語り部シルヴァ

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2/18/2025, 10:22:18 AM

『手紙の行方』

「おっ、久しぶり〜」

「お〜前に会ったのっていつだっけか?」

「いつだろうなあ〜。」

「というかさ、前に手紙送ったのに
返事無かったけどどうしたの?」

「え?手紙〜?」

「そうだよ。ちょっと前にやり取りしたじゃん。」

「あー!あったね〜!
あれってそっちから終わったんじゃないの〜?」

「違うよ!返事送ったあとに終わっちゃったんだよ。
届かなかったのかな...」

「あー...思い出した〜。」

「え、じゃあなんで返事してくれなかったの?」

「食べた。」

「え?」

「お腹空いてたから食べちゃった〜。」

語り部シルヴァ

2/17/2025, 10:36:13 AM

『輝き』

一面雪景色。
地面も山も木も全部真っ白で、
太陽の光が反射してキラキラと輝いている。
吐く息までも真っ白になって、
目が痛くなるほど目が白で覆われる。
吸い込む息は新鮮と感じるほど冷たく、
肺がじんわりと冷たくなっていく。

あとはスキー板じゃなければ
自由に移動できる開放感で満たされたかもしれない。
今日はスキーをしたいと友人が駄々こねてたので
半強制的に連れて来られた。
出不精な自分からすれば珍しい体験だけど、
寒いしスキー板で思うように移動出来ないし、
1秒でも早く板を外したいくらい。
...滑るのは楽しいと思う。

そう思いながらコースを滑り終えて借りていたスキー板を
返して友達の元へ行く途中何かが背中にボスっと当たった。
「やったー!当たった」
「やってくれたな...?これ勝ったら飲み物奢れよな!」
人の邪魔にならなさそうなところで
タイマンの雪合戦が始まった。

正直最初は早く帰りたかった。
けど、スキーを楽しそうに滑ってたり今の友人の笑顔を
見ていると来てよかったとも思う。
太陽に反射した雪原よりも輝かしい友人の笑顔が眩しく
雪玉を食らってダウンした。

俺の負けだ。温かくてとびきり甘いココアを奢らないとだ。

語り部シルヴァ

2/16/2025, 10:51:28 AM

『時間よ止まれ』


朝から出かけて綺麗な景色を見に行って
神社に行ってカフェでコーヒー。
昼からゲーセンで遊んでカラオケ。
充実した1日だったと思う。
電車に揺られて赤くなった空を眺めながら
満足感に浸っていた。

普段は丸一日出かけることはしないけど、
今日は気分で外に出てみた。
景色だけ見に行こうと思ったけどあれもこれもと
予定を詰めまくってしまってまさか
夕方になるとは思わなかったほどだ。
明日は休みで家から出たくないという
性分もあるんだろうけど...

ぼーっとしていると夕陽がビルの隙間を縫って車内を照らす。
今日は好きなラーメン屋さんにでも行こうかな。

あー...こんな幸せな気分がずっと続けばいいのに。
時間が止まれば...ずっと幸せなのになー。

いや時間が止まればラーメン食べれないな。
電車が止まり降りる駅名をアナウンスしているのが聞こえて
慌てて電車から降りた。

語り部シルヴァ

2/15/2025, 10:30:54 AM

『君の声がする』

-今日は何してたの?-
-本読んでたのとバイト。-
-本って前読んでたやつ?-
-あれは読み終わったから別のだよ。-
-そかそか-
-うん。-

...会話が続かない。
元々部屋で言葉を交わさず引っ付いてそれぞれ好きなことを
したりイチャイチャしたりしていたこともあってか、
メッセージや電話だと全く会話が弾まない。
同じ趣味の話だと盛り上がることはあるけれど最近は
新作が出る様子もなくあんまり話題に挙げない。

遠距離恋愛はしんどいのは知っていたがここまでとは...
愛に飢えやすい自分にとってはものすごい苦痛かもしれない。

「...寂しいな。」
ポロッと零した言葉は心の中で霧となりモヤモヤする。
口には出せどそれを文字に打ち込むことは無かった。
ワガママがすぎるからだ。
遠距離恋愛になる選択をしたのは自分で、
それを応援してくれた気持ちを裏切ることになる。

もっと話したいけど、本を読んでるかもしれないから
邪魔しないように携帯の電源を切って画面を伏せる。

数分経って恋人からメッセージが来た。
...音声ファイル?
"やぁ。...私も寂しいよ。次会える日決まったら教えてね。
全力で予定空けて君との時間いっぱい作るからね!"
恥ずかしそうに喋る恋人からの音声メッセージだ。

...携帯から君の声がする。
それだけでさっきのモヤモヤはより濃くなる。
けれど不快感はそれほどなく、
幸せになってしまうのは君にしかできない魔法なんだろか。

語り部シルヴァ

2/14/2025, 11:18:27 AM

『ありがとう』

残業続きで目が痛い。
けれどこれを終わらせたらやっと休みだ。
上司が俺の事を気遣ってか明日から三連休。
ゲームしてお出かけして昼寝いっぱいして...
やりたいことをとことんするぞ。

「...よし。」
ファイルを保存したのを確認すると思い切り伸びをする。
終電...はもう無いか。
荷物をまとめて帰ろうとすると、
給湯室から明かり漏れていた。

こんな時間に...?
そっと覗くと先輩がコーヒーを飲んでいた。

「お?お疲れ〜。思った以上に早かったな。」
「お疲れ様です。ってなんでいるんですか?」
「いやいや、君と同じく残業だ。
君より少し先に早く終わったからコーヒーをと...
席が近いのに集中しすぎて気づかなかったのか...」

全然わからなかった。それに独り言を聞かれていると思うと恥ずかしくなってきた。
「にしても先輩、先に帰らなかったんですね。
もうこんな時間なのに...」
「なんだ〜?君はこんな時間に女ひとりを
帰らせるつもりか〜?」
「あー...なるほど。近くまで送りますよ。」

それでいい。と少し満足気に先輩は笑う。
「あ、これお礼の先払いね。」
そんなこと言いながら先輩は何かを投げてくる。

「うわぁっととと...これって...」
「ハッピーバレンタイン。いつも頑張る君に選別だ。」

よし、やることもやったし帰るか〜
と先輩は1人歩き出す。
そんな先輩を見て慌てて背中を追いかける。

ホワイトデーは何十倍にして返そう。
もちろん尊敬と感謝という意味で。
勝手にセルフツッコミを入れつつ
足早な先輩に追いつくために早足になった。

語り部シルヴァ

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