なんで君は泣いてるの?僕は今まで君のために尽くしてきたのに。一生懸命働いて、記念日は忘れずにお祝いして、君の喜ぶ言葉を沢山伝えて。君はいつも"ありがとう"とか、"嬉しい"なんて言ってたじゃないか。僕がする事全てに、感謝や喜びを表してたじゃないか。それに、僕がどんな風になっても、笑って受け入れるって言ったじゃないか、あぁ、彼女の声が聞こえない。もう僕の意識は真っ黒になってしまう。僕は君の笑顔が好きなんだ。だから、泣かないで。
笑って?僕は心のそこからの本音を呟く。すると彼女は、泣きながら笑った。もう、泣いてても、笑っているのは嬉しかった。だけど最後に、涙の理由くらいは知りたかったなぁ。
この人は、なんでもう死にそうで、とっても辛かった筈なのに……あなたのそんな姿を見て、笑えるわけがないでしょう。そう思った気持ちを奥へ消し、徐々にぬくもりを失うあなたを抱いた。
私はある日、木が一本のみ生えた草原に立っていた。何故ここにいるのか、どうしてここにいるか等分からずに、ただただ立っていた。空は清々しく、地は草花が生き生きとしているその空間は、私の心を動かすのには十分なものだった。意味もなくその場から走り出し、何も考えずに草花の匂いを取り入れた。息が切れ、改めて当たりを見渡すと、そこには何もない。アァ、ナニモナイノニココロオドル。ソノ瞬間コソ、動物ノヨウニ本能ニ任セテ行動デキル場所コソ、私ガ求メタモノデアッタ。
束の間の休息は、私にとっての命綱であり、私にとっての唯一の救いである。しかし所詮は束の間。すぐに過ぎ去り私をまた苦へと引き込む手助けをする。あぁ誰か助けてくれ。私は何も悪くない。アイツが悪いんだ。全て悪いんだ。そう思いながら息をしていない目の前のそれを刺していた。この刺す瞬間こそ、怒りに任せて手にある狂気を使う瞬間こそ、私の休息なのだ。
力強く、眠っている貴方に力を込める。急がないと、急がないと、急がないと、急がないと。急いで力を込めないと、貴方が死んでしまう。もっともっともっと力を込めて、血液を循環させないと。お願いだから、死なないで。お願いだから、目を覚まして。
目の前を通りすぎるトラックと、赤からなかなか変わらぬ信号機。それに装飾を加えるように桜の花びらが枚散っていた。去年もそんな日であった。そう思いながら僕は足を進める。久し振りにやってきたこの場所は、昔とほぼ変わることが無いようにすら感じた。そんな場所で、ふと足を止めると、目的の墓が見えた。今まで、何度この場所に来たのだろう。そうやって過去にここへ墓参りをした記憶を思い出す。驚く程全て同じだったように感じる。幻覚だろうか。はたまた私の記憶の捏造か。そうやって違和感を覚えていると、何者からか頭を強打された。私は、過去に同じめにあった気がするんだ。過ぎ去った日にその事があった筈なのだ。そうやって過ぎ去った日を思う。暫くして、私の記憶は途絶えた。
あぁ、今日は僕が"誤って"トラックのいる道へ付き出して殺してしまった彼女の命日だ。折角だし、墓参りにでもいくか。