NoAmi

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【鏡の中の自分】

鏡にうつる私はいつも笑顔で愛らしく落ちることのないメイクが施されている。髪を結うのは私の愛おしいご主人。私よりも少しお姉さん。
「今日はどんな髪型がいいかしら」
ご主人は私に問うの。けれども私は笑顔を絶やすことが出来ないから口を開けないの。どんな髪型でもいい、ご主人が結ってくれるのなら私はどんな姿でも満足よ、ほら見てもう素敵なハーフアップになった。毎日それを繰り返し、繰り返し年月が経ちご主人は前よりも素敵なレディになった。私の自慢のご主人。私が座っていた鏡台の前はもう私の席ではない。今はご主人の特等席になっているの。鏡にうつるご主人はいつも笑顔で愛らしく1日で落とすメイクを施している。私の髪を結うことはなくなった。今は自身の髪を結う。ああ、私がご主人の髪を結ってあげたい。この腕が広げられたら、この身体が動いたらどんなにいいことか!仕度を終えたご主人は私に目もくれずに部屋をあとにした。遠くから鏡にうつる私はいつも笑顔で愛らしく塗料がとれたメイク、髪型はあの時のハーフアップ。また、私に触って髪を結って。アナタの宝物だった日々の一部にして。
その日まで少しだけ眠るわ。
おやすみなさい。

11/3/2023, 2:49:36 PM