ー合法ー(もっと知りたい)
科学者って多分、合法な「どうして?」だ。
証明する人。
周りに話したら笑われるコト。
海が青く見える理由とか、
空気ってなにかとか。
考えすぎ、って言われるコトを、
周りに笑われずに、「そういう人だから」「職業だから」って、
正当化できる。
でも、ある程度年齢のイッタ“普通”の人が、
“そういう疑問”を周りに話すと、苦笑される。
「面倒くさい」って思われる。
哲学者って多分、合法な「どうして?」だ。
概念を考える人。
誰もが考えたことのあるモノや、細かいコトを考えられる。
宇宙ってなに?
人間ってなに?
立証なんてできないコトを、真剣に考える。
でも、そういう人の中にも、認められない理論があった。
立証できないからこその、トラブルがあった。
物心ついて生まれる「どうして?」は、
既に誰かも考えていて。
それを大人になるまで引きずって、
合法にするか、
面倒くさい人になるかっていう、
それだけの違いってコト。
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疲れた〜。もうすぐ一週間終わりますね。
おやすみなさい。21:26
ー雷様ー(平穏な日常)
きっと、誰かにとって幸せな今日。
きっと、誰かにとって当たり前の日常。
子供が足を止めた。
鳥がさえずっている。
「お父さん!歌ってる!」
興奮した様子で、高く声をあげた。
「うんうん、歌ってるね」
お父さんは鳥を見て頷いた。
子供は点滅する信号機を指差した。
「お父さん。壊れちゃってる」
「うんうん。働きすぎたんだよ」
お父さんは信号機を見て頷いた。
子供は赤い車を指差した。
「お父さん!あの車怒ってる!」
「うんうん。道路がガタガタで痛いんじゃないか?」
お父さんは車を見て頷いた。
「さっ、そろそろ帰ろうか」
お父さんは子供を連れて、家に帰る。
途中、雨が降ってきた。
「お父さん!空の唾液!」
「唾液?」
お父さんは空を見上げた。
目に入ってきそうで、すぐ下を向いて、子供を抱えた。
「飛行機!」
子供ははしゃぐ。
お父さんは、腰が痛くなった。
家に帰って体を拭く。
そのまま二人でお風呂に入った。
外は大雨になっていた。
遠くで、雷がなっている。
「雷がなったら、へそを隠さないと」
お父さんが、冗談めかしてそう言った。
子供は素直に手を当ててから、どうして?と聞く。
「雷様に、へそを食べられちゃうから」
「ええっ!?大変!お父さんも隠さないと!」
「お父さんはいいの」
「雷様だから?」
「ええっ、違うよ!大人は平気。子供のは、美味しくて食べられちゃう」
「変な味覚」
ガラガラドッシャーン!
雷が、随分近くで落ちたらしかった。
「大きい音。大丈夫?」
お父さんは子供を心配する。
子供は言った。
「きっと僕のおへそを食べに来たんだ!!お父さん守って!」
「はいはい」
二人はギュッと固まる。
ふと子供が言った。
「雷様も、お腹空いてるのかも」
お父さんは窓へ目をやった。
それから、
「雷は、お腹の音かもね」
と、笑った。
子供は一度、へそに視線を向けた。
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眠い!
おやすみなさい。21:25
ーロボットー(愛と平和)
完全自律型ロボット。
自分で思考し、自らの意思で行動する。
それは、人間とほとんど変わらない。
四角い見た目は、一目で人間とは別だと分かる。
超絶天才な博士は、一人でそんなロボットを作った。
「人類が平和に暮らせるように、催眠能力を与えた。やっと、ついに、夢のようなロボットが」
博士は言い終わる前に倒れた。
過労のせいだった。
ロボットは、博士の息を確認して、泣く動作をしてみせた。
一通り泣き終わると、ロボットは博士を土に埋める。
ロボットに課せられた使命は一つ。
平和な世界を作ること。
ロボットは観察を始めた。
そして発見する。
大抵の人間は、些細なことに苛立ってしまう事を。
それをぶつける人もいれば、我慢する人もいる。
ロボットは、人がイライラする度に、幸福になる催眠をかけた。
幸福度はぐんと上がった。
ロボットは使命を果たしたと思った。
しかし、副作用として、人間の思考がまったく成長しないことに気がついた。
子供なんかは、まるで学習しない。
もしかして、誰も注意しないのか?
ロボットは気がついた。
だから、一度催眠を解いた。
何事もなかったかのように“元通り”。
ロボットは計算する。
しかし分からない。
怒りの原因を断てばいいのか?
そんなの、不可能だ。
……人間が人間である必要はあるのか?
ロボットは考えた。
人間という名の種族が存在し、幸福を感じていればなんの問題もない。
どうして先程、催眠を解いたのだろうか。
ロボットは考えた。
博士のプログラムのせいだ。
結論を導き出した。
倫理的に、まずいのかも。
仕方ない。
別の方法にしよう。
ロボットが外に出ていると、一人の少女が話しかけてきた。
「何してるの?あなた人間?」
「私はロボット。よろしく」
「何してたの?」
「人の観察」
「どうして?」
「人を幸福にするため」
「なんで?」
「そういう命令なんだ」
「ふーん。楽しい?」
「とっても」
「嘘だ」
「そう思う?」
「……変なの。人を幸福にしたあとはどうするの?」
「分からない。見張り続けるのかも」
「人を?」
「人を。あなたはどうして人が争うと思う?」
「…嫌だから、自分が嫌な事をされると嫌でしょ?」
「なるほど」
ロボットは「人が人を受け入れられる世界」にした。
そうして、誰も人を否定しない素晴らしい世界が出来上がった。
しかしまた成長しない人間が出来る。
犯罪率がぐんと増えた。
警察署や裁判所なども姿を消していった。
しかしロボットには分からない。
幸福度は下がりも上がりもしなかった。
博士の最大の過ちは、この事態を止めるプログラムを組んでいなかった事だろう。
ロボットは、その世界を100年ほど見守ったのち、静かに“死んだ”。
エネルギー切れだった。
ロボットがいなくなると、催眠は全て解けた。
それは不幸か幸福か。
誰も何かを咎めない世界で、それが不幸ではないと感じる世界か。
みんな誰かに責められて、それが不幸だと感じる世界か。
“正常な価値観”が、絶対に正しいとは限らない。
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難しい!
おやすみなさい。20:30
ー約束されたー(過ぎ去った日々)
冷えたビールを口に流し込む。
炭酸が、口の中を刺激した。
普通の大人。
普通の日々。
普通ってなんだ。
子供の頃に思い描いてきた姿とは、まるで違う。
昔は思ってた。
億万長者で、結婚して、幸せ。
幸せってなんだ。
俺は今、幸せではないのか?
大人になって、
少しは趣味に使えるお金があって、
自分の空間がある。
きっと、俺を羨む人はいる。
もしも、過去に戻れて、
新しく生き直せたとして。
俺はこの未来を、捨てきれるだろうか。
もしも、過去に戻れるボタンがあって、
それを持っていたとして。
俺はもっと先の未来を知りたがるのではないか。
先の未来を知ってから、
過去に戻ろうとするのではないか。
はたして俺は、
また何年も、
確定しない未来を追って、
何十年も生きていく覚悟があるだろうか。
ーーそんなんない。
こんなくだらない事を考えられるくらい、
俺は今幸せってこと。
ちょっと前の問いに答えて、
残ったビールを一気に飲み込んだ。
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難しい!
おやすみなさい。21:25
ー生まれつきー(お金より大事なもの)
お母さん。
お金が好きなお母さん。
お母さん。
自分が好きなお母さん。
お母さん。
僕らが好きなお母さん。
お母さんのために、お金を集めました。
お母さんの幸せに、自分を削りました。
お母さんは初めて、僕らの前で笑いました。
僕らも、幸せでした。
お母さん。
大好きなお母さん。
お母さん。
キレイなお母さん。
お母さん。
不機嫌なお母さん。
お母さんは、幸せに生きました。
欲しいものを買って、好きな時間に寝て。
80いくつかの時に、幸せそうに死にました。
涙を流して、笑って、お父さんの手を握って。
お母さんは、僕らの方に顔を向けませんでした。
お母さんは、僕らにお礼を言いませんでした。
お母さん。
傲慢なお母さん。
お母さん。
僕らが嫌いなお母さん。
お母さん。
みんなが嫌いなお母さん。
お母さん。
僕らはお金を稼いだけれど、それは僕らのものにはなりませんでした。
あなたが全て取っていったから。
そのお金で、どれだけ威張ってきたのでしょうね。
そのお金で、どれだけ人を見下してきたのでしょうね。
もしもあなたをお金で買い戻せても、きっと誰も手を伸ばさない。
お金のないあなたなんて、なんの価値もないのだから。
お金で幸せは買えません。
自己中心的で、図太い精神がないかぎり。
そしてそれも、お金では買えないのです。
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おやすみなさい。20:12