一尾(いっぽ)in 仮住まい

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5/30/2025, 11:57:44 AM

→どうやら……

ここで拝読する限り
人の想像力は無尽蔵、との解を得たので
物語の数列は
無量大数だと思う。

テーマ; まだ続く物語

5/29/2025, 2:11:18 PM

→短編・未練がましい

「だからね……ーー」
 彼女が言いにくそうに僕から顔を背けたので、僕も天を見上げた。
 薄曇りの雲が、空の高さの限界を作るように広がっている。
 どうして僕らはこんなところにいるんだっけ? 
 そうだ、思い出した。僕は彼女とデート中で、手を繋いで公園を歩いてたんだっけ。これからどうするって相談したら、彼女はいきなり手を振りほどいて話し始めたんだった。
「私、もう貴方とは……ーー」
 彼女は、途切れ途切れに話し続けている。僕は依然として空を仰いでいる。きっと彼女も僕を見ていないのだろう。言葉はコミュニケーション手段の一環だが、果たして今の状況もそう言えるのだろうか? 
 僕たちの隣を、学生たちが通り過ぎていった。別れ話かな? 彼らのヒソヒソ声が僕に現実を突きつける。
「今日で終わりにしたいの……」
 それまでの言いにくそうな様子を吹っ切るように彼女は宣言した。まるで学生たちに後押しされたように。
 僕は相変わらず彼女に向かい合えない。雲ばかりの空に起死回生の気配を探す。
 雲の隙間に鳥が見えた。それを指さす。
「ねぇ、あれ、渡り鳥かな?」
 彼女のため息と、遠ざかる足音がした。

テーマ; 渡り鳥

5/28/2025, 2:35:17 PM

→さらさら

この静かに滑り流れるようなイメージは、ゴシック体では表せないと思う。
さらさら
さらさら
さらら さらら
うん、やっぱり楷書体や明朝体の、「トメ」とか「ハライ」が似合うよな。

テーマ; さらさら

5/27/2025, 2:41:50 PM

→自分完結ダブルスタンダード

その言葉は、奮起か、欺瞞か。

「これが最後の挑戦」と、
血気盛んに決意表明。

同時に、

「これが最後だから」と、
胸中に言い訳を繰り返す。

何にせよ、
芳しい結果は得られないだろう。

テーマ; これが最後

5/27/2025, 5:39:07 AM

→短編・やぁ。

 彼は、いろいろなところに出没する。公園のベンチでのんびり昼寝をしていたり、駐車場を我が物顔で悠然と歩いていたり、水の入っていない側溝を駆け抜けている姿を目撃したこともある。
 彼は野良猫だ。
 猫好きの僕は、彼を見るとつい足を止めてその姿を目で追ってしまう。彼も僕の執拗な視線が気になるのだろう。今まで何度も僕らは睨み合うように見つめ合った。距離を保ったまま、お互いに近づくこともなく。
 彼はサバトラ柄のがっしり体型をしている。アニキっぽいので、密かにアニキと名付けているが、彼に呼びかけたことはない。
 そう言えば、ここ最近アニキを見かけていない。どうしているだろうか?
 そんなことをぼんやりと考えながら散歩していた僕は、突然の大きな音に身をすくみ上がらせた。背後からの車のクラクションだ。
―プップッー!!!
 僕は即座に道路脇にピタッと体を寄せたが、車は来ない。
 振り返って見ると、通り過ぎたところにある駐車場から聞こえてくる。何が車を妨げているのか、クラクションは止まない。
 しばらくして、駐車場から車ではなく、灰色の小さな動物がのんびりと出てきた。クラクションの音にも動じず、あくまでマイペースに歩くその動物は……、
「アニキ」
 呟くような小さな声だったが、アニキは足を止めて僕をじっと見た。彼の背後を駐車場から出た車が走り去ってゆく。
 アニキは悠然と僕に近づき、僕を見上げ「ニャア」と返事をした。

テーマ; 君の名前を呼んだ日

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