夜空の音

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2/8/2026, 10:09:50 AM

スマイル

「あと、スマイル1つください。」
1番嫌いな注文が入った。
ほとんどは茶化しか罰ゲーム。
若い男の子たちが大半だ。

「....はい!ありがとうございます!」
そう答えて笑っては見せるが、マスクの中では頬が引きつっている。

2/7/2026, 10:52:53 AM

どこにも書けないこと

鉛筆を持っては机に置く。それを繰り返す。
私の目は、ノート、机、教科書、消しゴム、メモ帳、用紙。それぞれを目に写してはため息を吐く。

彼と同じ学校へ行きたい。

彼の希望校を知っているが、私には賢すぎる。
学校名を書きたいけど、書くことはできない。誰にもバレてはいけない。友人でいられなくなるから。


卒業式の日、彼が友人と肩を組んで校門をくぐり抜ける姿を見た。
誰にもバレずに今日を迎えられた。
私の進学先と彼の進学先は交わることはなかった。

最後だからと、消しゴムと鉛筆を取り出す。
消しゴムカバーを外して、鉛筆を手に取るけど、手が止まってしまった。

やっぱり、彼の名前を書くことは出来なかった。

2/6/2026, 10:38:21 AM

時計の針

時間が無い。
いくらあっても足りない。
そんな思いで、貴方に会える瞬間を心待ちにする。
お互いに忙しくて、会えてもすぐに離れることになる。とても悲しい。
「まだ行かないで!」
そう言うことができればどれだけいいだろうか。
でも、余計なプライドでその一言が言えない。
そうして、貴方と巡り会い、離れる。それを繰り返す。

それが、長針と短針。
それぞれが重なる一瞬の出来事。

2/5/2026, 10:13:36 AM

溢れる気持ち

あれがしたい。
これもしたい。
ああなりたい。
こうありたい。

そう、気持ちを包み隠さず大きな声で言う貴方は、眩しく感じる。
眩しすぎて、目を逸らしてしまう。ちょうど、真夏の太陽のようだ。

1度、聞いてみたい。
どうしたらそんなに気持ちを表現できるのか。
どうして、気持ちが溢れるほどの感性を持っているのか。
そんなことを聞くと、貴方は呆れるだろうか。

いや、聞かなくともわかる。
自分を押さえ込みすぎたのだと。心を凍らせすぎたのだと。
思えば幼少期は気持ちが溢れて止まらないことが多かった。それを、“年上だから”といなされて、感情の抑制を覚えていった。
押さえ込みすぎて、心が溢れるほどの感情は不要だと判断したのだろう。

失くしたものを取り返すように、必死に自分の心に耳を傾けるが、声の聞き方を忘れてしまった。
壊れてしまったのだろうか。
いや、感情が知らぬところで溢れて、壊れてしまったんだ。
きっとそうだ。
いつか心の声を聞けるようになれば、この足枷のような病気も治ると信じたい。

2/4/2026, 10:30:31 AM

Kiss

静かに眠る彼女の額に、1つのキスを捧げた。
彼女は微笑んでいて、僕の胸は苦しくなる。

今朝、いってきますとキスをした。
彼女は可愛い笑顔でキスに答えながら、いってらっしゃいと笑っていた。
少し体温の高めな彼女の唇が好きだった。
その唇が、今はもう温かくないことを知っている。それに耐えられる自信がなくて、額へキスを落とした。

翌日、多くの人が彼女に別れを告げにやってきた。
最後の1人を見送り、僕もこの場を離れようと思うが、どうしても彼女のそばを離れたくない。
そろそろお時間です。と、係の人に部屋の外へ押し出された。
「すみません。」
僕は係の人の静止を押し切って、彼女の元へ駆けた。

彼女の顔をもう一度見て、唇にキスをした。
「ただいま。....いってらっしゃい。」
最後のキスは、冷たくて、ほんのり塩の味がした。

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