『目が覚めると』
誰かが言っていた
朝は新しい物語が始まる合図なのだ、と
輝かしい未来、煌めく青春
甘酸っぱい恋模様、ほろ苦い別離
数えきれない偶然と必然が絡み合い、
誰のものでもない一人一人の為に存在している、と
成る程、確かにそうかもしれない
自分の物語は自分のものだ
けれど、自分の物語だからと言っても、
決して自分が主人公なのだと自惚れてはならない
目が覚めて一日が始まる度、この世界に思い知らされる
物語の主人公はお前なんかではないのだ、と
寝て起きてを繰り返し、十数年
ありきたりな毎日を焼き増しただけの日常をなぞる
灰色ですらない、振り返っても何があったかすら分からない
そんな無色透明な自分の物語
誰にも知らず、自分すら覚えている事が敵わず、
その物語は塵芥へと成り果てる
行き場を失ったこの感情すら、
明日また目を覚ませば消えてしまうのだろうか
7/10/2023, 10:42:37 AM