『ふとした瞬間』
公園の陽だまりでのんびり空を見上げる。
どれだけ寝ても眠気を誘うこの陽気には抗えない。
そう思う反面、心のどっかで焦りを感じている。
作業服を着ている人、スーツを着ている人。
そんな人たちを見ていると
「何をやっているんだ俺は」と思ってしまう。
それだけじゃない。のんびりしていたりとか
二度寝をしていたりとかそんな些細なことでも
「仕事をしないと」と思ってしまう。
視界の隅が暗くなってどんどん狭くなっていく。
動悸や息が荒くなる...
「また焦ってる。大丈夫だよ。」
ぽんと肩に手を置かれて視界がリセットされる。
視界を向けると優しい笑顔の君が
僕の背中を撫でてくれていた。
「大丈夫大丈夫。今は休む期間だよ。」
その言葉にどれだけ救われてきただろう。
そんな有難みを感じつつも、
やっぱり心のどっかで焦りは募るばかりだった。
語り部シルヴァ
『どんなに離れていても』
どうしようもないほど辛い時はやはり君のことを考える。
今は何しているのだろうか、
君ならどんな風に応援してくれるだろうか。
そんなことを考えると別の自分がそれを否定しに来る。
"そんなだからお前は弱い"
"いい加減その考えは捨てろ"と。
別の自分の方が正しいことを言っているわけだから
余計に悔しさを感じる。
今日も仕事がしんどくて君のことを考えてしまった。
その後に別の自分からの追い討ち。
悪循環だ。さっさと気分だけでも何とかしよう。
お風呂に入って一旦リセットをかける。
何とか落ち着いたから仏壇の前に行き手を合わせる。
「今日はちょっとしんどくてまた君に甘えようとしちゃった。
ごめんね。でもまた明日から頑張るから。」
ここから天国までどれだけ離れていても君のことは忘れない。
けど、一人でやっていけるようにしないと
君が安心出来ないから明日も頑張る。
だから、信じて見守っててね。
語り部シルヴァ
『「こっちに恋」「愛に来て」』
"良ければ会いましょう!"
"ご飯だけでもいかがでしょうか?"
"会おー"
めんどくさそうなメッセージが次々と来る。
別に肌が見える自撮りや話し相手募集した訳でもない。
それなのにこんなに異性からメッセージが来ると
魂胆が見え見えすぎて呆れる。
みんなそんなに飢えているのだろうか...
リアルでそういう経験が無いから
藁にもすがるほどなんだろう。
私にはそういうのは理解できない。
一時の感情で空いたものをひたすら埋めようと
必死になっているのはもはや可哀想に感じる。
むしろ少しでもそういう感情を剥き出しにできるほど
自分に素直なのは羨ましい。
"○○をブロックしました"
"○○はあなたをブロックしています"
"○○ブロックしました"
はぁとポチポチ操作した後全てがめんどくさくなって
アプリを消した。
語り部シルヴァ
『巡り逢い』
『あ』
春の眠気を誘う陽気の下散歩をしていると偶然にも
高校の頃の後輩と出会った。
地元の高校から離れた場所に住んでいたのに
こんな場所で出会うなんて思っていなかった。
この後輩とはよく話が合って部活内、
いや高校内で一番仲が良かった。
ただ関係を壊したくなかったから何も言わず大学に行き
地元を飛び出た。
こうしてまた会えるとは思っていなかった。
話が盛り上がり、空も気付けば茜色に染まり始めていた。
そんな頃合に当時の謝罪と想いを伝えることにした。
「あの頃はごめん...」
「大丈夫ですよ。今ならあの頃の
先輩の気持ちわかりますから...」
「それと、俺ずっと...!」
あともう一言。俺の言葉は詰まりなんでもないと濁した。
後輩は何も聞かなかった。俺の言葉を予想していたんだろう。
後輩の左薬指が夕日を反射して輝いていた。
これ以上は野暮ってやつなんだろう。
「じゃあ、そろそろ帰るよ。また出会えてよかった。」
「私もです。先輩、お幸せに。」
後輩の背を見送ったあと、俺の左薬指の指輪がキツく感じた。
後輩とまた会えただけでも俺は嬉しかった。
それと同時に、もう一生会わないようにと願った。
語り部シルヴァ
『どこへ行こう』
明日急に休みになった。
唐突に訪れた休日を折角だから有意義に使いたい。
さて...何をしようか。
一日中ゲーム...はいつも通りで味気ない。
スマホで近くに何があったかを調べるほど
遊びで外出することはない。
近くにはゲーセン、カフェ、ショッピング...
思った以上に色々あった。
ここに引っ越してきてから数年、
全然開拓していなかったんだなと思い知らされる。
たまには、行ってみようか。
とりあえず調べてみて面白そうな場所をまとめた。
年甲斐もなくベッドでワクワクしてしまう。
明日は良い一日になるといいな。
語り部シルヴァ