芝草

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12/10/2023, 12:03:47 PM

『仲間』


確かな根拠はないけれど、
きっと、いると思うのです。

顔は見たことがないし、
声も聞いたことがないけれど、
たぶん、世界中にいるはず。

私と同じようなこと、考えてる人が。

「え、もう一年が終わるの! 早くない?」
……って。

あなたもそうですか?
じゃあ、お仲間ですね。

お仲間にも、そうじゃなくても、どうか新しい年に、幸多かれ。

12/8/2023, 12:19:27 PM

『ありがとう、ごめんね』


げんげ、すみれ、しろつめくさ……
妹と一緒に遊びに出かけた道端で、
花をたくさん見つけたの。

私はお姉さんだから、
花冠だって作れるの。
そしたらね、
「ありがとう」
大きな花冠を頭に乗せて、
妹は、はしゃいで言ったの。

だけどね、
花のなくなった道端で、
花を探して迷子のように飛ぶチョウチョを見たら、
なんだか胸がチクリとしたの。

はしゃぐ妹には聞こえないように、
私はこっそりつぶやくの。
「チョウチョさん、ごめんね」

12/6/2023, 1:34:11 PM

『逆さま』


実は逆さまだったのです。
今朝、慌てて履いた靴下の表と裏が。
だからでしょうね。
足がムズムズしていたのは。

実は逆さまだったのです。
昨日あなたに言った「大嫌い」というセリフが。
だからでしょうね。
今になってこんなに心がズキズキするのは。

実は逆さまだったから、
あなたにお願いしたいのです。
昨日の私のあのセリフ、もう一度だけ逆さまにしても、いいですか?

12/5/2023, 12:42:18 PM

『眠れないほど』


雪の降る季節のある夜のこと。
重そうな瞼を擦りながら
息子が僕に問いかけた。

本当に来てくれるかな。
ボクの家、煙突がないけども。

ずっと欲しかったあのゲーム
プレゼントしてくれるかな。
ボクは今日も母さんに「早く寝なさい」って怒られちゃうような、悪い子だけども。

僕は小さく微笑んで
「大丈夫だから、もうおやすみ」と声をかけ
息子をなだめながら思うのだ。

この心配を、
キミが眠れないほどしている間くらいは
彼の正体を秘密にしておきたいな、と。


12/4/2023, 12:03:22 PM

『夢と現実』


ある夜、私は夢を見た。
そこでは、私はお姫様。

豪華なドレスに身を包み
宝石みたいなケーキを食べる。

お城のみんなは私にお辞儀し、
「姫は今日もお美しい」と言ってるの。

そして、朝がやってきて
私は夢から目覚めたの。

そこでは、私はただの少女。

お姉ちゃんのお下がりの制服に身を包み
いつもと同じ、豆腐の味噌汁をすする。

母さんは笑いながら
「まだ寝癖がついてるよ」と、櫛を差し出すの。

夢の私も良いけれど
こうして家族とご飯を食べてる私だって悪くない。

そんなふうに思える私のことが、私は結構好きなのだ。

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