12.泣かないで
僕には小さい頃、大人に見えない友達がいた。
その子の名前は分からない。
女の子で僕と同い年ってことしか…
大人が帰ってくると君はすぐ消えてしまう。
僕はひとりぼっち。とても悲しかった。
寂しくて見られないように泣いていた。
そうすると君が耳元で『泣かないで』っと後ろから
抱きしめてくれた。泣いてるのを見破るように。
僕の好きな時間だった。その時間が暖かくて切ない。
僕が大人になったら消えてしまうのだろう。
いつからか僕はそう思っていた。
大人になって思っていたことが現実になった。
君が見えなくなったんだ。というか見なくなった。
今考えると空想の友達だったのかもしれない。
君に会いたくて寂しくて
家で泣いていたこともあった。
すると君が耳元で『泣かないで』
って言ってくれるような気がしたからだ。
「君に会いたいよ。泣かないでって抱きしめてよ。」
そう君を思い出しながら眠りについた。
11.冬のはじまり
僕は熱がでてしまった。高熱だった。視界がグラグラ揺れていて気持ちが悪い。学校なんかとても行けない。
親も仕事に行っているため部屋に1人。
何もできないからベットで寝ようと寝転がった。
しばらくするといつのまにか寝てしまった。
熱のせいか夢を見ていた。いつも見る夢だ。
小学生の頃の僕と同じくらいの女の子。
女の子は白いワンピースを着ていて、太陽の光で
とても眩しかった。
2人は手を繋いで走っている。周りにはお花がたくさん咲いている。その時間がとても楽しかった。
夢でも目が覚めないで欲しかった。女の子が振り向いて僕の方を見た。
「そろそろ目を覚まさなきゃだよ。」
そう言われて僕は「覚ましたくない!」
っと泣いて言っていた。
女の子は微笑みながら「また冬に会おうね!」
僕が返事をする前に目を覚ましてしまった。
体を起こすと目から水が溢れてきた。涙だった。
夢でも現実でも泣いているなんて情けないと思いながら笑っていた。
外は雪が降っていた。「もう冬か〜早いなぁ」
君と雪の中を楽しそうに走っているのを想像していた。「君に現実でも会いたいよ。」そう叶わない願いを口にしていた。
10.終わらせないで
視界は真っ暗。僕は目が見えない。
いつも見えない敵と戦っているみたいだ。
前が見えない僕は苦しかった。
目が見えなくても何かできるようにしないとって
思って毎日公園に通っている。
目が見えないと音に敏感になる。風の音、用具で遊ぶ子供達の声。とても楽しそうだなって思いながら、
椅子に座った。
すると、誰かが隣に座ってきたことがわかった。
だから「いい天気ですね。」と言った。
「くもってますよ笑」笑いながら話しかけてくれた。
その方は、女性のようだった。
僕達は暗くなるまで話した。目が見えないこと、好きなこと、いつも何をやっているのか、
話が止まらなかった。
この時間が終わらないでほしい、そう思った。
この日常が夏ごろまで続いた。
その日、大事なことを話した。
それは、「俺、手術するんだ。ドナーが見つかったんだよ!君の顔を見られるようになる」嬉しくてすぐに伝えにいったが、君は嬉しくないような声で
「良かったね」っと言っていた。
その一カ月後に手術をした。
目が見えることに感動し、涙した。
君に話したくて公園に行ったがいつまでたっても現れない。探してもいない。その日からずっと訪れているが君はいない。ある日、君を見かけた。
だが、君は目が見えなくなっていた。
もしかしたら、君は僕のドナーだったのだろうか。
申し訳なくて声をかけられなかった。
僕の目が見えていたらこんなことにならなかったのにと涙した。
君と話すその時間が続いて欲しかったのに。
9.愛情
愛情とはなんだろう。子供の頃はわからず、先生に聞いてみたこともあった。
先生はいつも「家族はあなたを愛しているのよ」って説明してくれたが、いつも僕は納得いかなかった。
先生には言ってないが、僕に家族はいない。
小さい頃に捨てられたんだ。
僕の心はポッカリ空いていた。
多分、愛が欲しかったんだ。
誰でもいいから僕を愛して、
僕の心を愛でうめてほしかった。
でも、家に帰っても誰もいないひとりぼっち。
いつも寝る時は寂しくて泣いていた。
ある日、先生が家庭訪問で家に来た。
僕の家を見て、全てを悟ったのか僕に
「ねえ、私と一緒に住まない?私があなたのお母さんになるの!」と言ってハグしてくれた。
こんなに暖かいハグをしてもらったのははじめてだ。
暖かくて僕の心が暖かくなっていくのを感じた。
とても嬉しくなった。これが愛情なのだと…
そう思った。
「いいの?僕は先生の子供になってもいいの?」
泣きながら聞いていた。
愛情とは、家族関係なくあるんだなとそう思った。
8.太陽の下で
「君は太陽の下に行くと体が焼けるように痛くなるとしたらどうする?」僕は体が弱かった。
まるで吸血鬼のように肌は白くて
太陽に当たってはいけなかった。 なぜかって?
僕は太陽の光を浴びると体が焼けるように痛くて
死んでしまうからだ。
だから僕は、ずっと部屋に引きこもっている。
孤独で真っ暗な部屋。とても寂しい。
こんな生活に耐えられなくて、
死にたいと思ったこともある。
でも最近は、窓から君を見ることが楽しみになった。
君は太陽の下で輝いている。
そんな君に一目惚れをしてしまった。
「美しいなぁ」とそんな一言を毎日呟いていた。
だが、なぜこんなに好きなのに胸が苦しんだろう…
君に触れたい…君と話したい…君と太陽の下でデートがしたい…その笑顔を僕に向けて欲しい…
そんな願いは全て叶うことが出来ない。
僕は外に出られない。夜出れたとしても君はいない。
こんな世界に生きていても仕方がないと思った。
だから僕はひとつの願いを叶えるために外へ出た。
太陽の下で死のうと思った。
死んでまた君に会おうと思った。
体が焼けるように痛い。でも仕方がない。
「君のことを思ってるよ。」
僕は君のことを思いながら死んだ。