語り部シルヴァ

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9/30/2024, 2:44:44 PM

きっと明日も

少し早くなった夕暮れは帰る時に
素敵な夕焼け空を見せてくれる。
部活も試合を終えて卒業の形で退部。
おかげで学校が終わり次第彼女と帰る時間が
毎日できるようになった。
今までは部活があったから一緒に帰れるなんて
夢にも思ってなかった。

ただ僕は電車通学。
だから彼女を家に送ってそこから帰る。
彼女の日常の景色に僕がいるのはなんだか嬉しい。
彼女が普段から見る景色、踏みしめてきた道。
帰り道を理解する度に彼女をまたひとつ理解した気分になる。

そんなことを思いながら彼女と話をしていると
あっという間に着いてしまった。
寂しいが...また明日だ。

「今日もありがとう。また明日だね。」
「だね。また明日。」

彼女が家に入るのを確認して帰路を目指す。
さっきまで歩いた道を引き返すこの寂しさは秋のせい。

きっと明日も、君のおかげで素敵な1日になるよね。
そう考えると帰り道が少し明るくなった気がした。

語り部シルヴァ

9/29/2024, 11:15:46 AM

静寂に包まれた部屋

「これで全部です。ではお願いします。」
頭を下げながら挨拶をする。
「かしこまりました!では現地で!」
力強い元気な声は大きいトラックに乗って走り出した。

さて...と部屋を振り返る。
ベッドや冷蔵庫、テレビ...自分の持ち物が
全て無くなったこの部屋はこんなにも広かったものか...

ここに来た時は広く自分好みの部屋に変えようと
意気込んでいた事を思い出した。
結局掃除が面倒で模様替えをする体力が無く
あんまり出来なかった。
次の部屋では...と思ったが
また同じことになってしまいそうだ。

ここで数年間過ごした思い出を思い出しながら
部屋の中をゆっくりと歩き、眺める。
思い出の中は賑やかだが、何も無い今はすごく静かだ。
...全部...思い出になってしまったなあ...。

少しセンチメンタルに浸りたいところだが、
そろそろ出発しないと荷物を待たせることになってしまう。

寂しいが...さようならだ。玄関でもう一度部屋の方を向き、
「ありがとうございました。」と
深く一礼しながら部屋に伝える。

お世話になりました。
それじゃあ、行ってきます。

語り部シルヴァ

9/28/2024, 12:07:03 PM

別れ際に

「これでボクたちは恋人でも友達でもない、赤の他人だ。」
夕焼け空も暗くなり始めた空のように
君の顔に影ができ始める。
俺たちは別れを切り出すことになった。
高校の頃から付き合い始めたが、大学生になり
お互い大人になるにつれて価値観や考え方がズレてきた。

俺たちが未熟だったのもあるが、大人に近づくたび
お互いの距離が離れるなんて思わなかった。
すぐに諦めた訳じゃない。
あーだこーだと試行錯誤した結果今に至る。

色々と頑張ったのに大切な人を幸せにできなかった。
それがお互いにとても悔しかった。
ふたりが別れを選択した時なんて目が腫れるほど泣いた。

もう完全に夜が来る。
ここに来るのも今日で最後だ。

最後のサヨナラを伝えるために帰る前に振り返る。
笑顔の君の腫れた目と流れる涙は逢魔が時の世界じゃ
隠しきれていなかった。

「じゃあね。今までありがとう!」
それでもいつもの口調の君を見て伝えるはずのサヨナラは
震え声になってしまった。

最後の最後の別れ際に、俺は呪いを受けることになった。
これから...一生忘れることのない呪いだ。

語り部シルヴァ

9/27/2024, 11:25:35 AM

通り雨

最近、不思議なアプリを手に入れた。
偏頭痛がキツい時があって、友人に話すと天気予報アプリを
入れるといいと勧められ入れることにした。

有名な会社の天気予報アプリじゃなく、
聞いた事のない会社名。
気にはなったが、偏頭痛に関係している低気圧が来ることを
通知してくれると書いていたのでそこを信頼した。

結果的には大成功だった。低気圧が来る30分前に
教えてくれるので事前に薬を飲めばやり過ごせれるし、
どれほどの強さかも教えてくれる。
それに雨が降ったり晴れたりの予報もかなりの的中率で
驚いている。

今日も帰り道このアプリに頼りながら帰る予定だ。
最寄り駅までのルートを調べていると、
天気予報アプリから通知が来た。

"数秒後、通り雨に注意してください"
通り雨...?
そう思った矢先、右斜め前から雨が迫ってきた。
雨がまるで生きているかのように斜め前から
まっすぐ通過して行った。

駅を通過するように通って行った雨の後を眺めながら
呆気に囚われていた。
スマホには"通り雨が通り過ぎ去りました。"
と通知が来ていた。

語り部シルヴァ

9/26/2024, 2:30:07 PM

秋🍁

優しくなった陽の光、早くなった日没、乾いた涼しい風。
もう秋だということ嫌でも知らされる。
つい先週まで日中はクーラー無しだと
寝苦しかったのにこうも変わるのか...

ベランダで夜風に吹かれながらタバコを吸う。
夏はタバコの火が熱くて堪らなかったが、
これから温かく感じるのだろう。

俺はこの季節が好きだ。
ん夏よりも涼しく冬より暖かい。
こんなにも過ごしやすいのに期間が短いのが残念だ。
秋の彩りある季節も美味しい旬の食べ物も
あっという間で寂しくなる。

だからこそこの季節のことを大切にしたい。
タバコも吸い終わったからベランダに戻ろうとした。

腕に違和感を覚え見てみると蚊に数カ所噛まれていた、
...これさえなければずっと秋が続けばいいのになと
思いながら痒くなった腕をかき部屋に戻った。

語り部シルヴァ

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