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届かないのに



分かっていたことだ。どんなにこの手を伸ばしても、名前を呼んでも、あいつが振り向いてくれないことなんて。

友達というポジションに収まっている俺には、触れる資格もないのかもしれないな、と思いながら俺はその手を伸ばした。

「ん?」
服の裾を掴まれたことに気付いた彼がこちらを向いた。

「何にもない」と言うと彼は屈託なく笑いながら、軽口を叩く。

俺の思いなんか届かない、いや、届かなくていい。

6/17/2025, 1:47:58 PM