語り部シルヴァ

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12/16/2024, 10:38:49 AM

『風邪』

うつらうつらとしていた意識が体温計のアラームで
少し目が覚める。
38°...完全に風邪のようだ。
この時期だからもしやとは思っていたが
本当に風邪を引くなんて...
喉が痛い。熱があるくせに寒い。視界が少し歪む。

冬に風邪を引くと決まって小さい頃を思い出す。
静かな外に加湿器の静かな音、お母さんが
すりおろしてくれたりんごの味。
あのりんごの味を超えたすりおろしりんごは今までない。

お母さんが私を思ってすりおろしたりんご...
きっと親の愛情なんかがあったんだと思う。

大人になってもまた親に甘えたいな...
なんて口が裂けても言えないから
自分で加湿器とりんごを準備し始めた。

語り部シルヴァ

12/15/2024, 10:30:42 AM

『雪を待つ』

外はどんどん寒くなる。
天気予報だとまだ初雪はまだ先のようだ。
窓越しに空を見上げる。
急に雪も降りそうにない晴れた空。

私は雪が好きだ。
雨と違って左右に揺れながらゆっくり落ちていって、
しんしんとして静かになる空間。
そんな景色を見ながらあったかいココアを飲むのが
最近の楽しみ。
あかぎれとか乾燥とかのケアが大変だけど...

雪が好きだと友達に話すと学校が無しになって
帰れると言うからとりあえず合わせてるけど...
ばばくさいと言われるのが目に見えてるから
これでいいと思う。

窓を開けて思い切り息を吐く。
白い煙になって空に消えていった。
寒いのはわかってるけどそれほど雪が降るのが待ち遠しい。

さすがに寒いので窓を閉めてコタツに潜り込んだ。

語り部シルヴァ

12/14/2024, 11:44:48 AM

『イルミネーション』

街はいつもよりさらに煌めいている。
カラフルな電球が街路樹に建物に飾られ、
夜の姿はいつもよりおめかしされていた。

正直イルミネーションの綺麗さはわかんない。
車のライトが眩しく感じるのと同じで、
チカチカと点滅されると目が痛くなる。
それに何より寒い。いつもより着込んだはずなのに
やたらと芯まで冷えるような感覚が続く。
あー...やっぱり帰りたい。
寒いのが苦手だから断ろうと思ったけど...

ちらっと横目で隣にいる先輩の顔色を伺う。
先輩の目は夜の街よりもキラキラしている。
俺に気づいたのか先輩はこっちを向いて
満面の笑みで話しかける。

「寒いの苦手って言ってたのにごめんね!
でも来れてよかった!すごい綺麗で視界が眩しいよ〜」

「そりゃあ良かったです。けど先輩、1人で来れますよね?」

「やだなあ。カップルが多い中1人で来るの虚しいじゃんか。
こういうの誘えるの君くらいなんだし...」
「そりゃあそうですけど...
それなら俺達もカップルに見られますよ。」

ちょっとからかい気味に先輩に返すと、
先輩は今更気づいたのか隠せてない照れ笑いをして
顔を一気に赤らめた。

...先輩の普段見ない一面をみれただけでも
今日は来れてよかったのかもしれない。
なんてクサイセリフは言えないので、
「先輩、顔真っ赤ですよ〜。
もしかして実はデートのお誘いだったり...?」
といつもの調子でからかってみた。

その後、先輩の返答を聞いて、
先輩と同じように顔を赤らめ体の芯まで熱くなった。

語り部シルヴァ

12/13/2024, 11:43:53 AM

『愛を注いで』

「はい、今日のお昼。
朝はお腹すいてなかったの?下げとくね。」
手のつけたあとの無いトレーを下げて、
代わりの料理が置かれているトレーを置く。

「何かあったらこのボタンを押せばすぐに来るからね。」
そう言ってボタンを握らせる。けれどもボタンは
すぐポロッと落ちてしまう。
けれど私がずっと行動すればいつかは満たされる...はず。

「...また来るからね。」
そう言って部屋に戻る。
ここに来てからずっと彼は動かない。
ご飯こそ最初は食べていたが今じゃ全然手を付けない。
けれどきっと、私の気持ちをわかってくれたらその時は...

そう信じて今夜のご飯のメニューを考える。
次こそ彼の胃袋を掴むようなご飯を作って見せよう。
そう思いながら彼の手を付けなかったご飯をかじる。

ベーコンとパンは乾いた音がした。

語り部シルヴァ

12/12/2024, 12:22:56 PM

『心と心』

バッテリーはまだ大丈夫。問題は胸にあるエンジンが
イカれてきてしまった。
我々は人間をもして作られたロボット。
人間の臓器をも見た目そっくりに作られた。
ただ、我々はロボット。
そこらへんは我々が行きやすいように用途は少し違うが...

人間で言う目は望遠レンズ、胃はオイルの濾過装置、
そして心臓は全身のエネルギーを巡回させるエンジン。

現在私のエンジン部分が壊れてきたので人間が壊れた時に
通う病院を模したメンテナンスエリアに来た。
人間はここに心があり、ここが壊れてしまうと
生きていけないらしい。
人間はとても脆い...

それに仮に入れ替えることができても我々で言う
データが書き換えられてしまうことがあるらしい。

だから人間は消えてしまったのだろう...
こんなに素敵な機能や施設を作ったのにとても残念だ。

そんなことをメンテナンス技師に言うと
「我々には成せなかったであろう心があったからだ。
心があるおかげで誰かを救う病院なんかを作って
仲間のために脆い命を犠牲にしてきた。
良くも悪くも心があったからだ。」と返ってきた。

人間はとても儚い生き物。
我々は心を見習うべきか。
新しい疑問と一緒に心について新しくデータに追加した。

語り部シルヴァ

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