語り部シルヴァ

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11/14/2024, 11:22:43 AM

『秋風』

目を覚まし飛び跳ねるように起きる。
布団はベッドからずり落ち急いで携帯の時間を確認する。
...遅刻だ。

慌てて準備しようとしたが
一旦落ちついて携帯の画面を確認する。
今日は休みの日だ。
安堵し布団をベッドに戻す。

ご飯の作り置きも掃除も今日はナシでいこう。
寝巻きのままコーヒーでも飲もう。
朝の日差しを浴びてゴロゴロしよう。

まずはコーヒー。
ちょっと余裕ある人のように窓を開けて日差しと風を浴びる。
少し暖かい空に全身を冷たく撫でる風が心地よい。

コーヒーの苦味がぼーっとしていた頭を覚ましてくれる。
カップを置いて思い切り伸びをする。

さあ、今日はいい日になりそうだ

語り部シルヴァ

11/13/2024, 11:18:44 AM

『また会いましょう』

ポストを除くと見慣れた封筒が1枚。
すぐさま回収して家に入る。
手洗いうがいを済ませ自分の部屋に入りカバンを投げて
封筒を優しく開けて手紙を読む。

寒くなってきたこと。
けれど朝の散歩で日の出が見れるようになったこと。
風邪をひかないように。
優しい字で書かれた手紙は
心配してくれる気持ちが伝わってくる。
日常的な内容が多めで相手がどんな生活を
送っているのかが想像できるくらいだ。

そして最後に...
"また会いましょう。"
と書かれている。

早速引き出しから紙とペンを取り出し
内容を考えつつペンを進める。

早起きできるのは羨ましい。
こちらは最近雨が続いているので雨音を楽しんでいる。
そっちこそ風邪をひかないようしっかりと寝てくださいね。

... "また会いましょう。"

実際に会ってはいないけど、私たちの挨拶のようなもの。

相手より字は汚いけど、気持ちが伝わっているといいな...
手紙を封筒に入れて...住所を書いて完成。
明日出しに行こう。さて、次はどんな返事が返ってくるかな。

「また会いましょう...」
ボソッと呟いた自分の言葉に思わず笑みが零れた。

語り部シルヴァ

11/12/2024, 11:43:18 AM

『スリル』

沈黙の空間が続く...
一手間違えれば全てが終わる。

緊張して手が震える。
冷静に...冷静に...そんな思いをおしのけ
心臓は高鳴る。
こんな状況を楽しめるやつの気がしれない...

でも...カードは揃った...
ここで出るか...それとも...
いや、出る!

震える手でカードを出す。
「フルハウス!」

友人たちは...出せるカードは無さそうだ。

「お前の一人勝ちかよ!」「ずりー!」
「はいはい。約束でしょ?こいつらは貰うからね。」

深夜テンションで始まったポーカーがすごく楽しい。
ただ...年に1回ぐらいにしとかないとね。
どハマりしそうなスリルの味を
知っちゃったからには気をつけないとだから...

語り部シルヴァ

11/11/2024, 11:20:02 AM

『飛べない翼』

窓から空を眺めているとガラガラした鳴き声が聞こえた。
友人が窓越しにやってきて話しかける。

「お前、また空を眺めてるのか。」
「うん。君や他の子が空を飛んでるのが羨ましくって...」
「そんなに飛びたいなら飛べばいいだろ。」
「私の"これ"は飛ぶためにはついてないみたい。
それに...こんな狭い檻の中じゃ
羽を伸ばすことすらできない。」
「まだご飯に困らず寝る余裕があるから
俺もお前が羨ましいけどな。」

飯を探してくる。じゃあな。
とガラガラ声の友人は去っていった。

私は...。
普段ヒトがご飯を出してくる檻の入口をガジガジと噛む。
けれど檻はビクともしない。

...私はやっぱり飛べないんだ。
この小さな檻で永遠に生きるんだろう...
窓からさす陽の光はどうしても温もりが感じられなかった。

語り部シルヴァ

11/11/2024, 4:23:53 AM

『ススキ』

随分と遅くなってしまった帰り道。
明日は休みだから焦って帰る必要も無い。

空は晴れていて時折流れる雲が夜空と星を隠す。
のんびり歩いているとススキを見つけた。
いつも歩く帰り道なのに気が付かなかった。
ススキといえば十五夜のお月見に
添えられているイメージだった。
案外どこにも生えているのかもしれない。
十五夜の満月が目立ちすぎているから
影が薄くなっているだけだろうか。

1本引き抜こうとしたが小さい頃に手を
ズタズタにされたことを思い出して手が止まる。
いや影が薄い上に引き抜かれるのは可哀想だ。
なんて頭で言い訳しながら帰り道を歩き始めた。

ススキの擦れる音が静かな夜に添えられる。
前言撤回。ススキは充分秋の主人公じゃないか。

語り部シルヴァ

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