『落下』
ちょっとした浮遊感の後に襲い掛かる重力
大地に引き寄せられるように落ちて行く
時間にして僅か数十秒
体感時間はどうだろう、長いようで短いような
生まれ落ち、ここまでの日々が思い出される
確かに悪いことだけではなかったかもしれない
でも決して良いことばかりだった訳では無い
トータルで考えればやはり悪いことの方が
圧倒的に多かったようにも思う
まぁ、そんな葛藤ももう終わりだ
全身を駆け抜ける途方もなく強い衝撃と誰かの悲鳴
世界が暗転していき、そして再び日の目を見ることは叶わなかった
『あいまいな空』
空は時に心象風景の例として用いられる事がある
移り行く天気を感情に見立て、流れ行く様は
確かに人の心に通じている
そして、今の空は鈍色の雲が覆うあいまいな天気模様を見せている
下らない事に悩み、どうにだってなる事を抱え込み、
そんな事すら一人で解決出来ない事に酷く落ち込んで
負のスパイラルに沈む
いつかこの空が晴れる日が来るだろうか、
それとも土砂降りの雨となり、
一切合切を洗い流してしまうのだろうか、
その答えは私には分からない
『好き嫌い』
好きだと思うのは興味をそそられるから
嫌いだと感じるのは関心があるから
相反する感情と同調する意識
異なるベクトルへ向いた心情
いっその事、何も感じなくなれば良い
そうすれば何も考えなくて済むから
そんな有り得もし無い妄想に嫌気が差す
だが、チープで都合の良い夢物語を好む自分が居る
つくづく難儀な性格だと自らを嗤い、
暗い部屋の中で静かに目蓋を閉じた
『失恋』
ボクにとっての恋はアイデンティティーの確立だ
君の好きなボクでなければ、君はボクを選ばないと思ったから
趣味も、容姿も、普段の言葉使いや振る舞い、
その全てを君の好きなボクで居られるようにした
所詮は無価値なボクのアイデンティティー
君の為ならどう変わろうとも惜しくは無い
そうして、取っ替え引っ替えしたまま
やがてボクはボク自身を見失っていた
否、元々そんなものは無かったのかも知れない
今日もまだ彷徨うボクが探しているのは
果たして『恋人』か『自分』か
『天気の話なんてどうだっていいんだ、僕が話したいことは、』
君と僕とは文字通り、住む世界が場所が違った
君の日常は僕には想像もつかない程に絢爛豪華で、
僕の日常は君が考えもつかない程に質素で惨めだ
手を伸ばせば届きそうなこの距離は、
どうしようも無い程に遠い
僕達の世界はあまりにも掛け離れているが、
唯一空の機嫌だけは分かち合える
話したいことは沢山あるが、それら全てを飲み込んで
僕はまた話したくも無い天気について話す事にした