『フラワー』
散歩中、ふと足元に咲いていた花が無性に気になった。
低い植木の隅っこに咲いていた花。
真っ白で太陽の光に反射してさらに白く輝いている。
この花の名前をどうしても知りたい。
写真で検索できる機能を思い出して写真を撮って検索にかける。
『ハナニラ』という名前のようだ。
青い筋が花びら一枚に一つあって綺麗な花なのに花言葉が恨みや卑劣といった見た目に反して黒い花言葉があると教わった。
見た目によらないのは花も同じなのかもしれない。
よいしょと立ち上がり、散歩を再開した。
次また気になる花を見つけたら調べよう。
陽気に包まれて気持ちは完全に春。
どんな花を見つけれるか楽しみだ。
語り部シルヴァ
『新しい地図』
「ここが...」
船からゆっくりと足を下ろし数日ぶりに地に足を着く。
ずっと揺れていたせいか踏みしめる大地が
想像以上に固く感じる。
地図の外側にやってきた。
踏みしめた大地に感動して足が少し震える。
受付で新しい地図を端末にインストールする。
知らない地名や新しいクエストなんかの情報に
端末がオーバーヒートするくらいに一気に流れ込んでくる。
どうしよう。すごく興奮が収まらない。
昔は知らない場所に着くとずっとオドオドしていたのに
今じゃ胸の高鳴りを抑えるのに必死だ。
とりあえず今日は宿を見つけて明日から開拓していこう。
この新天地を、僕の冒険の物語を。
語り部シルヴァ
『好きだよ』
春だとこの火照りはさすがに暑く感じる。
お互いの愛情をぶつけ合い、快楽に溺れるように
温もりを感じ合ったあとそのまま君は寝落ちしてしまった。
暑いだろうけど、冷えたら風邪をひいてしまう。
布団をゆっくりかけてあげて一息つく。
まだ息が少し上がっている。
静かに深呼吸をして呼吸を整える。
乱れた髪、程よく焼けた肌、少し掠れた寝息。
改めて見るとやはり彼女は可愛い。
夜の姿を見てこんな一面もあるんだと思うと
彼女にまた惚れそうだ。
もっと見ていたけど、さすがに俺も疲れた...
隣で横になりそっと頭を撫でる。
「おやすみ。ずっと大好きだよ。」
と呟き目を瞑ることにした。
「...私だって大好きだよ。」
眠りについた彼に小さく答え、私も眠りにつく。
うるさい心臓の音が彼を起こさないことを願って。
語り部シルヴァ
『桜』
17時過ぎの空はまだ青空が少し映えてて
オレンジのグラデーションが薄く塗り広げられ、
夕日が住宅街の路地裏に差し込む。
春風が少し強く、桜の花びらが一枚、また一枚と舞い散る。
一日が終わった。暖かい陽気が
少しずつ冷えていく...少し寂しい感覚だ。
今日も頑張った...はず。
自信がないから本当に頑張れたかはわからない。
...桜と夕方で彩られた帰り道に心が洗われる。
うん。今日も頑張れた。そう思っておく。
明日も仕事だけど、きっと上手くいく。
大きく伸びをして気持ちがスッキリする。
お腹も空いたしさっさと帰ろう。
疲れたはずの体はスキップして硬いアスファルトを蹴って
桜の花びらのようにふわふわと
宙に浮く気分の中帰路を目指した。
語り部シルヴァ
『君と』
私が泣いている時は何も言わずそばにいてくれた。
私がうるさく突っかかっても君は無言で受け入れてくれた。
私の気持ちが伝わらなくて喧嘩もしたけど
すぐに仲直りできた。
君となら、何気ない日常が楽しかった。
けど、君の寿命は早かった。
君と今年の春は見れなかった。
何気ない日常が霞んで色が無くなったように
面白みが無くなった。
君との写真を見返しては思い出す。
君が隣にいた日々、君の温もり...
ダメだよね。君ばっかりに頼ってちゃ。
君は優しい日差しの下見守ってくれてると信じて...
「私、君との思い出を絶対に忘れないから。」
君と過ごした日々を大切にして進んでいく。
そう決意した時、滅多に鳴かない君の
「ニャ」という声が聞こえた気がした。
また泣きそうになったけど、
グッとこらえて思い出を仕舞った。
語り部シルヴァ