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8/17/2023, 11:49:59 AM

『いつまでも捨てられないもの』


人は忘れる事で前に進む生き物だ、と誰かが言っていた
ならば私はきっと、不完全で不出来な失敗作だ
鮮やかに彩られた過去の一幕に捕らわれ、
先の見えない真っ暗な未来の手招きから目を反らし、
温かで優しい思い出にすがり付く
決して忘れてたまるものかと、己の心と身体に刻み付ける

これまでも、これからも、何時までも何時までも、
何処まで行ったって私には捨てられない

8/3/2023, 10:57:53 AM

『目が覚めるまでに』

規則正しい呼吸の音が室内へと満ちてゆく
カーテンの隙間から差し込む月明かりが照らす貴方の横顔
何処までも無防備な寝顔にどうしようもない程、感情が揺れ動く

私は貴方の事が好きだった
なのに貴方は突然私に別れを告げた
冗談であって欲しかった
夢であって欲しかった
けれど、これは現実だった
どうしようもなく、絶望的であったとしても
バッドエンドへの序曲、或いは都合のいい妄想の終末

これは私に残された最後のチャンスだ
暖かな幻想に溺れる哀れな愚者と成り下がるか、
はたまた冷たき現実を知った脱け殻と成り果てるか

或いはこのままひと夏の淡くも苦い記録と為るか

7/31/2023, 9:53:37 PM

『だから、一人でいたい。』

得難いものもあったのだろう、成し得ぬものもあったのだろう
その関係に感謝こそあれど、恨む事など有りはしない

けれど、私は失う事を知ってしまった
心を引き裂かれ、感情は凍り付き、後悔と懺悔に苦しむ日々
長い月日を掛けて尚、深く残る傷跡
それは、二度と誰の手も取る事をしないと誓った
己に課する孤独の証

二度と悲劇を味わいたく無い
あの地獄のような日々を繰り返したくは無い
だから、誰も私に近付かないで

7/21/2023, 12:43:00 PM

『今一番欲しいもの』

欲しいもの、それも一番となれば一つしかない

痛くも苦しくも無い、この辛さから解放してくれるもの
誰の迷惑にもならない、そんな私の憂いを晴らしてくれるもの
誰の記憶にも留まらない、貴方達の願いを叶えてくれるもの

そんな『死』が今一番欲しい、かな

7/10/2023, 10:42:37 AM

『目が覚めると』

誰かが言っていた
朝は新しい物語が始まる合図なのだ、と
輝かしい未来、煌めく青春
甘酸っぱい恋模様、ほろ苦い別離
数えきれない偶然と必然が絡み合い、
誰のものでもない一人一人の為に存在している、と

成る程、確かにそうかもしれない
自分の物語は自分のものだ
けれど、自分の物語だからと言っても、
決して自分が主人公なのだと自惚れてはならない
目が覚めて一日が始まる度、この世界に思い知らされる
物語の主人公はお前なんかではないのだ、と

寝て起きてを繰り返し、十数年
ありきたりな毎日を焼き増しただけの日常をなぞる
灰色ですらない、振り返っても何があったかすら分からない
そんな無色透明な自分の物語
誰にも知らず、自分すら覚えている事が敵わず、
その物語は塵芥へと成り果てる

行き場を失ったこの感情すら、
明日また目を覚ませば消えてしまうのだろうか

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