「うわーっ!!!めっちゃ遠くまで見える!!空気が綺麗、気持ち〜!!」
快晴。言葉の通り、雲ひとつない澄み渡った青の天井が俺たちのいる丘の上に広がっている。俺たちは約束を果たし、今日ここにいる。
君…いや、アイツはと言えば、長旅であったにもかかわらず、馬鹿みたいに元気だった。犬か。俺は疲れ果てているというのに。
「ねえ!早くテント張ろうよ!そんでもって、この空の下でご飯を食べようよ!」
「はしゃぎすぎだ。俺は疲れた、少し休憩させろ」
「え〜、そんなに疲れてるの?もしかして…僕とのキャンプが楽しみで寝れなかったとか?」
呑気なやつだ。人生の転換期を終えたばっかだと言うのに、俺とは違って君は疲労のひの字も、緊張のきの字もない。正直、羨ましかった。
「寝れはした。ただ…昨日の緊張が抜けない。ただ…それだけだ……」
そう言って、俺は芝生の上に寝転がった。安堵か、それ以外か。強烈な睡魔が津波のように押し寄せ、抵抗する間もなく飲み込まれてしまった。
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「……ん…あれ」
目覚めると、暮れた空をバックにした赤い髪が見えた。ぼやけてよく見えない。だが、君であるということは容易に理解できた。
「起きた?」
無邪気な笑顔のまま、君は俺の頬を撫でる。
「もう夕方だよ。急に寝ちゃうんだから、僕…すっごく心配したんだよ?」
君に支えられながら体を起こす。綺麗に立てられたテントが見えた。上手い。あのテントを何個もダメにしたあの破壊神はどこに行ったのだろうか。
「……綺麗に立てれたな」
「でしょ?練習したんだ〜。さっ、こっちに来て。中でお茶しようよ」
手を引かれ、テントの方に向かう。楽しそうに笑う君を見て、俺も微かに微笑んだ。
2026/4/13
お題「快晴」
ずっと、好きだった。
入学式の時から、ずっと。
前を歩いていた君の姿を見て心が惹かれてしまった。
君が微かに笑った時、脳が焦がれるってこんな感じなんだと知った。
それと同時に、自分の腹の中にどす黒い感情が湧いてくるのが感じ取れた。
誰にも渡したくない、誰にもこの笑顔を見せたくない。
狂気そのものだった。だが、止められるわけがなかった。止めたくもなかった。
日に日に肥大化するこの形容し難いどす黒い何かに狂わされながら、僕は今日も生きている。君と一緒に、君とだけといつまでも生きたいから。
テーマ「誰よりも、ずっと」
「……綺麗、プラネタリウムよりも綺麗」
星が綺麗に見える丘の上で、君は寝転がりながら星を見ていた。俺は立ち尽くし、頷くことしか出来なかった。
「ねぇねぇ、もし良かったらさ、来年もここに来ようよ。絶対にだよ、約束だからね」
「……保証はできない」
あからさまに君の頬が膨らむのが目に見えてわかる。実際そうだ、今の世界じゃ命の保証はできない。いつ死ぬかも、いつ離れ離れになるのかも分からないのだから。
「まあいいや、君も寝転がりなよ。今は死ぬとか、戦うとか考えなくていいよ。あの星たちが、今の僕たちを見守ってくれているから」
君に促されて、渋々芝生の上に寝転がった。星々が円状に動いている。息をするのも忘れるくらい綺麗な夜空だった。
「綺麗っしょ?……あーあ、もっとはやくここを知りたかったなぁ。そうしたら…もう少し君と居られる時間が増えたのになぁ…」
「早くって、ここを取り戻せたのはつい最近だ。俺らが頑張ったおかげだ」
「そうだっけな…忘れちゃったかも」
君ははにかむように笑った。俺も君に釣られるかのように微笑んだ。
「あ、笑ってる」
「笑ってない、気のせいだ」
「笑ったよ、今」
下らない会話で笑ったのはいつぶりだろうか。この平穏がいつまでも続けばいいのに、流れ星が降ってきていないのにそう願い続けてしまう。
「まあでも、明日からの作戦も頑張ろうね。また次の作戦も生き残ったらさ、ここでふたりで宴を開こうよ」
「……まあ、それもありか。生き残ったら、が最優先の条件だがな」
「ふふっ、そうだね。君が死んだら僕も死んでやる、君を絶対にひとりにしないから」
君は小指を差し出した。俺もそれに指を絡める。今までで一番緊張し、一番大切な約束だった。
星々が祝福してくれているかのように、星が俺たちの姿を照らし続けていた。