『微熱』
今日はやたらと寒いらしい。
けれど今日はむしろ日差しが暑いせいか秋風が涼しい。
カイロを体に貼ってしっかりと防寒対策が
できているからだろうか...
昨日はしっかりと布団に毛布を被ったはずなのに朝は
暑かったのか蹴り飛ばしていた。
寝相が悪いと風邪をひきかねないから気をつけないと...
しかし...今日は暖かいなあ...
天気予報のお兄さんは寒いと言ってたはず...
お母さんも上着がかかってるのを見てそんな薄着で大丈夫?
と心配していた。
そんな歳じゃないんだから...
そんなこんなで学校にたどり着き教室のドアを開けて
友達におはようと声かける。
友達は私の顔を見るやいなや心配そうな顔をする。
「ねえ...顔赤いよ?寒くない?」
友達の言葉に体が気がついたのか体からは
寒さと熱っぽさが額から感じ始めた。
語り部シルヴァ
『太陽の下で』
酷く疲れた。
家とは違うけど慣れたベッドとシーツの肌触り、
心電図の音。
家族たちの顔。
今日はおじいちゃんも来てくれた。
涙でぐしゃぐしゃになってるみんなの顔に
思わず笑ってしまうほど。
なんでそんなに泣いてるの?
疲れたけど僕は大丈夫だよ。
ほぼ毎日お見舞いに来てくれて嬉しい。
明日も来てくれるかな?
...でもちょっと眠くなってきたなあ...
ちょっと寝るから明日またお話しようね。
窓からさす太陽のせいか目を瞑ると
ゆっくり白い光に包まれていく気がした。
最後に聞こえたのは家族の泣き声と
心電図が一定の音を出し続けていた音...
語り部シルヴァ
『落ちていく』
「桜の花びら舞い落ちる度に風情と哀愁を感じるんだ。」
かつての春。桜が大好きな友人が桜の雨を浴びながら悲しそうに桜を見あげていたことがあった。
その時はあまり共感出来なかった。
今まで花に興味がさすことも自ら花について調べることもなかった。
ただ今年は彼女ができて2人で紅葉狩りに出かけた。
花について詳しく知らない俺を彼女は花の良さを熱弁してくれた。
あまりの勢いに興味をそそられ花を学ぶことにした。
花びらの形、香り、色合い...彼女には負けるが色んな花を知っていくようになった。
道中にはコスモス、キキョウなどの秋の花が綺麗に咲いていた。
それぞれの香りや色が秋を染めていくようで、
ずっとこんな素敵なものを見逃してたと思うと今まで勿体ないことをしてしまったと感じる。
他の花を見ながら目的地付近を歩いている時に彼女が俺の肩を叩く。
「ねえねえ!上!」
彼女の指を指す方を見あげると、紅葉がヒラヒラと落ちてきた。
一、二枚じゃなく数え切れないほどだ。
彼女が両手を広げくるくると回る。
楽しそうで見てるこっちは笑みがこぼれてしまう。
ヒラヒラと舞い落ちていく紅葉を見つめていると
友人の言葉を思い出した。
舞い落ちていく紅葉は風情を感じる。
けれど...地に着いた紅葉はどこか寂しさを感じてしまう。
なるほど...
友人の言葉を今知った俺は寂しさを埋めるように彼女の元へいき一緒に紅葉の雨を浴びた。
この雨の中彼女といれば、きっと寂しさも洗い流せれるから。
語り部シルヴァ
『夫婦』
夢を見た。大人びた君が隣で寝ている。
優しい日差しがカーテン越しに部屋へと行き渡る。
静かな外、君の寝息だけが聞こえる空間。
寝相のせいか寝る前は繋いでいなかった手。
視界も耳も肌の温もりも幸せで満たされている。
これが夢なんだろうな...
あぁ、覚めて欲しくないな。
この景色を目にしっかりと焼き付けていたい。
これから先...一生忘れることなく...
けれど幸せに包まれた体はゆっくりと目を閉じる。
目が覚めたら...君にこの話を...
夢を見た。君であろう視点から私を見る夢。
君はきっと忘れないと思うしこんな素敵な夢を見たって
ふにゃけた笑顔で話すだろう。
1人だと大きいベッドから出て仏壇に線香を添えて鈴を鳴らす。
両手を合わせて目を閉じる。
数秒して目を開けて仏壇の君に話しかける。
「今日君が見てきたであろう世界を見てきたよ。
私あんな幸せそうな顔してたんだね。
そういえば、今日はいい夫婦の日だってね。
...君が生きてたら一緒にお祝いしたかったよ。」
語り部シルヴァ
『どうすればいいの?』
誰かと話さない時間がこんなにも寂しいものだったかな。
秋の風がこんなにも寒いものだったかな。
ひとりぼっちを痛感させる日々からどうも抜け出せない。
少し前に恋人と別れた。
傷心してしまった私は今も立ち直れず
ずっと同じ場所から進むこともできてない。
これから先の未来が曇った夜空よりも真っ暗だ。
もうこの命を終わらせようかな。
人に迷惑をかけるかもだけど
そんなの死人に言ったって無駄だからね。
駅を通過する電車がホームに差し掛かった瞬間
1歩を踏み出そうとした。
電車は警笛を鳴らす。
その音にビビってホーム側へと後ずさりする。
電車は通過して行った。そしてそんな私を
誰も叱ることなくスマホを見つめる人ばかり。
死ぬことすらろくにできない私は
これからどうすればいいんだろう。
涙すらとうの昔に枯れた私を焦がすように
秋の空はいつもより暑かった。
語り部シルヴァ