→短編・公園で夜景を見る、私と彼女。
高台の公園に立つ。夜風が頬を撫でる。
眼下に夜景。街灯、電飾看板、高層ビルの屋上に灯る赤いランプ、住宅の明かり、遠くには工場のまばゆい常夜灯、細い光が流れたと思ったら、列車だった。まるで星空を見ているような感覚。
「満天の星空みたい」
私が思ったことを友人が口にした。
「同じこと思ってた」と私。
その共感に友人はふっと力なく笑った。
黙ったまま2人で夜の公園のベンチに腰掛けて夜景を見る。
「地球って他の星と比較して明るく見えるのかな? 電気使ってるし」
友人の唐突の問いに私は首をひねった。
「どうだろ?」
「地球人として、そうであってほしいなぁ」
「話のスケールがデカいなぁ」
私の呆れ声に友人の笑い声が重なる。
「うん、デカいよね。日常がちっちゃーく感じるくらい!」
そう言って彼女は大きく背伸びをした。
宇宙を見上げると、地上の星よりも少ない星空が頭上に広がっていた。
「あのさ……」
少し言いにくそうに彼女が言い淀んだ。
「何?」
なるべくなんでもないように問いかける。
「あの……、明日から少しづつ部屋を片付けたいんだけど、手伝ってくれる?」
「うん」
私は静かに頷いた。
ボサボサの髪と汚れた服の中で、彼女の晴れ晴れとした顔が光った。
「ありがとう」
星明かりの公園に、彼女の感謝の声が響いた。
テーマ; 星明かり
→短編・故事
真っ暗な芝居小屋で、私は枠どられた小さな舞台を観ている。
舞台は1メートルほどの高さで横幅はその1.5倍ほどだ。枠全体を半透明の紙が覆っていて、奥から明かりがほんのりと舞台を照らしている。影絵芝居だ。
私はサンザシの串を片手に握りしめている。酸っぱいサンザシにかかった飴が甘い。周囲の中国語のザワメキが耳を打つ。
右手左手から現れる紙人形の穏やかでユーモラスな暮らしに、私は目を輝かせる。小さな村の暮らし。
しかし、大きな銅鑼の音がした後で、様子が変わった。太鼓や琴の音に合わせて、何本もの支持棒で操られた龍が登場する。
龍は天地を暴れ回り、市井の人々を襲い始めた。圧倒的な力に蹂躙され、穏やかな人々の生活は一瞬にして消え去った。
生き残った人々は何もできなかった。山中の洞窟に隠れ棲んで、龍が去るのを待った。
半年後、ようやく龍が村を離れた。しかし人々は洞窟をすぐには出られなかった。それほどまでに龍襲撃の恐怖は人々に恐怖を植え付けた。
明日出よう、明日出よう、やっぱりもう一日待とう。
結局、誰も洞窟を出ることができずに、村人は死に絶えた。
二胡に重なって、勘違い声は謳う。
「哀れ、哀れ。之、まさに龍後の不覚」
チャルメラの音、銅鑼の音、太鼓の音、舞台の灯りが消えていく……。
私ははっきりとこの芝居小屋の一幕を覚えているのだが、家族親族友人の誰も知らないという。
私は日本育ちで、中国に行ったことはない。誰に尋ねても、「龍後の不覚」などという故事は聞いたことがないという。
テーマ; 影絵
→今、私はどの辺を走ってんのかな?
スタートピストルが鳴った。
一斉にヨーイドン!
抜きつ抜かれつ、たまにコケる。
それでも止まらないんだよ。
ゴールまで、止まらないんだよ。
テーマ; 物語の始まり
→喉から手が出るほど……
静かな情熱は、
ブレない継続力にあると思う。
欲しい。
テーマ; 静かな情熱
→与太話、グダグダと。
聖徳太子は8人だか10人だか36人だかの話を同時に聞き分けたという。
どれくらいの距離の声か知らんが、政治家なので遠くの声にも耳を傾けてほしいと思う。
え? 聖徳太子の話ですよ。
「素晴らしい」政治家の話ですよ。
ね? 最近の話じゃないでしょ?
テーマ; 遠くの声