→短編・寝ぼけ眼の微考察
夏の夜明けは、何処となくボヤケている。すべてが湿度という薄い布地を通すからかもしれない。
その点、冬の夜明けには、そういった遮蔽物はない。断罪的な純水を含んだ空気が、余計なものをすべてそぎ落としてしまう。
未明と早朝の淡い、ベッドの中でそんなことを考えて、極に振れない春と秋の夜明けが好きだと、シーツを手繰り寄せた。
静かな部屋にシーツの布擦れの音が妙に大きく響いたように感じた。
テーマ; 静かな夜明け
→短編・Oh my gosh! What should I do?
I'm so scared.
My girlfriend just sent me a message saying,
'We need to talk heart to heart.'
I have a bad feeling about this. I'm really really freaking out! What should I do?"
テーマ; heart to heart
→短編・言葉を花束に
そこの花をこちらへ、あっちの花はもう少し高く、
全体のバランスが、まだまだ甘い。
昨日要らないと思った花がやっぱり必要だったかも。
こんなの花束じゃない。不格好な花の寄せ集めだ。
私がやろうとしているのは、
誰もが賞賛する花束を作ること。
賽の河原で小石を積んでいるのではない。
もっと繊細に、もっと抒情的に、
感動でなくてもいい。
負の感情、怒りや嫌悪感でもいい。
強く人心を震わせる、
なんなら人以外の心にも訴えかけるような、
記憶に残るそんなモノを作りたいのだ。
大丈夫、まだやれる。
もう一度作り直そう。
私ならできる、そう信じる。
信じなきゃやってらんねぇよ。
テーマ; 永遠の花束
→短編・優竹温泉
優竹温泉の老舗旅館に新しい仲居さんが入りました。
「それじゃ今から旅館を案内するから着いてきてね」
女将さんの旅館案内が始まります。
「優竹温泉は起源はご存知?」
新人仲居さんは申し訳なさそうに頭を横に振りました。女将さんは「素直が一番!」と彼女を安心させて説明を再開します。「この温泉はね、ウチのご先祖様が源泉を見つけたのが始まりなの」
こじんまりした旅館のフロントやロビーを紹介しながら、女将さんは新人仲居さんを連れて縁側で足を止めました。
「あれを見て」
目を見張るほど美しい日本庭園の中央の、不自然な小熊ほどの岩を、女将さんは指し示しました。
「その昔、ご先祖様が優しく竹刀で岩を叩いたところ、あら不思議、温泉が湧き出したと言われているわ」
「やさしく、しないで?」
「えぇ、優しく竹刀で」
それ以上何も言わず、二人は顔を見合わせました。
テーマ; やさしくしないで
→短編・闇の組織の朝礼
どうやら我々の用意した数億通の手紙は、誰にも届かなかったようである。
人心を疑心暗鬼に陥れる強力な暗示文を仕込んであったというのに!
またしても彼らの暗躍により、我々の企みは頓挫してしまった……。
これまで3409回、我々はあの機関に負け続けてきた。
しかし!
諦めてはならない!
3410回目が悲願達成になるかもしれない!
常にベストを尽くそう!
負けるな、同志!
進め、同志!
世界を混沌の渦に陥れるのだ!!!
テーマ; 隠された手紙