44.奇跡をもう一度
何もしなくてもいい
少しの間でいいから会いたい
あの海の上で初めて出会った時みたいに。
またあの人に出会えたら…
この気持ちも忘れられるのに
早く会いたい 期待してる自分がいる
もう来ないのにね…
43.たそがれ
学校が終わり、みんな帰る準備をしている。
それを見て私も帰る準備をする。
君が来るまで…
みんなが帰っていく。みんなに手を振って見送る。
教室が私1人になるまで。秘密の約束。
君が来るまで、あと少し、待ち続ける。
来るはずもないのに…
勝手に涙が出てくる…
気づけば外は夕暮れ。早く帰ろう。
誰も来るはずのない教室から…
42.それでいい
今僕には付き合っている人がいる。
ツンデレで誰でも見惚れてしまうほど美しい。
そんな大好きな人と平和に過ごしていたが、
そんな日常に事件が起こる。
「おい!大丈夫か?」
そんな声が聞こえて我に帰った。
「大丈夫だよ。ちょっとぼーっとしてた。」
そんな返事を聞いて君は不機嫌そうになる。
「最近おかしいぞ?俺との昔の思い出とか
全然覚えてもないし、俺の好物まで忘れてる。
お前が覚えてないのは絶対おかしい。」
そんなことを言われて初めて僕は昔の記憶が
段々忘れていることに気がついた。
君と付き合った日、君と初めてデートに行った日、
そんな楽しかった日常が思い出せないでいる。
僕の顔にその感情が出ていたのか君は心配そうに僕を見ている。君は僕の手のひらに君の名前を書いた。
「これで、俺のことは忘れないだろ?」
その日から僕と君の生活が少しだけ変わった。
君は、僕と君との思い出をノートに書いている。
他にも一日のスケジュール、君の好きな物などを壁に貼ってひとつでも忘れないようにしてくれている。
「そろそろ電気消すか!」君は仕事が休みの日は、
ずっと僕のそばにいてくれている。ご飯食べる時も
お風呂入る時も寝る時も。君と話す時間が増えていたけど、君の笑顔を見ることがだんだんと減っていった。申し訳なくて、コンビニで君の好物を買おうと
思ったけど、忘れてしまった。
だから君の好きな飲み物、ジンジャーエールを買った。時が過ぎて、春になった。
毎日欠かさず僕は君に質問をする。
「今日はなんの質問だ?」そう聞いてくる君に僕は、
「僕は君とずっと一緒にいたい。」そう答える。
君は満足したような顔になり、笑顔になる。
それでいい。昔の記憶が無くなったとしても今君といるこの時間は覚えている。今を大切にしよう。そう君の顔を見て思う。
41.Kiss
私はずっと仲のいい幼馴染がいる。
幼稚園、小学校、中学校高校までもが一緒で私の隣にはいつも幼なじみがいた。私はあなたがいるだけで
いいと思った他の人なんて眼中にない。
あなたのことだけしか見ていなかった。
あなたに恋をしていた。
でもそんなことを言ってしまえば、この関係が壊れてしまう。そんなことは嫌だからこの感情は押し殺していた。
でもある日突然、君は私の隣からいなくなった。
友達ができたんだ。部活も初めて仲良くなる人が増えたって、とても楽しそうに話してくれた。
それを聞いて私の心はキュッと苦しくなった。
ずっと一緒にいたのは私なのに。
そんな奴らと一緒に居ないでよ。
私とずっと一緒にいるって約束したじゃん。
そう思うようになっていた。嫉妬心が強かった。
こんなにもあなたのことが好きで、
小さい時から一緒でずっと一緒にいられると思っていた。あなたがほかの人と話しているのを見ると胸が苦しい。あなたは彼氏が出来たようで顔を赤らめながら男と話しているのを見ると悲しくなる。
久しぶりに泊まりがけで遊ぶことになった。
私は胸がドキドキで緊張で張り裂けそうだった。
でも君はそんなこともお構いなしに近づいて、
一緒にゲームしてお話してとても楽しかった。
その時間だけは君を独り占めできた。この時間が終わらなければいいと思った。
でもそんな願いは叶えられない。いつの間にか寝落ちしていたようで床で2人で寝ていた。
君の寝顔を見て胸が高鳴る。とても綺麗で見とれてしまっていた。ふと気づくと私はその寝顔にキスをしてしまった。自分の感情が抑えられなかった。
「好きなのに、こんなに苦しいなんて…好きだよ。
世界で1番好き…だったよ。」
もうこんな恋はやめよう。もう実らないのだから。
そう思いながら君に布団をかぶせ、眠りについた。
40.安心と不安
僕は記憶に障害がある。どういうことかと言うと、
ストレスが溜まったり精神的に負担になることが原因で1部の記憶がなくなってしまう。
僕の場合は全てのことを忘れてしまう。
自分の名前さえ、忘れてしまう…
初めて発症したのは高校生のときだった。
父の虐待が原因だ。物心つく時から父に暴力を振るわれていた。それが辛かった。
僕は母を守ろうと毎日父と戦った。
ある日、ついカッとなってすぐそばにあった物で父の頭に投げつけた。母は泣いていて、
父は僕の下で倒れて血を流している。
何が起きたのか分からなかった。過呼吸になる。
息ができない。そのまま僕は倒れ込んでしまった。
目が覚めた時には、知らない女の人が僕の顔を
覗いていた。お母さんだよって言ってたけど
思い出せない。怖い。
自分の知らない出来事が起こっている。
そんなことが起きてから5年だった。
僕は大人になった。こんな僕でも彼女が出来た。
僕が記憶に障害があることも理解してくれている。
記憶がなくなったとしても一緒にいたいと言ってくれた。そうなったらお互い苦しいと思うのに…
彼女と一緒にいられる安心と、
いつか全ての記憶をなくしてしまう不安。
この思いを持ちながら生活していくとしたら辛いし、怖い。それでも生きなければいけない。
彼女のためにも僕のためにも…