秘密の手紙
「そういえばさ、卒業式の日にくれた秘密の手紙に、20代後半になってめお互い相手いなかったら結婚しようて書いていたよね」
久しぶりに彼と呑みに行った際、昔話をしている時に秘密の手紙の話になった。
「あー、書いていたわ懐かしい」
青春だったなって笑う私とは裏腹に、ダウンライトに照らされた彼の表情は真剣だった。
「どうしたん?」
「もし、あの日の約束、俺は本気だよって言ったらどうする?」
いつもふざけてばかりだった彼に、不覚にもときめいてしまった。
あの手紙の続きが、今廻り始める。
贈り物の中身
彼から受け取った美しい包装の贈り物。
中身は煌めく永遠の愛が込められていた。
「何年経っても共に人生を歩んでほしい」
星よりも宝石よりも尊い言葉に
頷かない選択はなかった
失われた響き
目を閉じる度、俺の名を呼ぶ彼女の声を思い出す
でも、彼女は現実に俺の隣にいない
勿忘草と青い薔薇の高台の夢でしか逢えない
失われた彼女の声の響きが、胸に残り離れない
何故、俺たちは離ればなれなのか
何故、俺たちはこの運命に選ばれたのか
「許されるなら…どちらかの世界で君と共にいたい」
消えない焔
彼の声は、今も耳の奥で響いている。
最後に聞いたあの声を…やっと思い出せた。
「忘れないで、俺は君を永遠に愛してる。どこにいても、何年経っても」
その言葉だけで、心が熱くなり生き返る。
でも、苦しくて、愛しくて、涙が溢れる。
「忘れないでって言いたいのは私もよ。どうしようもないほどに愛していたのに、何で忘れていたんだろう…」
だが、彼にはもう逢えない。
もし私があの異世界に戻れたとしても
彼を知る前の私はいない。
愛した人が「現実(ここ)にいない」ということが、
これほど痛いとは思わなかった。
涙を引っ込めたいのに心は自分を裏切り
涙が止められない。
こんなの誰にも話せない。
きっと誰にも分かってもらえない。
「真実の愛」は手のひらからすり抜けていったのに、
心身だけがまだあの人を求めている。
恋心は、まだ燻っている。
人を愛する心も幸せも何もかも
全て向こうに置いてきてしまった。
終わらない問い
海は陸より大きいらしい
ならば、彼と私の愛も
狭い陸よりも無限の海の中でなら
許されるのかな
そんな日はくるのかな