『また会いましょう』
⚠️死ネタ ←好きな同士いるかな?
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「…お前、それなんだよ……」
「何って、見ての通りだけど」
キラリと光る刃を彼に向けながらジリジリと壁に追い詰めて行き、ニコリと笑う。
普段なら、簡単にあしらえるのに最近、君も嫌な事があったみたいだね?足に力入ってないし、目の下には隈が出来てる。あーあ、こんなに怯えちゃって可哀想に。いつものカッコいい顔が真っ青になっちゃってて、可愛い。大丈夫、もう少しで楽になるから…。
「大人しくしてくれれば、直ぐに楽にしてあげるよ」
「なぁ、冗談だろう…?いつもみたいに、酒でも飲んで、落ち着こう?な、?」
トンっと、背中が壁に付く音が聞こえると共に恐怖心に飲まれた彼が携帯している自身のナイフを手に持ち、がむしゃらに向かってくるのをヒラリと交わして床に押さえつける。カランカランッと床に落ちる音が部屋に広がる。
「大丈夫、大丈夫だから…イッショニ逝こうね」
彼の心臓に刃を突き刺す。一回じゃ死ねないのか苦しそうな声で呻き、睨みつけてくる。もう一度、突き刺すと血反吐を吐いて動かなくなった。刃を引き抜き、今度は自身の首元に当てる。
「…来世で」
再度、カランカランッという音が響くとその部屋から音は聞こえなくなった。
『スリル』
賭博はやっちゃダメだよ!
♡100ありがとう!
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賭博は、楽しい。
相手と目線を交わしてどうでるか言葉は出さずともあの駆け引きをする時間、相手を騙す手法を考えたりするのも全部、背中にゾクゾクとしたのが広がって、高揚感に包まれる瞬間が堪らない。勝っても負けても、勿論、勝った方が嬉しいがとにかく度数の強い酒を煽った時の様に熱くなれる。
ま、本来なら違法だけど出口のないこの館で他の面子とやる事と言えばもっぱらこれだ。
時間潰せるし、勝っても負けても恨みっこ無しという暗黙の了解があるおかげで後腐れないのが楽でいい。
今日は、賭けポーカーをするみたいだ。
珍しく、賭け金は金じゃなくて過去を賭けるみたいだけれど…これは、負けるわけにはいかないね。
だって、思い出したっていい事ないもの。
思い出さなくたって、こびりついた記憶は消せないし、フラッシュバックして嫌な気持ちになる事も多々ある。最初にこの罰ゲームみたいな賭けを思いついた人は引っ叩いてやりたくもなるが、
でも……
「これぐらいのスリルがあった方が燃えるんだよね」
そう誰にも聞こえない声でボソリと呟く様に言うと、配られたカードを手に取りニヤリと笑った。
『意味がないこと』
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「だったら!!僕なんか選ばなければよかったじゃないか!君のエゴだろう?ここまで僕と一緒にいたのは、いつだって離れられたじゃないか!」
なぜこうなってしまったのだろう。
きっかけは、僕のせいなのは目に見えているし言い訳をするつもりもない。けれど、それを公認して側にいると言ってくれた。しかし、些細なことから言い合いになってしまい現在に至る。
僕のさっきの言葉を聞いて、一瞬ヒュッと喉が鳴ったのが聞こえたかと思うと怒りを露わにした表情で僕にこう言った。
「そうか、なら…もういい、わかったよ」
「そんなに嫌われていたなんて知らなかった、今日出て行く。服とかの荷物は好きにしてくれて構わないから…」
怒りの表情から一変して悲しそうな辛さの滲む表情を一瞬だけ見せた後、にこりと笑って。
「じゃあな、…愛してたよ」
それだけ言うと簡単に荷物をまとめて二人の家から去って行ってしまった。
あれから連絡もつかなくなった。多分、切られたのだろう。当然の結果だ。わかっていたはずなのに…何もする気が起きずロボットのように毎日同じ事を繰り返す日々を送っている。
完全にロボットになりきれたらどれほど良かっただろうか、感情を殺して、作業のように過ごしていても、
それでも、ご飯だけはいつものように二人分を作ってしまう。
もう自分の前に座って、その料理を食べてくれる人なんていないのに。
ーー元々危うい均衡だったんだ、いつかこうなると思っていた。自覚は、合った…はずなのに、変わろうとする努力をしなかった。
今から変わろうとしても、もう遅いか………、。
『柔らかい雨』
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ぽつりと鼻先に水が落ちると同時に、さーっと雨が降り始め、近くにあるバス停まで行くと、二人顔を見合わせ笑う。
「濡れちゃったね」
「あぁ、そうだな…今日雨の予報なんて聞いてなかったんだが」
「ほんとだよ」
急いで屋根のあるところに来たとはいえ、シャツが濡れて、ぺったりと肌に張り付いてしまっている。濡れていないベンチに座り、鞄からタオルを取り出す。
ふと、彼の方に目をやる。自身のタオルで顔や髪の毛を軽く拭き、どうやって帰るかなぁと独り言を呟いている。そして、彼もまたシャツが肌につき筋肉質な腕や身体つきが浮き彫りになっているのを見て、顔が熱くなってくるのを感じすぐさま顔を逸らして鞄を持って、立ち上がる。
「ごめん、その…用事、思い出したから帰るね」
「は?ちょ、おい!」
そう言って雨の中に飛び出して行く、彼の声が聞こえた気がするが走ってそこから離れて行った。
当たる雨は、柔らかく熱くなっていた身体を冷やしてくれていた。
『一筋の光』
⚠️自殺表現注意!
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僕は、生ける屍だった。
あの事件以来…
悪夢のせいで満足に眠る事も出来ず、食事も味覚部分がおかしくなり、死なないように摂るただの作業と成り果てた。人付き合いだって、情緒が不安定なせいで上手くいかない。
人生とは、全く持ってクソッタレなものだと普段から感じる。僕みたいな下の人間は、ボロ雑巾のように働いてやっとの事で衣食住にありつけるのに対して、上の人間は、そんな底辺の苦労も知らないままに、のうのうと甘い汁だけを吸い楽に生きている。
これは、僕の感性が歪んでいて、悲観的な考えを持っているというのもあるだろう。だけれど、世の中、不公平だ。公平なんて、あったものじゃない!!
だから、ここから…会社の屋上から飛び降りてやろうとフェンスに手をかける。後はもうここから飛び降りるだけとなった時、ガチャリと音が鳴り扉が勢いよく開く。
「……お前、何してるんだ」
その声は、怒りとも焦りとも聞き取れる声色をしていて、走ってきたのか肩で息をしていた。
僕が、屋上に行こうとしているのを見た同僚から、サボりだと先輩に伝えたのだろうか。それならば彼はなぜ、こんなにも焦ってここへ来たのだろうか、。
考えれば考えるだけわからなくなってくる。
「何、って…死のうとしてるんですよ。もう人生に疲れちゃったので」
ニコリ。
そう効果音が付きそうなくらいに彼に笑って見せるといつもの仏頂面がさらに歪む。
あぁ、どうして、そんなにも辛そうな顔をしているんだろう…僕の事なんか何にも知らない癖に。
「じゃあね、先輩」
目を瞑り、フェンスから手を離す。
次に襲ってくるのは痛みだろうか…。
まぁ、なんでもいい…。
……、………、。……………?、、。
いつまで経っても、次の衝撃がやってこない。
恐る恐る目を開けると、先輩が顔を真っ赤にして僕の腕を両手で掴んでいた。
「勝手に、死ぬ…なよ、ッ、こんなところで、死なれて、たまるか…お前は、俺にとって、光、ッ、は…なんだよ、ぐっ、はあぁ…っ、」
流石…高校の頃は、ボクシング部だったらしいが、まさか僕よりも小柄なのに、引き上げるとは、彼の馬鹿力に驚き、ふつふつと笑いが込み上げてくると同時にぽつりと涙が落ちる。
僕が、先輩にとっての光?冗談よしてくれ。
でも…
「ははっ、ふは、…先輩の、せいで死ぬ気なくなっちゃったじゃ、ないですか……」
怖い。
死ぬのは、…すごく怖い。
力が抜け、地べたに座り込むと自分の身体を抱える。
抱えながらも彼の顔をまっすぐ見据える。
彼が僕を光と言うのならば彼もまた、僕の深い深い闇に差し込んだ一筋の光だと言える。
だから……、
「……先輩が、僕の光になったんだ。責任、とってよね?」
そう言って、彼の手を掴むと…手のひらにキスを落とした。