糸
なとりの「糸電話」
クリープハイプの「イト」
Aimerの「蝶々結び」
糸と聞いて1番に頭に浮かんだのが歌だった。
3つとも有名な曲だけども、歌詞がとても素敵で大好きな曲達。
運命の赤い糸なんて、この歳になって流石に信じてはいないけれど、存在していたら素敵だなと思ってしまうのは少女趣味なんでしょうかね。
私の小指に糸が続いているなら、誰に繋がっているのか気になってしまうね。それはあなたの小指に繋がっていますか?それともまだ出会っていない誰かですか?
私にも運命があるのなら、早く出会いたいな、運命に。
届かないのに
分かっていたことだ。どんなにこの手を伸ばしても、名前を呼んでも、あいつが振り向いてくれないことなんて。
友達というポジションに収まっている俺には、触れる資格もないのかもしれないな、と思いながら俺はその手を伸ばした。
「ん?」
服の裾を掴まれたことに気付いた彼がこちらを向いた。
「何にもない」と言うと彼は屈託なく笑いながら、軽口を叩く。
俺の思いなんか届かない、いや、届かなくていい。
記憶の地図
久しぶりのその場所は自分の記憶よりも古ぼけていて、どこか懐かしいようにも感じる。並べられた遊具は、あの時よりも幾分小さく感じられ、今では遊ぶこともままならないだろう。
懐かしい空気にどこか毒気を抜かれたように、備え付けられたベンチに座ってただぼんやりとその光景を眺めた。
0時を回った公園にいるのは自分1人だけで、昼間はきっと遊ぶ子供達で賑やかだろうそこはシンと静まり返っておりどこか寒々しい気配まで漂っている。
数年前の約束を頼りに、バカ正直にここにやってきたが、そんな約束を未だに守っていたのは俺だけだろうな、と空を眺めた。生憎のこの梅雨時期もあり、星一つも浮かんでいない。雨が降らないだけマシかと、深く掛けていたベンチから腰を上げた。
明るい声で話す、あいつの声が忘れられない。
「20歳じゃつまんないから、お前が24歳になったらここに集合で!」
「25じゃなくて、24って微妙だな。お前覚えとけるの?」
「キリがいい数字じゃつまんないだろ」
よく学校を抜け出して遊んだこの公園で、太陽の光を目一杯浴びて笑う姿を俺はいまだに忘れられないんだ。
自覚しきれなかった想いは、未だに自分の胸を蝕んでいる。
「あーあ、ほんとバカみたい」
ぽつりと呟いた声は闇に飲み込まれて消えていった。