細なことでも
「仕事をしないと」と思ってしまう。
視界の隅が暗くなってどんどん狭くなっていく。
動悸や息が荒くなる...
「また焦ってる。大丈夫だよ。」
ぽんと肩に手を置かれて視界がリセットされる。
視界を向けると優しい笑顔の君が
僕の背中を撫でてくれていた。
「大丈夫大丈夫。今は休む期間だよ。」
その言葉にどれだけ救われてきただろう。
そんな有難みを感じつつも、
やっぱり心のどっかで焦りは募るばかりだった。
語り部シルヴァ
『どんなに離れていても』
どうしようもないほど辛い時はやはり君のことを考える。
今は何しているのだろうか、
君ならどんな風に応援してくれるだろうか。
そんなことを考えると別の自分がそれを否定しに来る。
"そんなだからお前は弱い"
"いい加減その考えは捨てろ"と。
別の自分の方が正しいことを言っているわけだから
余計に悔しさを感じる。
今日も仕事がしんどくて君のことを考えてしまった。
その後に別の自分からの追い討ち。
悪循環だ。さっさと気分だけでも何とかしよう。
お風呂に入って一旦リセットをかける。
何とか落ち着いたから仏壇の前に行き手を合わせる。
「今日はちょっとしんどくてまた君に甘えようとしちゃった。
ごめんね。でもまた明日から頑張るから。」
ここから天国までどれだけ離れていても君のことは忘れない。
けど、一人でやっていけるようにしないと
君が安心出来ないから明日も頑張る。
だから、信じて見守っててね。
語り部シルヴァ
『「こっちに恋」「愛に来て」』
"良ければ会いましょう!"
"ご飯だけでもいかがでしょうか?"
"会おー"
めんどくさそうなメッセージが次々と来る。
別に肌が見える自撮りや話し相手募集した訳でもない。
それなのにこんなに異性からメッセージが来ると
魂胆が見え見えすぎて呆れる。
みんなそんなに飢えているのだろうか...
リアルでそういう経験が無いから
藁にもすがるほどなんだろう。
私にはそういうのは理解できない。
一時の感情で空いたものをひたすら埋めようと
必死になっているのはもはや可哀想に感じる。
むしろ少しでもそういう感情を剥き出しにできるほど
自分に素直なのは羨ましい。
"○○をブロックしました"
"○○はあなたをブロックしています"
"○○ブロックしました"
はぁとポチポチ操作した後全てがめんどくさくなって
アプリを消した。
語り部シルヴァ