『ラララ』
家に帰ってすぐ床に体を投げ出す。
フローリングの冷たさがすぐに全身を冷やす。
けれどもう1歩も動けない。疲れた。
頑張って寝返りをして天井を見上げる。
電気の付いていない電球が月のようだ。
目を瞑り叫ぼうとした。
日々の疲れを叫び声で描き消そうとした。
大きく息を吸い...
「...〜♩。」
叫び声は歌声に変わった。
というか変えた。シンプルに近所迷惑だ。
こ疲れた時は歌を歌うのが最終手段になっている。
私の最後の足掻き...
「〜♪。...ぐすっ。」
歌声はどんどん鼻声に変わっていく。
あぁダメだ。今日は無理っぽい。
意識が薄れてきた。
次目が覚めたら全て片付けよう...
睡魔に任せて私はそのまま目を閉じた。
語り部シルヴァ
『風が運ぶもの』
雨粒が傘を叩く音が消えていく。
空がどんどん明るくなっていく。
傘を閉じて空に手のひらを見せる。
手に雨粒が降ってこない。
ちょうど雨上がりの瞬間に立ち会ったようだ。
しっとりした空気が一面に広がる。
晴空の下で風が吹き抜ける。
湿気った雨の匂い。
雨くさい匂いが癖になってしまいそうだ。
風を感じてふと気付いた。
風が寒くない。
あれだけ刺すような痛みを伴う風が優しくなっていた。
風は春も運んできたようだ。
直に好きな桜が見れると思うと
湿気って重くなった足も軽くなりそうだ。
語り部シルヴァ
『question』
「私の事好き?」
「いや。」
「じゃあ嫌い?」
「嫌いだったら一緒の部屋でゲームしてないよね。」
「へへ。じゃあ私の事好き?」
「NO。」
「なんで好きじゃないの?」
「好きを簡単に使いたくないから。」
「ちゃんとした場面なら好きって言ってくれるの?」
「いや?。」
「さっきと矛盾してるよ?」
「ここではい。は言えないから。」
「...ゲーム終わろっか?」
「?はい。」
「ちょっと待ってね?」
「...はい。」
「私は君が好きです。君は私の事好き?」
「うん。大好きだよ。」
「なら、私と付き合ってくれますか?」
「こちらこそ喜んで。」
語り部シルヴァ
『約束』
「ねえ、なんでそんなこと言うの?
"もう会いたくない"って...」
何気ない日常だった。休みの日に会ってお菓子を買って、
2人が好きな動画を見ながらゴロゴロする...
今日だってそんな一日を過ごすと思ってた。
けどどこか元気の無い君のことが気になって尋ねてみると
"もう会いたくない"と一言。
それから理由を聞いても俯いて何も言わない。
「今日は帰って。もう僕らは今日限りで終わりだから...」
君は歯切れの悪い言い方をする。相変わらずこちらを向かない。
やりたいこといっぱいあったって言うのに...!
自分の感情を一方的に押し付けたくなる。けれど震える君を見て全て理解した。
「...わかった。今までありがとう。
けど、これだけ...」
君に抱きつく。君が苦しくならない程度に強く抱きしめる。
君も同じようにしてくれる。
優しさと暖かさに包まれて心地いいはずなのに涙が出る。
「それじゃあさよなら。」
私はすぐさま帰る準備をして君の家から出た。
私たちは付き合う時、ある約束をした。
"彼は余命宣告を受けている。
その日が来た時彼から伝えられ、
私たちは文句を言わず別れを告げる。
そして私は彼のことを忘れる努力をすること"を...
語り部シルヴァ
『ひらり』
寒さが身に染みる。
結構な厚着をしたはずなのに
つま先まで冷えきっているのがわかる。
少し前まで寒さがマシになったと思えばこれだ。
レッグウォーマーでも履けば良かった...
暖かくなって、寒くなって、また暖かくなる。
きっとこの繰り返しをしているうちに寒さは消えていく。
赤くなっただろう鼻をズッとすする。
少し風も吹いてきた。
なんなら雪も静かに降ってきた。
まるで本格的な冬のようだ。
学校に急ごう。
早足で歩いているとひらりと舞う雪は私の鼻にピタリと
引っ付き静かに消えた。
きっと赤いから冷やしてくれたのだろう。
そんな冗談を思いつつ風情ある雪を押しのけて進み続けた。
語り部シルヴァ