『子猫』
グラスを拭きながら時計を見る。
もうすぐやってくるわね。
そう思いながらいつものを準備する。
少し温めたミルクに今日の試作品。
喜んでくれると嬉しいんだけど...
そう思いながら準備を済ませベル付きのドアを見つめる。
少し待つとドアのベルが...
鳴らず下の方でトントンとドアを優しく叩く音が聞こえる。
カウンターを出てドアを開ける。
「いらっしゃい子猫ちゃん。今日も来てくれて嬉しいわぁ。」
ぶかぶかなパーカーを着て鼻を赤くした常連さんはいつもの席につく。
「はい温かいミルクと今日の試作品お口に合うかしら...?」
そう言いながら料理を差し出すとミルクを1口。
ほぅとミルクを飲み目がとろんとしている。
試作品のミニオムライスを1口食べると目をキラキラと輝かせて1口、また1口と頬張る。
この子猫ちゃんはどういう家庭事情かは知らない。
けれどこんな子を見過ごせるほど私は冷たい人じゃない。
それに...子猫ちゃんがお腹いっぱいになって幸せそうな顔を見てしまったからにはその顔を見たくなっちゃうからね。
満足した子猫ちゃんは私に手を振って帰って行った。
また明日も待ってるわ。
そう言いながら手を振り返した。
語り部シルヴァ
11/15/2024, 4:40:40 PM