語り部シルヴァ

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12/12/2024, 12:22:56 PM

『心と心』

バッテリーはまだ大丈夫。問題は胸にあるエンジンが
イカれてきてしまった。
我々は人間をもして作られたロボット。
人間の臓器をも見た目そっくりに作られた。
ただ、我々はロボット。
そこらへんは我々が行きやすいように用途は少し違うが...

人間で言う目は望遠レンズ、胃はオイルの濾過装置、
そして心臓は全身のエネルギーを巡回させるエンジン。

現在私のエンジン部分が壊れてきたので人間が壊れた時に
通う病院を模したメンテナンスエリアに来た。
人間はここに心があり、ここが壊れてしまうと
生きていけないらしい。
人間はとても脆い...

それに仮に入れ替えることができても我々で言う
データが書き換えられてしまうことがあるらしい。

だから人間は消えてしまったのだろう...
こんなに素敵な機能や施設を作ったのにとても残念だ。

そんなことをメンテナンス技師に言うと
「我々には成せなかったであろう心があったからだ。
心があるおかげで誰かを救う病院なんかを作って
仲間のために脆い命を犠牲にしてきた。
良くも悪くも心があったからだ。」と返ってきた。

人間はとても儚い生き物。
我々は心を見習うべきか。
新しい疑問と一緒に心について新しくデータに追加した。

語り部シルヴァ

12/11/2024, 10:42:19 AM

『何でもないフリ』

「ねえ、今日はいい事あった?」
「えっ!?なっなんでもないよ!!」

唐突に聞かれて思わずバレそうな嘘をつく。
そっかと彼は返してスマホを見始める。
危ない危ない...明日は彼の誕生日でサプライズを
開こうと思っていたが気持ちが先走りすぎたようだ。

飾り付けも完成して明日こっそり飾る準備はできている。
料理も下準備は完了。
明日が待ち遠しいなあ。

明日は彼に喜んでもらえるように頑張るぞ!
そう意気込み掃除を張り切る。


何やら張り切る彼女の背中を見つめながら
明日自分の誕生日だということを思い出した。
彼女が何をしたいかを察したので黙って見守ることにした。

明日はうんと楽しませてもらおうかな。

語り部シルヴァ

12/10/2024, 10:57:58 AM

『仲間』


アビリティの確認、キャラも立ち回り確認。
今日も好きな武器を拾えたらいいなとつぶやくと
「お前のキャラとその武器は合わん(笑)」と
笑われるもなんだかんだあったら教えてくれる。

今日は何時まで遊べるかな。
僕は友達に恵まれた。
だからこうしてメンバーを必要とするゲームで
友達と遊べるのはありがたい話だ。

マイクの位置を調整して深呼吸。
このマッチが始まった瞬間がドキドキする。

「じゃ、チャンピオン目指すぞー!」
「敵は見つけ次第ちぎって投げるぞ〜」

元気のいい声につられて「おー!」と返す。

ちなみに上手い訳では無いので
敵にボコボコにされたのは言うまでもない。

語り部シルヴァ

12/10/2024, 9:50:12 AM

『手を繋いで』

夕焼けを見ることも少なくなった午後4時半頃。
そろそろ帰ろうと伝えるもまだ帰りたくなさそうに
頬を膨らます歳の離れた妹。
また明日もここに来て遊ぼう?
そう言うとどこで学んだか仕方ないなあと
砂埃をはたきながら立ち上がる。

寒い時期なのに公園の砂場で遊ぶ姿はまだまだ若さを感じる。
水道の水で手を洗い、しっかりとハンカチで手を拭く。
よくできた妹だ。
感心していると帰る準備ができた妹が手を差し出してくる。

まだまだ甘えん坊さんでそこがまた愛おしい。
自分の手のひらで包み込める小さな手からは
優しい温もりが伝わってくる。

もう1日が終わるのに妹は今日のこと、
明日のことずっと話し続ける。
元気だな。そんな元気な妹の顔を見てると
こっちまで元気になってくる。

明日も手を繋いで帰れるといいな。
珍しく見えた夕方に妹と共にはしゃいでいた。

語り部シルヴァ

12/8/2024, 10:58:15 AM

『ありがとう、ごめんね』


「...っ」
今回の仕事のアイデアが浮かばずもう三日も経ってしまった。
締切はまだまだ先だが、
三日も無駄に過ごしてしまうと焦燥感が募る。

仕事中はパートナーに部屋に入らないでくれと
伝えている分心配をさせているだろう...
風呂やトイレはさすがに部屋から出るが
それでも話すことは少ない。

何も無いがひたすら頭を捻る。捻り出すものが出てこない。
どうしたものか...
悩んでいるとドアからノックが聞こえてくる。

「ごめん入るね。」
俺の返答を聞かずにパートナーが入ってくる。
「詰まってそうだから、
リラックス出来そうなもの良かったらどうぞ。」

そう言って机の空いたスペースに
いい香りがする紅茶とチョコが置かれた。
普段は仕事の最中にここまですることはない。
それほどパートナーに心配をかけさせていたのか...

「じゃ、お仕事頑張ってね。」
「待ってくれ!」
そう言って部屋を出ようとするパートナーを引き止める。

「ありがとう。それと...心配かけてごめん。」

俺の言葉にパートナーはニコッと笑い
「大丈夫だよ。応援してる。」と応援してくれて部屋を出た。

紅茶の香りとチョコの甘さが脳内をスッキリさせてくれた。
今なら行ける気がする。
滞った分を巻き返して、パートナーにお礼をするんだ。
そう思うとさっきまでの停滞が嘘のように進み出した。

語り部シルヴァ

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