光る苔

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4/23/2025, 12:37:19 PM

さて、どこへ行こう。

僕は鳥になった。
翼を広げて空に行った。
僕の街が小さく見えた。
真上の空が近く見えた。

だけど、何か違った。


次は、どこへ行こう。

僕は魚になった。
ヒレを動かし海に行った。
青い海は透き通っていた。
見知らぬ魚の踊りを見ていた。

だけど、どこか違った。


今度は、どこに行こう。

僕はアリになった。
小さな足を動かし地面を歩いた。
いつもの道が冒険に思えた。
小さなお菓子が宝物に見えた。

だけど、違った。


どこへ行こう。

僕はモグラになった。
手を動かして土の中を進んだ。
土の中の友達と出会った。
木の根っこが大きいことを知った。

だけど、やっぱり違った。


僕はどこへ行こう。

僕は誰かになった。
僕の知らない声で誰かと話した。
誰かの人生は楽しそうだった。
僕のいつもとは全く違った。

だけど、結局。
何か違った。


どこへ行こう。
どこへ行こう。


僕は僕になった。
いつもの日常に戻ってきた。

僕には、空を飛ぶ翼も、海を泳ぐヒレも。
何かを運ぶ強い足も、自由に土を掘る大きな手も。
そして、誰かのように楽しい人生も無いのだ。

だけど、僕は僕に落ち着いた。

僕は僕の足を、手を動かした。
僕は僕の声を聞いていた。
僕は僕の人生を思い出した。
僕は僕を思い出した。

さて、僕はどこへ行こう。

そうだ。空を見に行こう。僕だけの空を。
そうだ。海を聞きに行こう。誰もいない海を。
そうだ。お宝を見つけに行こう。僕だけのお宝を。
そうだ。土の中を探検しよう。僕にも小さな出会いを。

そうだ。僕は僕になろう。僕だけの人生を受け止めていこう。


さて、今から、ここからどこに行こう。

4/22/2025, 12:19:21 PM

BIG LOVEという言葉を聞いて思ったことがある。
BIG LOVEがあるのならSMALL LOVEもあるべきだろう。
BIGLOVEとは、直訳すると大きな愛であるが、ネット上では大好きという意味で使われるらしい。

僕は愛=好きであるのか。
と疑問に思った。
愛どんな言葉なのだろう。

僕はこう思う。
愛とは便利な言葉である。

例えば、
愛している。
この言葉だけでいくつの意味があるのだろうか。

恋愛としての愛。
家族としての愛。
友情としての愛。
自分自身への愛。
世界に対する愛。

愛とは様々な形になれる。
愛とは何処にでも居れる。

だから、愛というぼんやりとした言葉に人は逃げてしまうのだ。

よく世間は言う。
恋愛をしろ、と。
家族を愛せ、と。
友を大切に、と。
自分を好きになれ、と。
何事にも慈愛の心をもて、と。

人は何かを愛さなければ生きていけないのだろうか。

-全く、その通りである。
人は何かを愛さなければならないのだ。

人は子孫を残そうとして、愛を知った。
人は子供を育て続ける為、愛を与えた。
人は人と深く繋がるのに、愛を使った。

愛とは、人類の歴史である。

最初に言った。
愛とは便利な言葉である。と。
そして、こうも言った。
愛と言うぼんやりしたものに逃げてしまう。とも。

愛は人のために作られたものである。
故に、愛は便利な手段であるし、逃げ場所でもある。
だからこそ、それを恥じることはない。

しかし、「愛が何であるか」とを考えずにそれを使うのは愚かである。

人は、大小はあるものの愛を持っている。
大きな愛、小さな愛、真っ直ぐな愛、歪な愛。
愛に形などないのだ。

自分なりの愛を見つけ、そして与えることで本当の意味で何かを愛すことができるのだろう。

愛とは便利な言葉だ。
しかし、不思議な言葉だ。
誰もその本当の姿を知らない。

もしかしたら、今は愛の形が分からないかもしれない。
愛の形が歪かもしれない。
愛の大きさが小さいかもしれない。

けれど、それは今、君の愛である。
愛は、必ず赤いハートの形である必要はないのだ。

愛とは元々自分の奥底に在るものだから。

4/21/2025, 10:23:11 AM

ざわざわ。ざわざわ。
風が知らぬ顔で通り抜ける。
木は誰かにささやいていた。
いたい、いたいと泣いていた。

ざぶざぶ。ざぶざぶ。
カモメは気にもとめずに飛んで行った。
海も誰かにささやいていた。
きたない、きたないと怒っていた。

ざーざー。ざーざー
車は気にせずに通って行った。
空も誰かにささやいていた。
くるしい、くるしいと困っていた。

ざわざわ。ざわざわ。
カメラは興味無さそうにフラッシュを炊いた。
人は誰かにささやいていた。
だれか、だれかと助けを求めていた。

ざわざわ、パシャ。
ざわざわ、パシャ。

カメラは誰かを記録した。
人は誰かを噂した。

ざわざわ、パシャ。
ざわざわ、パシャ。

カメラは傷ついた人を笑った。
人は怒っている人から距離をとった。

ざわざわ、パシャ。
ざわざわ、パシャ。

カメラは困っている人は撮らなかった。
人は助けを求める人を嘲らわった。

ざわざわ、パシャ。
ざわざわ、パシャ。

木のささやきはもう聞こえない。
海のささやきはもう聞こえない。

ざわざわ。
ざぶざぶ。
ざーざー。
ざわざわ。

カメラはファインダーを見るのを辞めた。
人は誰かのささやきを聞こうとした。

空のささやきはもう聞こえない。
人のささやきはもう聞こえない。

もう誰のささやきも聞こえない。

4/20/2025, 1:44:41 PM

月は狡い。
自ら輝かないくせに、夜になると我が物顔で街を照らす。

星は静かだ。
自ら輝き、なんだったら太陽よりも光るはずだ。
だけど、夜の空に隠れ、慎みながら光っている。

月明かりは苦手だ。
特に満月は。
否が応でも僕を照らしてくる。
夜ぐらい僕を映さないで欲しいのに。

星明かりは優しい。
満点の星空は、優しく照らしてくれる。
一つ一つの光は弱いけど、集まって照らしてくれる。 その光は、優しく足元だけを照らしてくれる。

太陽はうるさい。
太陽の光が正しいかのように一方的に突きつけてくる。
それが僕は嫌いだ。

けれど、太陽もどこかでは星のひとつなんだ。
どこかで、誰かを優しく照らしているひとつなんだ。
そう思うと、少しだけその光を受け入れてみた。

4/19/2025, 10:12:24 AM

「ほうら、蝶々が飛んだぞぉ。」
黒い犬が言う。
白い空を飛ぶ蝶々は形を変えて兎に成った。

「そら、鳥が飛ぶぞぉ。」
黒い兎が言う。
黒い犬は鳥になり白い空を舞った。

「鳥さん、鳥さん。貴方はなんで黒いの。」
黒い兎が問うた。
黒い鳥は白い空に浮かびながら答えた。

「兎さんや、それは空が白いからだよ。」
黒い鳥は地面に降り立った。
黒い兎はぴょんぴょんと跳んでいる。

「鳥さん、鳥さん。お空はなんで白いの?」
黒い兎が尋ねた。
黒い兎はゆっくりと蝶々に成った。

「蝶々や、それは光があるからだよ。」
黒い鳥は形を変えた。
黒い犬は地面に寝そべった。

「犬さん、犬さん。僕たちは光になれないの?」
黒い蝶はパタパタと聞いた。
黒い犬は欠伸をして伸びをした。

「蝶々や、僕らは光になれないんだ。」
黒い犬は悲しそうに答えた。
黒い犬は、蟹に変わった。

「蟹さん、蟹さん。僕らはなんなの?」
黒い蝶は崩れながら見つめた。
黒い蟹はいつの間にか消えていた。

突如、ブチンという音ともに空が無くなる。
黒い蝶も犬も鳥も兎も蟹も一緒になる。

「ああ、電球が切れちまったか。」
誰かが言う。
黒い部屋に足音が響く。

「そうら、蝶が飛ぶぞぉ。そうら、鳥が飛ぶぞぉ」
誰かが呟いた。
黒い部屋に空はまだ無いまま。

「ほうら、飛ぶぞぉ。飛ぶぞぉ。」
誰かがつぶやく。
黒い部屋には着信音だけが響く。

「消えるぞぉ、いなくなるぞぉ。」
誰かが泣いている。
黒い部屋には傷跡だけが残っている。

「父さん、母さん。僕はなんで生まれたの?」
誰かが苦しんだ。
黒い部屋に光は届かない。

「子供や、子供の僕や。それは間違いだったんだよ。」
誰ともなく答えた。
黒い部屋が少しだけ蠢いた。

「先生、先生。僕は普通じゃなかったの?」
誰かが諦めた。
黒い部屋は遠い場所にあった。

「学生や、学生の僕や。僕は普通にはなれなかったんだよ。」
誰かが答えた。
黒い部屋の傷跡は膿んでいた。

「神様、神様。僕はどこに行くの?」
誰かが聞いた。
問うた。
尋ねた。
黒い部屋は答えてくれなかった。

「飛ぶぞぉ。」
誰かが叫んだ。
パチンという音ともに光が灯る。
白い空が現れる。

「飛ぶぞぉ。」
ガタンという音と共に黒い人は揺らめいた。
白い空には黒い人が浮かんでいた。
空からはひとつの紐が垂れていた。

白い空には黒い蝶も鳥も居なくなった。

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