わたしはあなたを知ってる
あなたはわたしを知らない
わたしはあなたがどれほど
仲間に愛されていたか知ってる
わたしはあなたがどれほど
ファンに愛されていたか知ってる
わたしはあなたの笑顔知ってる
わたしはあなたの声を知ってる
わたしはあなたの優しさを知ってる
わたしはあなたの悲しみを知らない
あなたはわたしを知らない
わたしはあなたが死んだ理由を知らない
あなたはわたしを知らない
わたしはあなたの心を知らない
あなたはわたしを 知らない
【わたしとあなた】
【一筋の光】
一筋の光が林の中へ射し込む。
光が誘う先へ進むとそこには
少女が立っていた。
そして大粒の涙が頬を伝っている。
物陰に潜んで覗いていた
僕は彼女のそばへ恐る恐る近寄る。
少女は僕の存在に気付く
そして微笑み、僕の頭を優しく撫でた。
どこか寂しそうな少女の一筋の光になりたい。
僕は彼女に寄り添う。
彼女も僕の体に触れ、抱き寄せた。
少し懐かしいにおいがした。
この町にある映画館。私が子供の頃からあるその映画館は一日に一人、客が居たらまだ良いほう。一人も客がいない日がほとんど。叔父はその映画館で働いている。映画が好きでたくさんの人に映画を観てもらいたい、そんな願いを込めて営んでいる。最新の映画を上映する訳ではなく、古い映画だけを日々上映している。それでは若者が足を運ぶ理由がない。常連のおじいさんに通う理由を聞いてみたことがある。
「ここはね、昔を思い出させてくれるんだ。子供時代、指をくわえて映画館の前で立ち尽くしていたんだ。悔しかったね、お金もなく自由な時間もなかった。でも今は…好きな時に好きな映画を映画館で観れる。今日まで頑張って生きてきた自分へのご褒美だ。」
その話を聞いて少しだけ寂しい気持ちになった。
胸がギュッとされるような感覚。
叔父にもきっと心の奥底にある本当の理由があるのか。
「お、珍しいな。観ていくのか?」叔父が窓口から顔を覗かせて少しはにかんだ表情をする。
「暇つぶしだよ。」チケットを受取り、ガラガラの客席を見渡す。常連のおじいさんが手招きをしてニコニコしていた。私はおじいさんの隣に座り、スクリーンに映し出されるモノクロの映像を見る。
少しの切なさと悲しさ、どこか愛おしいこの場所は叔父が亡くなり閉館された。
今はあの場所は更地になっている。
目を閉じるとあの時の映画館が脳裏に浮かぶ。
それは哀愁をそそる光景であった。
【哀愁をそそる】
【鏡の中の自分】
鏡にうつる私はいつも笑顔で愛らしく落ちることのないメイクが施されている。髪を結うのは私の愛おしいご主人。私よりも少しお姉さん。
「今日はどんな髪型がいいかしら」
ご主人は私に問うの。けれども私は笑顔を絶やすことが出来ないから口を開けないの。どんな髪型でもいい、ご主人が結ってくれるのなら私はどんな姿でも満足よ、ほら見てもう素敵なハーフアップになった。毎日それを繰り返し、繰り返し年月が経ちご主人は前よりも素敵なレディになった。私の自慢のご主人。私が座っていた鏡台の前はもう私の席ではない。今はご主人の特等席になっているの。鏡にうつるご主人はいつも笑顔で愛らしく1日で落とすメイクを施している。私の髪を結うことはなくなった。今は自身の髪を結う。ああ、私がご主人の髪を結ってあげたい。この腕が広げられたら、この身体が動いたらどんなにいいことか!仕度を終えたご主人は私に目もくれずに部屋をあとにした。遠くから鏡にうつる私はいつも笑顔で愛らしく塗料がとれたメイク、髪型はあの時のハーフアップ。また、私に触って髪を結って。アナタの宝物だった日々の一部にして。
その日まで少しだけ眠るわ。
おやすみなさい。