星座
あれは...やぎ座、うお座、おひつじ座。
他より少し明るい星と星を繋ぎ合わせ
それっぽい形を作る。
真っ暗な夜空というキャンパスに描かれた星々や
星座の神秘的な魅力ならどれほど語れるだろうか。
田舎は何も無くて暇を持て余す分、
自然の魅力を最大限まで感じ取れるのはいい。
ただ語る相手がジジババしかいないし
みんな寝ている...
だから一人静かに星を眺める。
月明かりでぼんやり明るい静寂な夜に
チカチカと光る星。
目を閉じれば宇宙にいるようだ。
しかし目を閉じれば星々や星座を楽しめれない。
目を閉じても宇宙じゃないんだ。
これらが朝日で消えちゃう前に
しっかりと目に焼き付けよう。
そうしてまた夜空を見上げた。
視界から溢れんばかりの星々は
変わらず優しく輝いていた。
語り部シルヴァ
踊りませんか?
木の角材を何重にも重ねた大きな炎の柱が優しく燃えている。
優しい炎の周りを何十組もの男女ペアが楽しそうに踊る。
丁寧に踊る組、写真で自分をたてる組、
ふざけてウケを狙う組...
色んな組が炎の明かりに照らされる。
文化祭の打ち上げ、というか本日のメインディッシュと
言えるくらいの恒例行事。
大きなキャンプファイアを真ん中に男女ペアが踊る光景は
2年目だけど圧巻だ。
きっとこの日のためにあそこで踊っている男女は
自分磨きに相手の好感度をあげたのだろう。
俺はと言うと...1人でその景色を少し離れた所で見ている。
大きい炎のせいか離れてても温かさが伝わる。
1人の理由は特にない。
仲のいい女子どころか男子の友人も壊滅的に少ない。
その友人も友人の友人のもとへ行ってしまった。
こうやって1人になってるのは
自分が努力しなかった結果だろう。
別に哀しさとかはないけど...あそこで踊る男女ペアが
少し羨ましい。
スマホで時間を確認した。そろそろ頃合いだろう。
大きく伸びをして帰ろうと炎に背を向けると、
1人の女子と目が合った。
「あ、あの...もう帰られるんですか...?」
「え?あぁ、はい。」
「そうですか...、あの!どうしても仲良くなりたくて...
良ければ私と踊ってくれませんか!!」
確か隣のクラスの...一度も話さなかった女子だ。
仲良くなる工程は随分と飛んでるが、
こんなに真剣にお願いをされて断る人はいないと思う。
「俺でよければ...」
「あ、ありがとうございます!」
心の奥底で小さく燃え上がる何かがあった。
キャンプファイヤーからもらい火でもしたんだろう。
語り部シルヴァ
巡り会えたら
瓦礫まみれの中砂埃が吹き荒れる。
肩で息をすることすら苦しい。
乾いた呼吸が口から漏れる。
呼吸の仕方を忘れそうなくらい体力の限界だ。
それは相手も同じで、お互い立っているのもやっとだろう。
「なぁ!俺たちはどこで間違ったんだろうなあ!」
唾を飲み込み少しでも声が張るように問いかけた。
「私たちは...間違ってなどないさ。
お互いの芯が元々違うだけ。目的が同じだけだった。」
部下は全滅。信念がぶつかり合った結果一面は赤い海。
こいつとなら...なんて少しは期待した俺が馬鹿だった。
向こうも同じだろうか...
それでも、折れればこの先に未来なんてない。
相手の上に立つか、死か...この世界はそれしかない。
目的が同じでなければ、きっといい友人になれたはずだ。
そう思うくらい相手とはウマが合ったのに...残念だ。
剣を再び強く握りしめ構える。
踏みしめた大地がえぐれるほど蹴って相手に斬り掛かる。
なぁ友よ。もしこんなふざけた世界が終わって
生まれ変わったらまたお前と巡り会えるだろうか...
そしたらバカやって酒を飲もうぜ。
そんなことを思いながらすれ違い様に切りつける。
こちらの鎧が砕ける音と、近くで膝が崩れ落ちる音がした。
語り部シルヴァ
奇跡をもう一度
手術は無事成功した。
ベッドで眠る息子を見つめながらうるさい心臓を
なだめるように手に当てる。
重い病気を患った息子の命は長くは持たないと
先生に言われた時は目の前が真っ暗になるほど絶望した。
けれど、時間と息子が諦めない気持ちを教えてくれた。
どうにかできないものか、私はあらゆる手を尽くして
息子の命が助かる方法を模索した。
優秀な医者への手紙、動画サイト、SNS...
自分で出来ることはとにかくした。
そしてついに、息子の病気を治せる医者が
名乗りあげてくれて、診断後すぐに手術へと移行してくれた。
手術ができる医者と出会えたのは奇跡だ。
手術が成功したのも奇跡だ。
あとは...息子が目を覚ましてくれれば
どれだけ喜ばしいことか。
ここまでもわがままなのは充分わかっている。
でももう一度...奇跡をもう一度だけください。
うるさい心臓の鼓動と心電図の音だけが病室に響き渡る...
語り部シルヴァ
たそがれ
今日最後のチャイムが鳴り響く。
図書室は静かで、チャイムの余韻がずっと残る。
ここの学校は夕方にチャイムが鳴る。
春は18時、秋は17時を最後にチャイムが鳴り、
チャイムが鳴った後で校内を歩いていると、
基本的には先生に帰らされる。
それまで僕は図書室でのんびり本を読む。
どーせ先生が迎えに来るならそれまでの時間を
有意義に使わせてもらおう。
窓の外からは沢山の男女がきゃいきゃいとはしゃぎながら
校門へと歩いていく姿が目に入る。
みんななんでそうはしゃげるんだろうか。
ずっと本を読んでいた方が有意義だろう。
いつの間にか本を読むのをやめて頬杖をつきながら眺めていた。輝く夕焼け空が彼らを照らしていたのと、
この感情に気付いて深いため息が零れた。
語り部シルヴァ