※ホラー注意
ーついてくるよー(月夜)
「ねぇお母さん。ずっとついてくるよ」
月を指しながら母を見る子供。
少し眩しそうに目を細めて、お母さんは言いました。
「あなたが怪我をしないように、見守ってくれているんだよ」
子供は少し考え込むように俯いて、
「なんか怖いよ」
と、お母さんを見上げました。
お母さんは笑って子供の頭を撫でます。
「怖くないよ、守ってくれてるの」
「でも」
お母さんの表情が、少し固まります。
子供は悲しそうな声で続けました。
「ずうっと、覗いてくるの」
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はたして、子供は一体、なにを指していたのでしょうね?
おやすみなさい。23:45
ー合図ー(絆)
指先が、隣に並んでいたあいつの手を掠めた。
きっと、合図だった。
探るように絡まる指先が、互いの温もりを確かに求めていた。
滑る指先が、撫でるように位置を探している。
やがて視線が交わう。
長い睫毛を伏せるように、律儀に目を閉じるあいつの唇に、
優しくキスを落とした。
柔らかい感覚と、わずかにざらつく感覚が同時にあって、
それが癖になる。
柔らかい声が漏れる。
息が触れる。
絡んだ指先は離れ、変わりに手のひらが触れ合った。
指と指の間に滑り込むあいつの指。
弱々しく指先に込められる力。
二人の息づかいだけが、しばらく部屋に残っていた。
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たまにこういうベクトルも書いてみようかな。
おやすみなさい。23:53
ー君はー(たまには)
お母さんは、いつも弟を贔屓する。
弟は手がかかってしょうがないって、いつも僕にぼやいてるくせに、
肝心な時ばかり弟を頼るんだ。
頼れるお兄ちゃん。
そんなレッテルを貼られて早数年。
いっつも、ずるいなぁ。
僕の大切な弟。
憎らしくて、妬ましい。
羨ましいなぁ。
どうして、そんなに愛情を注いでもらって、
どうして、そんなに成長できないの?
お母さん、僕もたまには、甘えていいよね。
「お母さん……あのね」
「いやーー!!!!」
僕の声は、弟にかき消された。
「あーもう!ごめんね、あとで聞くから」
「うん」
ずるいな。
お母さんも、酷いや。
――――――
寝る時間。
「あ!ねぇ、さっきのどうしたの?」
お母さんは、弟を寝かしつけてからいう。
その手はずっと、弟に触れていた。
「ううん、なんでもない」
「そっか」
お母さんはいつも、僕の気持ちに気づかない。
弟の変化には、すぐ気づくクセに。
最低だ。
あぁ、そして僕も。
ごめんなさい。
こんなこと、考えて。
僕は弟の寝息と、お母さんが弟に付き添っているのをみて、毛布をかぶった。
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またやったわ。すみません。今日は、12時くらいにもう一度更新します。
こんにちは。18:45
ー部屋に残された手紙ー(大好きな君に)
もう、僕は君の前にいないかもしれません。
でも、なにかに、残しておきたいと思って、僕は今…。
支えてくれて、ありがとう。
いつも、甘えてごめんね。
書き出したらキリがない思い出も、結局みんな、この言葉に集結します。
読まれないかもしれません。
引き出しの、誰も知らないところに隠すつもりです。
逆に、見られたくないのかもしれない。
この手紙は、情熱的な愛を歌ったラブレターではないから。
いつまでも情けない僕を、
しょうがないって、思わないで。
最後になりましたが、僕は君が好きでした。
もういなくなる僕に、思われ続けるのは気持ち悪いかもしれないから…。
僕は、君が好きだって胸を張れない。
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おやすみなさい。19:45
※ホラー注意
ー祖父母の家ー(ひなまつり)
私は毎年決まった日に、祖父母の家へ“連れられる”。
奥の部屋に決まったように並ぶ「ひな人形」。
可愛らしい造形に、胸がざわついた。
こんにちは、今年も来ました。
目を閉じて、手を合わせる。
少し暖かい日差しを感じながら、きれいに正座した。
その部屋は、日の光だけが部屋の構造を浮かばせた。
小さく開けられた窓から、光が振り注ぐ。
それに当たるようにして、ひな人形と台座が置かれているのだ。
細い光に、埃が透けて見えるのがとても好きだった。
少し哀愁の混じる祖父母の家に、変わらずにあり続けるひな人形。
それは、いつだったか、初めてこれを見た時の……恐怖。
それを忘れることを許さないかのように、静かに鎮座していた。
目線は合わない。
どこを見ているのか曖昧な、
まるで消えてしまいそうな、
理想的な顔。
今にもこの家を乗っ取ってしまいそうな、
幼心ゆえに感じた違和感は、それでも年々薄れてきている。
私はいつか、この恐怖を忘れ、このひな人形に取り入られてしまうのではないか。
馬鹿馬鹿しい妄想を広げては、首を振る。
帰り際に、祖父母が悲しそうな顔をして言った。
「ひろ子の墓参り、また行きましょうね」
“ひろ子”。
それは母の名前。
……私は毎年、連れられて…。
奥の部屋から、視線を感じた。
私は決して、そこを見ることはなかった。
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あ、ひなまつりか…。
おやすみなさい。20:55