語り部シルヴァ

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8/10/2024, 12:53:57 AM

上手くいかなくたっていい

彼女は過去の事故で笑わなくなった。
幼馴染の僕は、無表情になった彼女に
「いつか君の笑顔を取り戻してみせる。」
と誓った。

くすぐり、ドッキリ、美味しい食べ物、コメディ映画...
色々試してみたが、今のところは全然ダメだ。

次の案を考えながらの帰り道?、彼女が口を開く。
「私のせいで...ごめん。無理しなくていいよ?
君には君の人生があるんだから...。」

彼女自身も感情を取り戻したいと思う一方、
上手くいかない現状に頭を悩ませている。
それに僕が付きっきりで問題を解決しようとしている姿に
罪悪感を抱えているらしい。

彼女自身どう思ってるかはあまり聞かない方がいいと思い
聞かなかったが、そう思っているのなら...

「僕が君の感情を取り戻したいのは君のため。
僕がそうしたいから好きに無理してるだけだよ。
上手くいかなくたっていいじゃん。
まだまだ色んなこと試してみようよ!」

両手を広げ彼女にそう伝える。
彼女はありがとうと言ったが変わらず無表情だった。
でも、声はさっきよりも冷たくなく、
優しくほほ笑みかけるような声色だった。

語り部シルヴァ

8/8/2024, 10:43:45 AM

蝶よ花よ。

「おかーさん!おかーさん!」
どたどたと元気な足音と一緒に
大きな声でこちらに近づいてくる。

「見て見て!」
見せてきたのは用紙に描いたなにか。
肌色、黒色...そしてお気に入りのエプロンとスーツ。
一瞬何か分からなかったが、
どうやら私たちを描いてくれたようだ。

「これもしかして...私たち?すごーい!上手に描けたね!」
頭をわしゃわしゃと撫でるとえへへと笑う。
とても可愛らしい...
絵の才能はこれからきっと開花する。

「こんな素敵な絵を見せてくれてありがとう!」
「どういたしまして!」
絵を私に渡して元気な声は部屋の奥へと
消えていってしまった。

お父さんが帰ってきたら自慢しよう。
貰った絵を改めて見る。

絵から伝わる幸せが輝いていた。

語り部シルヴァ

8/7/2024, 3:13:55 AM

太陽

星が輝くの太陽があるからだ。
人の心が輝くのも太陽があるからだ。

おっと、この太陽は空にある太陽のことじゃない。
隣にいる大切な人のことだ。
我々はみな、星なんだ。
小さくも歪な形をしても、色が無くても...
もちろんひとりだと輝きが小さくて綺麗に輝けない。

でもそんな星を輝かせてくれるのが太陽という存在。
親でも友人でも恋人でも...
人の心にそれぞれ太陽は必ず存在している。
例え心がだろうが、曇りだろうが関係ない。
隣に太陽がいるだけで晴れるんだ。

私はあなたの太陽になりたい。

ここまで言って手を差し伸べる。
傷だらけの君は何それと笑いながら私の手を取った。
私がいる限りその星の輝きを止めさせやしない。

語り部シルヴァ

8/5/2024, 4:14:00 AM

つまらないことでも

基本的に自分のしたいこと以外に興味を持たない友人がいる。
ずっと本を読んでて、僕らがおすすめしたもの全部
「興味無い。」の一点張りで返される。

だがお願いされると断れないようで、
遊びに出かける時に誘うと「仕方ないな」と
少し呆れながらも着いてくてくれる。
驚くことに、お誘いを断らないのは僕だけだという。

今日も映画を見に来たが、1人だと行きづらかったので
誘ってみるとまたかと言いながらも来てくれた。
チケット代を払おうとすると、「そういうのはいいから。」
と自分で払った。

映画はすごく良かった。
沢山語りたいところだが友人は興味のないものを
2時間も見せられたのだ。
まずはお礼を言わないと...

「今日はありがとう。不安だったけど楽しめたよ!
興味なかったのにごめんね」

「別に...」と友人は答える。
いつも通りの友人だと思い歩き始めようとすると
友人が口を開く。

「ボクは確かに人から勧められたものには興味が無い。
だけど、映画とか普段から誘ってくれる人のは少しは
興味を持つようにしている。
どれだけつまらないことでも、
君のような人と共感できるのは嬉しいから...。」

さっき見た映画の告白シーンが頭によぎる。
僕はまだ映画の中なのだろうか。

語り部シルヴァ

8/4/2024, 12:57:16 AM

目が覚めるまでに

"恋は盲目"という言葉がある。
恋をすれば周りが見えなくなって、
相手のことしか見えなくなることだ。

今の私にピッタリな言葉だろう。
相手は酒とタバコが好きで、
性格も酷いとしか言いようがない。
でも、顔はめちゃくちゃにイケメンだ。
ちょっかいを出してきては私を虐めてくる。
こちらから連絡をすれば冷たくされ、
連絡をしなければ向こうから甘えてくる。

完全に私は沼にハマってしまったようだ。
長い関係を続けると私と仲良くしてくれる人が
傷つくかもしれない。
私を本当に大切にしてくれる人が
離れていってしまうかもしれない。

それでも私は彼が好きだ。
一時の感情でもいい。
目が覚めるまでに数日だけの幸せを得ていたいの。

語り部シルヴァ

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