語り部シルヴァ

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10/17/2024, 10:58:16 AM

忘れたくても忘れられない


「ごめん。やっぱり別れよ。」
そういって彼女...だった人は僕に背を向けて
人混みの中へと消えていった。

やっぱり...か。
そう思いながらもスマホを取り出し、
先程の相手の情報を全て消す。
写真、トーク欄、連絡先...綺麗さっぱり消した。
けれども心のモヤモヤは消えない。
さっきの人とは関係ないモヤモヤ。

昔お世話になった恋人がいた。
その人は恋愛だけじゃなく人生の価値観とか
色んなものを教えてくれた。
結果的には考え方の相違で別れることになったが、
その人だけはどうしても消えない。

写真を消した時には心が痛みトーク欄や連絡先を消した時には次の日まで泣いた。
それほどまでに僕の中のその人が強すぎて
他の人が霞んでしまう。

好きと言ってくれる相手と付き合えば変われるかもしれない。
いつかあの人を忘れて新しい思い出が芽吹くかもしれない。
そんな期待を勝手にしてダメだったら期待してなかったように心が透明になる。

今も頭の中であの人が笑う記憶が再生されている。
それほど貴女が脳裏にいて剥がれないんだ。

語り部シルヴァ

10/16/2024, 11:15:19 AM

やわらかな光

「ん...」
目を瞑っているはずなのに視界が真っ白に輝く。
そもそも寝ていたらしい。
自分の家じゃないのにやけに落ち着く匂いがする。
このまま二度寝したい...

そう思っていたが数秒後眠気が疑問に飛ばされた。
その疑問も辺りを見回してすぐに解決した。

ここは彼女の部屋だ。
次の動画を流そうとスタンバイしているスマホが
彼女の手から落ちている。
2人で動画を見ながら寝落ちしたようだ。
うつ伏せで寝ていたはずだが、寝相の悪さか寝返りかで
部屋に差し込む光に照らされて起こされた。

彼女を起こさないようそっと立ち上がり窓に近づく。
夏はあれだけ鋭い日差しだった太陽も
今の時期には優しい日差しになっている。

カーテンをゆっくり閉じて光が直接入らないようにする。
彼女に近づいて寝ている愛らしい顔を眺めるようにした。
こんな時間が続けばいいのにと思う反面、
起きてお話したい寂しさが優しい光と混ざる。

暖かいはずの部屋で1人鳥肌を立たせながら、
彼女が起きるのをひたすら隣で眺めていた。

語り部シルヴァ

10/15/2024, 1:38:38 PM

鋭い眼差し

呼吸を乱さず、一点を集中して見る。
やつは俺にまだ気づいていない。
ゆっくりと獲物に近づく。

どんな状況であれ獲物から目を逸らさない。
また四角い光る板に目を奪われてやがる。
あんな眩しいもの何が面白いのか俺にはわからんな...

ついに背中まで来た。

ここで一気に...!!

「ん?どーしたの?遊んで欲しいの?」

にゃーお!!

くそっ...今回もダメだったか...
次こそは...次こそはっ...

獲物からの優しいなでなでに屈服して
そのまま甘えてしまった...

語り部シルヴァ

10/14/2024, 10:47:03 AM

高く高く

昔から工作が好きだった。
近所のお兄ちゃんが作る作品がかっこよくて
自分もこんなものを作りたい。
そう思った。

びっくり箱やソーラーカーなど親に許される範囲なら
どんどん作っていった。
1番好きだったのはペットボトルを使ったロケットだ。
空気で、ガスで、花火で..色んな方法でペットボトルを飛ばした。
ペットボトルが高く飛べば飛ぶほど
興奮してもっと高く飛ばしたくなる。

もっと、勉強してペットボトルじゃないロケットを
飛ばせれるようになりたい。
もっと高みを目指したい。

あのお兄ちゃんのような人になりたい。
それが僕の夢。

語り部シルヴァ

10/13/2024, 11:11:38 AM

子供のように


会社の先輩にとてもクールな人がいる。
自分のだけでなく、周りの人の仕事までも
そつなくこなしてしまう。
上下どちらからも尊敬されていているキャリアウーマンだ。

俺が入社してから今までずっと助けられてて、
まだまだ先輩にはお世話になりそうだ。
そんな先輩にある日話しかけられた。
「ここの遊園地って興味あるかな?」
そう言ってスマホの画面を見せてきた。
映っていたのは有名な遊園地のホームページで、
なんでも先輩の友人にチケットを貰ったが誰
と行けばいいかわからず俺を誘ってくれたようだ。

「行ってみたいなーとは思っていたんですけど、
俺で...いや僕でいいんですか?」

「私の可愛い後輩だからね。嫌だったら別の人を誘うけど...」

「全然!ぜひ同行させてください!」

そんなやり取りをして次の休日...
予定より早く集合場所に着いてしまってドキドキしている。
先輩にも遊園地に行きたいなんて趣味があったんだ...
そんな普段の先輩とのギャップを感じていると、
遠くから先輩の声がした。

「ごめんごめん。お待たせ!」
初めて見る先輩の私服姿にドキッとさせられる。

「じゃあ行こっか!」
俺の手をグイグイ引っ張って行く先輩。
普段と違いすぎて混乱しそうな程だ...

そこから先輩とは色んなアトラクションを楽しんだ。
コーヒーカップ、ジェットコースター、観覧車...
どのアトラクションもはしゃぐ先輩は
まるで俺よりも年下のようだった。

結局夜のパレードまで先輩と遊園地を楽しんだ。
パレードを見てる時に先輩が恥ずかしそうに
「沢山はしゃいじゃった。他のみんなには内緒にしてね。」
と言うもんだから余計に意識してしまった。

女性のギャップの強さと、信頼する人との遊園地は
とても楽しいことを先輩に教えてもらった。
まさか、休日でも先輩から教えて貰うなんて
思ってもなかった。

語り部シルヴァ

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