語り部シルヴァ

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12/8/2024, 10:58:15 AM

『ありがとう、ごめんね』


「...っ」
今回の仕事のアイデアが浮かばずもう三日も経ってしまった。
締切はまだまだ先だが、
三日も無駄に過ごしてしまうと焦燥感が募る。

仕事中はパートナーに部屋に入らないでくれと
伝えている分心配をさせているだろう...
風呂やトイレはさすがに部屋から出るが
それでも話すことは少ない。

何も無いがひたすら頭を捻る。捻り出すものが出てこない。
どうしたものか...
悩んでいるとドアからノックが聞こえてくる。

「ごめん入るね。」
俺の返答を聞かずにパートナーが入ってくる。
「詰まってそうだから、
リラックス出来そうなもの良かったらどうぞ。」

そう言って机の空いたスペースに
いい香りがする紅茶とチョコが置かれた。
普段は仕事の最中にここまですることはない。
それほどパートナーに心配をかけさせていたのか...

「じゃ、お仕事頑張ってね。」
「待ってくれ!」
そう言って部屋を出ようとするパートナーを引き止める。

「ありがとう。それと...心配かけてごめん。」

俺の言葉にパートナーはニコッと笑い
「大丈夫だよ。応援してる。」と応援してくれて部屋を出た。

紅茶の香りとチョコの甘さが脳内をスッキリさせてくれた。
今なら行ける気がする。
滞った分を巻き返して、パートナーにお礼をするんだ。
そう思うとさっきまでの停滞が嘘のように進み出した。

語り部シルヴァ

12/7/2024, 12:52:42 PM

『部屋の片隅で』

何もすることがなくて床に寝転がり天井を見つめる。
いや、やることやりたいことはあるが
それらがぶつかり合って何もする気力が無い。

ちらっと視界に入ったギターもやりたいことの一つだ。
最初はワクワクしながらいじっていたのに日が経つ事に
触れる時間が減っていき最終的にはケースから
出さなくなってしまった。
ケースも遠目から見てもわかるくらいホコリを被っている。

いつも行動力はなく、やっと動いてもこのザマだ。
重い腰をあげて手をつけてはすぐに冷める...
そんな繰り返しでやる気が微塵も起きなくなる。

...まだ日は昇っている。
時間はまだまだある。
けれど、こうやって堕落して時間を浪費していく。

変わらなきゃ。
わかってはいるはずなのに瞼は重くなり、
世界は真っ暗になった。

語り部シルヴァ

12/6/2024, 11:44:20 AM

『逆さま』

刹那。時間が止まったようにゆっくりに感じた。
恐怖で顔が歪む君。暗くなり始める真っ赤な空。

なんだ。案外綺麗なもんじゃないか。
だからといってまだ生きたかったなんて思わないけど。
下から上に吹く風は冷たくて乾いている冬の風。
もう体を冷やさないか心配する必要もないって思うと
気が楽だ。

天と地がひっくり返ったかのような世界は
人生の最後にしか見れない絶景だ。
目をつぶれば素敵な華を咲かせれるだろうか。
最後に君の脳裏に焼き付けれるだろうか。

痛いのは一瞬だけ。
そう願いながら目を瞑るとコンセントが抜けた
テレビのように何かがプツンと切れた。

語り部シルヴァ

12/5/2024, 11:13:57 AM

『眠れないほど』

冬の静けさが異様に気になる。
普段なら嫌という程襲いかかる眠気も今日は非番のようだ。
コーヒーも飲んでない。
いつもの寝る前のルーティンも欠かさなかった。

なのに全く寝れない。
どうしたものか...とりあえず寝れない理由を整理してみた。
まず、仲良くしてくれる相手から遊びの誘いが来たこと。
何して遊ぶか、ご飯はどうするか話が順調に進んだこと。
予定が決まって相手がすごく喜んでくれたこと。

...まあ思い当たることしかない。
にしても前日から浮かれすぎではないだろうか。
あまり人とこういう経験をしてこなかったのもあるが、
なるほど...こういう気持ちになるんだな。
今の自分はすごくだらしない顔になっているかもしれない。

明日はきっと楽しい1日になるだろう。
静かで真っ暗な天井を見上げながら心の奥底にある
暖かい感情がゆっくりと眠気を誘ってくれた。

語り部シルヴァ

12/4/2024, 10:40:48 AM

『夢と現実』


「いい加減にしろ!
自分が何やったか話せばいいんだ!
さっさと話せ!」

最近よく夢を見る。
今日は刑事さんと取調室で話をしている。
ものすごく怒鳴られていて、よほど自分が
大罪を犯したかを思い知らされる。

でも、僕は夢の中で何をしたんだろうか。
夢の中で自分が何したかなんて覚えてないけど...

ついに感極まった刑事さんが胸ぐらを掴んできた。
やけにリアルな夢だな...
刑事さんの気迫が凄まじい。
でも所詮は夢だ。あーあ、早く覚めて欲しい。


「あの人、今日もだんまりですね。」
「あぁ、検査の結果夢を見すぎて
今この空間を夢だと思い込んでいるらしい。」

語り部シルヴァ

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