『どうすればいいの?』
「どうすればいいの?」
幼い私は問いかけた。
父に、母に、先生に。
みんなそれぞれに答えをくれたけど、
どうして私は満たされないの?
「どうすればいいの?」
今、私は問いかける。
他の誰でもない、私自身に。
答えはぜんぜん出ないけど、
なぜか、私の心は穏やかだ。
自分自身に問い続けることが、
誰かから与えられる答えよりも
意味を持つ時がある。
いつからか、私はそう信じるようになった。
だから、かもしれない。
『宝物』
昔々のお話です。
一人の旅人がいました。
旅人は、見つけた者は必ず幸せになれるという、
伝説の宝を見つけるために、
長い長い旅を続けていました。
いくつもの山を越え、谷を越え、
砂漠をわたり、森を抜けても、
宝の眠る地へは、中々たどり着けません。
「宝探しなんて大変ですね。
そんなに探しても見つからない物を、
それでもなお探すのは辛くないですか?」
旅人は、立ち寄った村の人から
そう尋ねられました。
「そうでもないよ。
最近思うんだよ。宝を探すこの日々こそが、
私の宝物かもしれない、とね。
君と出会ってこうして語らう今日もまた、
私の宝物になるだろうね」
旅人は微笑みながらそう言い残して、
村を去りました。
旅人は宝を見つけたかどうか、
その村人には分かりませんでした。
でも、旅人は幸せになれたかどうかは、
村人はわかったような気がしたのでした。
おしまい。
『冬になったら』
冬になったら、雪が降るといいのにな。
お砂糖みたいな真っ白い粉雪が
ちょっぴりだけ降ったら
退屈な私の町だって、
ケーキのように、かわいくなれるかもしれないから。
冬になったら、北風が吹くといいのにな。
いたずら小僧みたいな北風が
並んで歩く私たちを、一撫でしたら
「見てるこっちが寒いから」って言い訳しながら、
彼に私のマフラーを巻いてあげることが、
できるかもしれないから。
『秋風』
秋の風は寂しんぼ。
たぶん、1人で街を吹き抜けるのがイヤなのよ。
だって、あんなに綺麗に色づいた
赤や黄色の木の葉を連れていっちゃうから。
秋の風は寂しんぼ。
たぶん、その寂しんぼが私にうつったみたい。
だって、ちょっと風に頬を撫でられただけで、
あの人に会いたくなっちゃったから。
『眠りにつく前に』
どうせなら、
やさしい言葉を残しておきたいの。
明日も私が
私を好きでいられるように。