語り部シルヴァ

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11/20/2024, 10:51:41 AM

『宝物』

「...」
昼休みに校舎裏にある穴場でスマホと睨み合う。
最近気になる子とついに付き合うことができてはや半年。
思った以上にことがよく進み彼女ともより
交流が深まっていって幸せな日々を過ごしている。

ただ...気になるのは頼っていい、
甘えていい境界線がまだ分からないところだ。
もちろんそういうのはお互い話し合ったり
長い時間を経て相手を知ればわかるものだろう。
そして相手にそれを聞こうか今迷っているところだ。

文章はできている...あとは送信するのみ...
「何してるの?」「わっ!!」
急に彼女に声をかけられびっくりして体が跳ね上がる。
その拍子に送ってしまったのか彼女のスマホから
通知音がなる。

「ん?君から...?」
彼女はスマホを取り出し俺が送ってしまった文章を
じーっと見つめる。

「ふーん。そんなこと考えてたんだ。」
彼女はニヤニヤしながら俺の顔を覗き込む。

「照れてる?可愛いね。私はいつでも大丈夫だから
遠慮なく言ってね!」
俺の反応を見て満足したのか彼女は笑いながら答える。
こうやって相手に気を使わせないように言えるところが
さすがだと思う。

「じゃあ、今度2人きりの時にお願いしようかな。」
そういうと待ってましたと俺より喜ぶ彼女。
彼女の笑顔に心臓は跳ね上がる。

本当、彼女は大切にしたい...
誰も彼女に見せたくないし触れられたくもない。
同じ空気を吸わせたくない。独り占めしたい。

...俺の大事な宝物。命に替えても守り続けたい存在。

語り部シルヴァ

11/19/2024, 11:06:18 AM

『キャンドル』

ライターで火をつけ、部屋の明かりを全て消す。
部屋の真ん中で火がゆらゆらと優しく燃える。
誕生日に友人から貰ったアロマキャンドルを使ってみた。

優しい明かりからは気持ちがリラックスできるラベンダーの香りが漂う。
急に寒くなった夜は少しセンチメンタルになりやすいが、
なるほどこれはいい...
淹れておいたコーヒーの入ったマグカップを両手に持ち暖を取る。
パーカーを羽織って両手にはコーヒー。
アロマキャンドル...

いろんな温もりが体の芯をゆっくりと温めてくれる。
今度するときは本を読もう。

今日はここまでにしようかな。
そう思いアロマキャンドルの火をふっと消す。

真っ暗な部屋は温もりを忘れるようにしんと静まりかえる。
両手に持ったコーヒーも冷めてきた。
また...寒くなってしまった。

語り部シルヴァ

11/17/2024, 11:24:07 AM

『冬になったら』

気分転換に山に来た。
秋の山は過ごしやすい気候に映える景色...最高だ。
紅葉もイチョウも赤や黄色だけじゃなく
橙色や山吹色と1色じゃなくいろんな色で山を染めている。

秋は山の色が映えてて目にいい刺激を与えてくれる。
秋が好きなのもあって季節の中じゃ短いのはとても残念だ...
今年も秋の特権を味わえるのもあと少し...
今のうちに沢山秋を楽しもう。

自販機で買ったコーヒーを飲みながら
木々の隙間から見える空を見上げる。
秋晴れから差し込む陽の光は
山の色づきをさらに輝かせている。

冬になったら...また秋が恋しくなるなあ。
一足先にしんみりとした寂しさが
コーヒーの温もりを際立たせた。

語り部シルヴァ

11/16/2024, 11:02:23 AM

『はなればなれ』

秀でたものは摘み取られる。
なんて言葉を風の噂で聞いたことがある。
才能あるものは権力を持つものに選ばれるというものだ。
まあ、それが必ずしも良い方向へ行くとは限らないのだが...

物心ついた時にはそいつは葉が4枚ついていた。
俺含め周りのやつらは3枚なのにだ。
なぜ1枚多いか聞いても本人もわかってないらしく。
生まれつきの幸せ者ということだ。

最初は羨ましかったが、3枚のやつらに
妬み羨ましがられている姿を見て3枚でも良かったと安心した。
姿が少し違うだけで扱いが違うんだ。
それなら周りと同じ方が俺はいい。

なんて思っていると大地が揺れ空が陰り、
4枚葉の叫び声が聞こえたと思ったら大地がまた揺れる。

当たりが静まり空が晴れるとそいつはいなくなってしまった。
秀でたものは摘み取られる。
そんな言葉を思い出しながら
離れてしまった4枚葉のことを寂しく思った。

語り部シルヴァ

11/15/2024, 4:40:40 PM

『子猫』

グラスを拭きながら時計を見る。
もうすぐやってくるわね。
そう思いながらいつものを準備する。

少し温めたミルクに今日の試作品。
喜んでくれると嬉しいんだけど...

そう思いながら準備を済ませベル付きのドアを見つめる。
少し待つとドアのベルが...
鳴らず下の方でトントンとドアを優しく叩く音が聞こえる。

カウンターを出てドアを開ける。
「いらっしゃい子猫ちゃん。今日も来てくれて嬉しいわぁ。」

ぶかぶかなパーカーを着て鼻を赤くした常連さんはいつもの席につく。
「はい温かいミルクと今日の試作品お口に合うかしら...?」

そう言いながら料理を差し出すとミルクを1口。
ほぅとミルクを飲み目がとろんとしている。
試作品のミニオムライスを1口食べると目をキラキラと輝かせて1口、また1口と頬張る。

この子猫ちゃんはどういう家庭事情かは知らない。
けれどこんな子を見過ごせるほど私は冷たい人じゃない。
それに...子猫ちゃんがお腹いっぱいになって幸せそうな顔を見てしまったからにはその顔を見たくなっちゃうからね。

満足した子猫ちゃんは私に手を振って帰って行った。
また明日も待ってるわ。
そう言いながら手を振り返した。

語り部シルヴァ

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