空はこんなにも
梅雨時期のこの季節に晴れ間が見えている。天気予報では雨だと言っていたのに、裏切られた気持ちで雨傘を手に持ったまま帰路に着く。少しの晴れ間に、黒く澱んだ心が澄むということはなく、いっそ雨が降ってこの気持ちも綺麗に流して欲しいと思わずにはいられなかった。
地面には、昨日までの雨で出来たであろう水溜まりがあちこちに出来ていて、少し覗き込むと冴えない顔をした自分が映っていた。
子供の頃の夢
子供の頃の夢はなんだっただろう。遠い昔のことでもう朧気であるが、およめさんとか保育園のせんせいなんて、元気に言っていたような気がするし、それを周りも笑って受け止めてくれていたような記憶がある。
そんな幼い頃の私は今の私を見てどう思うだろうか。
朝の通勤ラッシュの中、職場へと向かうため渋滞に揉まれながら車の運転をする私の顔に笑顔はない。
今日も職場に行って、やりたくもない仕事をして、笑いたくもないのに愛想笑いをして仕事をこなすのだ。この世の中にそんな社会人は五万といるだろう、その中の1人に私は成り下がったのだった。
夢なんて響きのいいもの、今の私に夢見る力は残っていない。
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いつからか将来の夢が看護師になり、その職業についている私です。今の夢は何かな、およめさんかな。
どこにも行かないで
「どこにも行かないで」
呟かれた言葉は小さく掠れていて、普段の快活な彼から発された言葉だとは信じられないほど弱々しい。
俺の服の裾を掴む手も少し震えていた。俯いた表情は見えないけれど、苦しそうに歪んでいるのだろうか。
普段からもっとお互いの話をしていればよかった。そうすれば、彼にこんなことを言わせることもなかったのだろうか。
なんだか遠回りをしていたようだなと、震える手を握り込むとびくりと体を強張らせた彼はこちらを見上げた。瞳に溜まった涙が今にも溢れ出しそうで、場違いながらも綺麗だと思った。
「俺はどこにも行かないよ」
それを聞いた彼の瞳から涙がひとつ溢れた。
好き、嫌い、
あなたの好きな所も嫌いな所もあって、それでもあなたと一緒にいたいからそばにいます。
「お互いがお互いを大事にできれば1番いいよね」と、あなたはよく笑いながら言ってくれるけど、優しすぎるあなたは自分の気持ちを押し込めすぎてるんじゃないかと少し心配にもなります。もっと怒ったり、自分勝手で人間らしいあなたも見てみたいなと思いながら、今日もあなたの優しさを感じるのです。
雨の香り、涙の跡
私のお気に入りの青い傘と、並んで歩く透明傘。傘の分の距離でいつもより少し距離が空くのがもどかしい。だから少し雨は嫌いだ。
その日にあった他愛もないことを話すだけの学校帰り。いつもならすぐに返事が返ってくるはずなのに、その日はどこかテンポが悪い。
「具合でも悪いの?」
くるりと振り返って、足を止めた。暗い表情をしたあなたは一緒に足を止める。
--ごめんね、
雨の音にかき消されそうなほどの声音で呟かれた。その後に続いた言葉も聞こえていたはずなのに、どこかぼんやりと私の中に消えていった。呆けたような私を、どこか苦しそうな表情で見つめてくるあなたの目元には涙の跡があった。
手を伸ばしても届かないこの距離がもどかしい。
雨はまだ止みそうにもない。
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余談なんですけど、
ペトリコールって雨の匂いって意味なんですね。
推しの大好きな作品にHOTEL PETRICHORってありまして、今日調べて初めて知りました。(にわかオタクすぎる)(YouTubeにあるからみてみてね)
私は雨の土臭いような独特な匂い嫌いじゃないですね。雨って感じで。