『ごめんね』
間違っていたのは何時だって私だった
そんな事、どうしようも無い程に分かりきっていたけれど
私の中に巣食う醜いプライドがその言葉を喉の奥に閉じ込めた
君は仕方無いなと笑っていたけれど、
その胸の内ではきっと私に呆れていたんだろう
一方的に頼って、甘えて、都合が悪くなれば突き放して
こんな我が儘な人間を放って置けないなんて、
お人好しにもほどがある
それとも別の理由があったのだろうか?
今となってはその答えに価値など無く
君に伝えたかった親愛の言葉は言えず仕舞い
けれど、無責任かもしれないけれど
この言葉だけはどうしても伝えたい
『半袖』
ボクは自分が嫌いだ
中途半端に高いせいで悪目立ちする身長も
湿気ですぐに膨れ上がる髪も
自分が発する低くしゃがれた声も
無駄に記憶力の悪い頭も
両親には申し訳無いけれど、
何一つとして好きな部分など無くて
可能なら消えてしまいたいほど
この肌を露出させるなんて考えるだけで恐ろしい
だからこの時期だけは本当に嫌で嫌で仕方無い
校則だかなんだか知らないけれど
袖丈くらい自由にさせて欲しいと思う
でもこれを着た着ないで悪目立ちしたくないから
渋々半袖の制服を手に取る
あぁ、早く夏が終わらないかな……
『天国と地獄』
ソレは対を成すもの
天を舞うコインのように不確定で不規則な表裏一体
気紛れにその顔を変え、手のひらを返す
故に油断はしない
万全を期して、石橋を叩いて渡る
慎重に、されど大胆に
けれど、どうしたってその時は訪れる
幸せは一転、不幸のどん底へ真っ逆さま
逃れられない運命(ウンメイ)と、導かれた運命(サダメ)
何もソレは死後だけの話ではない
密やかに、されど確実に、此方に迫ってくるのだから
『月に願いを』
思えば不自然な話だ
空に浮かんでいるのであれば、ソレはなんだって良いはずなのに
虚空を漂う気儘な雲でも無く、燦然と輝く太陽でもない
ソレは瞬く無数の星々でも良いのであって
どうして人々は月に祈り、願いを託したのか
そんな事、考えたって分かりはしないのに
眠ってしまうその時まで、暗き空に浮かぶ蒼き月に思いを馳せた