語り部シルヴァ

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『風が運ぶもの』

雨粒が傘を叩く音が消えていく。
空がどんどん明るくなっていく。
傘を閉じて空に手のひらを見せる。
手に雨粒が降ってこない。
ちょうど雨上がりの瞬間に立ち会ったようだ。

しっとりした空気が一面に広がる。
晴空の下で風が吹き抜ける。
湿気った雨の匂い。
雨くさい匂いが癖になってしまいそうだ。

風を感じてふと気付いた。
風が寒くない。
あれだけ刺すような痛みを伴う風が優しくなっていた。

風は春も運んできたようだ。
直に好きな桜が見れると思うと
湿気って重くなった足も軽くなりそうだ。

語り部シルヴァ

3/6/2025, 10:43:53 AM