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12/23/2023, 3:46:33 PM

飾り付けされた部屋に、並べられた料理。
今日はあいつと過ごすはずだった。
それなのに俺は暗い部屋で1人座って並ぶ料理を眺めている。

1番じゃないんだろうなって、薄々気づいてた。
それでもあいつは優しかったから、気づかない振りをしていた。

テーブルの真ん中に置いてある箱に手を伸ばす。
シュルリと赤いリボンを外して中身を取り出す。
取り出したボトルをシュッと押すと、よく知る香りが部屋に広がった。

あいつがよく使う香水に、少しだけ自分が使う香水を混ぜたもの。
存在するか定かでない他の奴への、せめてもの牽制のつもりだった。

それも意味がないし、俺は顔も名前もしらない誰かに負けたんだろう。

ばいばい。大好きだったよ。

(14 プレゼント)

11/17/2023, 10:09:17 PM

冬になったら、あいつと

イルミネーションを見に行きたい。
こたつで鍋をつつきたい。
年末恒例の番組を見ながら年を越したい。
寒いねって笑いながらポケットの中で手を繋ぎたい。
寒いのを理由に一緒の布団に潜り込みたい。


あいつの誕生日を祝いたい。


約束したのに。次の誕生日は2人でゆっくり過ごすって。
なのに、なんで、遠くに行ってしまったんだよ。


(13 冬になったら)

11/14/2023, 12:36:30 PM

風が、おろしたてのコートを揺らす。
綺麗に色付いた紅葉がひらひらと舞っていく。

この風に乗って、紅葉の葉に紛れて、俺の想いも飛んでいってしまえば良いのに。
俺の中で色付いた想いが届く事はない。

叶わぬ恋。

かつて同じ道を歩んでいた俺の想い人は、
夢を追って遠くに行ってしまった。
道は拓けただろうか。鮮やかな日々を送っているだろうか。

「好きだ。」

冷たい風に吹かれて紅葉が舞った。


(12 秋風)

11/13/2023, 1:55:57 PM

[8 脳裏 と同じ世界線]


初めて罪を犯してから丸2年が経った。
その後も罪を重ねて、一体何人の命を奪っただろう。
ただの大学生だった俺はすっかり殺し屋になっていた。

「──。」

トップが俺の名前を呼んだ。

「何?帰ってきたばっかなんだけど。」
「依頼だ。」
「聞いてた?今帰ってきたんだって。」
「じゃあ、他の奴がヤってもいいのか。」
「は?」

差し出された画面には、よく知る顔が写っていた。
なぜ、こいつがターゲットになった。
こいつは明るいところで真っ当に生きているんじゃないのか。

「こいつが何をしたんだ。」
「この界隈の情報を嗅ぎ回ってる。」
「何のために。」
「さぁ?そこまでは。」
「俺が断ったら、」
「他の組織が消しにかかるだろうね。」

どうする?とファミレスでメニューを選ぶくらいのノリで聞かれて、感情が揺さぶられる。
俺が殺らなくても殺されてしまうなら、

「俺がやる。」
「そうこなくっちゃ。他の連中が気づく前によろしくね。まだ、俺達しか知らないから。」
「あぁ。」
「データは送っておくよ。いらないと思うけど。」


俺も一緒に死ぬか、或いは──。


あぁ、案外ありかもしれない。
理由はともあれこちら側に踏み入れてしまったのなら待つのは堕落か死だ。

明日にはあいつの元へ向かおうか。
待ってて。すぐにまた会えるから。





(11 また会いましょう)

11/12/2023, 12:08:38 PM

18:30、8階の非常階段前。

それから15分間だけが、ただの後輩から抜け出せる時間だ。
いつ人がくるかわからない。
人の気配がしたら、その日は終了。
決してバレてはいけない関係。

そんな不安定な関係に縋ってしまうのは、
バカなことだとわかっている。
でも、2人でいる15分が心地よいのだ。
だから、もう少しだけ、
15分だけの関係に甘えさせて欲しい。


(10 スリル)

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