たった1つの希望
朝起きて職場に行き、仕事をした後は家に帰る。
昨日と同じ時間が流れる今日。
色々夢見ていた子ども時代は過ぎて、いつの間にか
現実と自分の将来に向き合うようになってしまった自分に気づいた。
それでも、時々思うのだ。
いつか素晴らしい誰かとまた逢える、そんな予感がするのだ。
誰なのかはわからない。
遠い昔や閉ざされた記憶の中で約束したのかもしれない
その誰かと再会できるのを楽しみに生きる
私のたった1つの希望なのだ。
欲望
「じゃあまた来るね、神様」
そう告げて、彼女は自分の街へ帰っていった
彼女のいない屋敷は、嘘のように静かになった
「帰ってしまったな…」
夜になって1人になるとたまに不安になる。
もし彼女が人間の男性や違う妖と一緒になってしまったら?もし彼女がもうここに来なくなってしまったら?
嫌だ、誰にも渡したくない
でも私と彼女では種族が違うから添い遂げることは許されない
それでも彼女と一緒にいたい
これは、私の勝手でしかないのに
理性と欲望の狭間で私は揺れ動いていた。
どこにも書けないこと
確実にわかるのは、この世界に確かなものなんて
存在しないこと。
永遠や不変に囚われるのは
人に期待することは
苦しいことでしかない
どこにも書けない想いは話さない方がいい。
真実は歪められ、夢は潰されて燃えて灰になって終わるだけ。
時計の針
ひとつだけ願いが叶うなら
時計の針を今止めて
この世界に留まらせて
かけがえのないあの子とこれからも生きていたいから。
「魔法が使えるのに、時間は永遠に止められないなんて…。運命は優しいふりして残酷よね」
自分が思うよりもずっと、人間界を、あの子を気に入っていたことに気づいてしまった。
日付けは2月。
迫りくる別れの日を嘆くひとりの魔法使いの嘆きは闇世に溶けていった。
Kiss
唇から首筋へと降るキスは、私を狂わせていく
このまま堕ちてはいけないとわかっていても、
跳ねる心臓と熱くなる身体は心とは裏腹だ。
「俺のものになっておくれ…」
切なく囁く彼の瞳には、私しか映っていなかった。