眠り子

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6/6/2025, 10:53:24 AM

さあ行こう

どこからともなく怪しいパイプオルガンの音がする。
「初めまして、気の毒な人間ちゃん」
振り向くと1人の女性がいた。
夜空を溶かした波打つ濃紺の髪、片目と片頬を覆う仮面、これまた夜空を溶かしたようなローブ、白いドレスを着ていてこの世の者とは思えない美しさだった。

これは彼の幻覚だれうか?
ふと彼女の後ろを見ると数えきれない老若男女がいた。
みんな彼女と同じ仮面をしていた。
ある者は、偽りの夢に溺れた少女。 
ある者は、欲に溺れた少年。
ある者は、支配欲に狂った男。
ある者は、家族の幻想にうつつを抜かす女。
ある者は、誰にも認められず苦しむ者。
心にやみを抱えた人間は、誰も彼も孤独の魔女ソリトゥーディニスに囚われるのだ。

「さあ行こう、私たちの終わらない楽園へ!」
「ソリトゥーディニス様の仰せのままに…ソリトゥーディニス様の仰せのままに…」
差し伸べらた手は,苦しくて温かくて恐ろしかった。
まるでようやく母親に手を繋いでもらえた子供のような気持ちだった。
屋上に佇む彼は、魔女の手を取り楽園へと旅立った。

孤独の魔女ソリトゥーディニスは、今も現代社会の何処かを彷徨っているだろう。
次は,あなたの後ろに現れるかもしれない。

5/30/2025, 10:47:45 AM

まだ続く物語

デスメモリアとの最終決戦が終わり、うつしみ市にはようやく平和が戻ってきた。
つまり、わたしたち魔法少女ムネモシュネの役割もこれで終わりということだ。
だけど…

「ねぇ、カメロン。デスメモリアとの闘いは終わってみんなの記憶は戻ってきたけど、本当にこれでよかったのかな」
「ん?これでよかったってどういうことカメ?」
わたしには、最終決戦が終わってからずっと胸に残っていることがある。
ーお前もいつか我々の思想がわかる日が来るはずだ。
 その時は我々の想いを継ぐ者が現れるだろうー

「デスメモリアたちは、あいつらは浄化される直前にこんなことを言っていたんだ」
そうなりたくはないけど、下手したらわたしも記憶を消したいて思っていたかもしれない。
「ツムギ…そうだね。彼らは、実はみんなの心の深い闇に潜んでいた気持ちなのかもしれないね」
「でも、君は辛い記憶も嬉しい記憶もどちらも自分のものだからちゃんと背負っていきたいって言っていたカメ!その気持ちさえ忘れなければ大丈夫カメ!」
カメロンはいつものように明るく励ましてくれた。
「…ありがとう、カメロン」

これから先の未来、記憶についてどう思うかはわたしにもわからない。
それでも、今この瞬間未来に残したい想い出がある!
それがわたしたち魔法少女ムネモシュネの想いだ。

5/14/2025, 7:58:43 AM

記憶の海

最後のお客様を見送り、閉店の準備を始める。
「今日集まった記憶は50件か…。」
私は人々からいただいた記憶を整理して、店舗の地下にある記憶の海に保管しに向かった。

波の音だけが聞こえる暗い地下室。
そこに記憶の箱を沈めることで、対象者から完全に記憶を抹消できるのだ。
水には浄化する力がある。私たち生命体は皆海から生まれたという。だから、生命溢れる水に記憶を沈めて無に還らせるのだ。

私は何百年も生きているが、21世紀は負の記憶を抱えた人が多い。だから私の店に記憶を手放しに来るお客様が昔より増えた気がする。

どうか、悲しみ苦しみを抱えた人間(こどもたち)が安らかに過ごせますように。
祈りを掲げ、記憶の海の間を後にした。

4/12/2025, 8:49:34 AM

君と僕

独立して開業したばかりの僕の店にふらりと現れたのは、国民的人気を誇るアイドルグループのメンバーだった。
「お兄さんの作る唐揚げカレー気に入りました!また来てもいいですか?」
これは、国民的アイドルグループのエースの君と小さなレストランの料理人の僕のちょっと奇妙な友情の始まりだった。

3/30/2025, 12:52:02 PM



最近、街では記憶に問題が発生している人が増えた。
噂によると、出かけてくると言ってしばらく経ってから
周りと話が噛み合わないことに気づく人が増えたそうだ。
話が噛み合わない、記憶が飛んでるだけならまだマシな方だ。酷い人の場合自分がどこの誰なのかわからずな人もいた。
「おじさんだあれ?」
そう聞かれた捜査員もいた。子どもではなくそれなりの大人の年代の人だった。
話によると話を詳しく聞こうとしても、わからないわからないと涙を流すだけであったのだ。
一体この街で何が起こっているのか…。

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