12.泣かないで
僕には小さい頃、大人に見えない友達がいた。
その子の名前は分からない。
女の子で僕と同い年ってことしか…
大人が帰ってくると君はすぐ消えてしまう。
僕はひとりぼっち。とても悲しかった。
寂しくて見られないように泣いていた。
そうすると君が耳元で『泣かないで』っと後ろから
抱きしめてくれた。泣いてるのを見破るように。
僕の好きな時間だった。その時間が暖かくて切ない。
僕が大人になったら消えてしまうのだろう。
いつからか僕はそう思っていた。
大人になって思っていたことが現実になった。
君が見えなくなったんだ。というか見なくなった。
今考えると空想の友達だったのかもしれない。
君に会いたくて寂しくて
家で泣いていたこともあった。
すると君が耳元で『泣かないで』
って言ってくれるような気がしたからだ。
「君に会いたいよ。泣かないでって抱きしめてよ。」
そう君を思い出しながら眠りについた。
11/30/2023, 11:42:01 PM