ーロボットー(愛と平和)
完全自律型ロボット。
自分で思考し、自らの意思で行動する。
それは、人間とほとんど変わらない。
四角い見た目は、一目で人間とは別だと分かる。
超絶天才な博士は、一人でそんなロボットを作った。
「人類が平和に暮らせるように、催眠能力を与えた。やっと、ついに、夢のようなロボットが」
博士は言い終わる前に倒れた。
過労のせいだった。
ロボットは、博士の息を確認して、泣く動作をしてみせた。
一通り泣き終わると、ロボットは博士を土に埋める。
ロボットに課せられた使命は一つ。
平和な世界を作ること。
ロボットは観察を始めた。
そして発見する。
大抵の人間は、些細なことに苛立ってしまう事を。
それをぶつける人もいれば、我慢する人もいる。
ロボットは、人がイライラする度に、幸福になる催眠をかけた。
幸福度はぐんと上がった。
ロボットは使命を果たしたと思った。
しかし、副作用として、人間の思考がまったく成長しないことに気がついた。
子供なんかは、まるで学習しない。
もしかして、誰も注意しないのか?
ロボットは気がついた。
だから、一度催眠を解いた。
何事もなかったかのように“元通り”。
ロボットは計算する。
しかし分からない。
怒りの原因を断てばいいのか?
そんなの、不可能だ。
……人間が人間である必要はあるのか?
ロボットは考えた。
人間という名の種族が存在し、幸福を感じていればなんの問題もない。
どうして先程、催眠を解いたのだろうか。
ロボットは考えた。
博士のプログラムのせいだ。
結論を導き出した。
倫理的に、まずいのかも。
仕方ない。
別の方法にしよう。
ロボットが外に出ていると、一人の少女が話しかけてきた。
「何してるの?あなた人間?」
「私はロボット。よろしく」
「何してたの?」
「人の観察」
「どうして?」
「人を幸福にするため」
「なんで?」
「そういう命令なんだ」
「ふーん。楽しい?」
「とっても」
「嘘だ」
「そう思う?」
「……変なの。人を幸福にしたあとはどうするの?」
「分からない。見張り続けるのかも」
「人を?」
「人を。あなたはどうして人が争うと思う?」
「…嫌だから、自分が嫌な事をされると嫌でしょ?」
「なるほど」
ロボットは「人が人を受け入れられる世界」にした。
そうして、誰も人を否定しない素晴らしい世界が出来上がった。
しかしまた成長しない人間が出来る。
犯罪率がぐんと増えた。
警察署や裁判所なども姿を消していった。
しかしロボットには分からない。
幸福度は下がりも上がりもしなかった。
博士の最大の過ちは、この事態を止めるプログラムを組んでいなかった事だろう。
ロボットは、その世界を100年ほど見守ったのち、静かに“死んだ”。
エネルギー切れだった。
ロボットがいなくなると、催眠は全て解けた。
それは不幸か幸福か。
誰も何かを咎めない世界で、それが不幸ではないと感じる世界か。
みんな誰かに責められて、それが不幸だと感じる世界か。
“正常な価値観”が、絶対に正しいとは限らない。
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難しい!
おやすみなさい。20:30
3/10/2026, 11:30:32 AM