一尾(いっぽ)in 仮住まい

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→短編・公園で夜景を見る、私と彼女。

 高台の公園に立つ。夜風が頬を撫でる。
 眼下に夜景。街灯、電飾看板、高層ビルの屋上に灯る赤いランプ、住宅の明かり、遠くには工場のまばゆい常夜灯、細い光が流れたと思ったら、列車だった。まるで星空を見ているような感覚。
「満天の星空みたい」
 私が思ったことを友人が口にした。
「同じこと思ってた」と私。
 その共感に友人はふっと力なく笑った。
 黙ったまま2人で夜の公園のベンチに腰掛けて夜景を見る。
「地球って他の星と比較して明るく見えるのかな? 電気使ってるし」
 友人の唐突の問いに私は首をひねった。
「どうだろ?」
「地球人として、そうであってほしいなぁ」
「話のスケールがデカいなぁ」
 私の呆れ声に友人の笑い声が重なる。
「うん、デカいよね。日常がちっちゃーく感じるくらい!」
 そう言って彼女は大きく背伸びをした。
 宇宙を見上げると、地上の星よりも少ない星空が頭上に広がっていた。
「あのさ……」
 少し言いにくそうに彼女が言い淀んだ。
「何?」
 なるべくなんでもないように問いかける。
「あの……、明日から少しづつ部屋を片付けたいんだけど、手伝ってくれる?」
「うん」
 私は静かに頷いた。
 ボサボサの髪と汚れた服の中で、彼女の晴れ晴れとした顔が光った。
「ありがとう」
 星明かりの公園に、彼女の感謝の声が響いた。

テーマ; 星明かり

4/21/2025, 8:00:09 AM