ー好きな人ー(たった一つの希望)
もう何年も止まった更新。
スマホが震えるたび、私は急いで画面を見る。
届くのは、どうでもいい通知ばかり。
たまに開くプロフィール。
そこに表示される
最終ログイン日:2025年 5月18日
存在を確認できない画面の向こうで、
あなたがまだ息をしているのを願い、
私は今日も布団に入るのだ。
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私の好きなフォローしてる人の最終更新日、もう10年前くらいです。私のやっているアプリは最終ログイン日が表示されません。今日も寝て、また一日経って、ふとした拍子に更新されてないかな。なかなかフォロー外せないんですよね…。
あなたもぜひ、更新してくださいね。安心する人もいますから…。
おやすみなさい。20:25
ー小さな敗北ー(欲望)
会社帰り。
ふと、魅力的に映る「コンビニ」。
体が自然と店へ向いた。
店内を散策すると見つける、甘いスイーツ。
疲れ切った体には最良の薬だ。
伸ばした手を、ぐっと堪える。
最近体重が増えてるんだ。
減量しないと……。
スイーツは私に訴えかける。
「私を買って」
潤んだ瞳が脳裏に浮かんだ。
これは……。
いや、私はダイエットを…。
いやいや、スイーツが泣いているじゃないか。
……しょうがない。
だって、泣いてるんだから。
変な想像をして、自分を納得させる。
今日はプリンの気分だ。
「〇〇円です」
会計を済ませ店を出る。
涼しい風が毛先を揺らした。
甘い糖分を、期待してしまっている自分に呆れつつ、
暗い夜道を軽い足取りで進む。
明日はちゃんと、減量しよう。
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おやすみなさい。20:56
ー冒険ー(遠くの街へ)
電車が揺れている。
知っている人は、どこにもいない。
ポケットの中。
折れないようにそっと入れた切符を、何度も指でなぞる。
窓の外には、いつの間にか知らない景色が流れていた。
―――――
圭太(けいた)は初めて一人で電車に乗った。
「降りる駅忘れないでね」
母の声が響く。
忘れたら、どうしよう。
手にじんわり汗が滲む。
空いた車内に、圭太の事を気にしている人は誰もいない。
胸がキュッとした。
「次は〜〇〇」
アナウンスが流れる。
知らない駅名を、何度も繰り返していた。
ここは、違うはず。
読めもしない駅名を確認しようと、圭太はポケットから切符を取り出した。
触れた硬い感触は、圭太を安心させる。
(なんとか駅……あれ見ればいいか)
ドアの上に表示される文字を見ながら、圭太は思った。
もう一時間経った気がしたのに、
時計を確認すると、三十分しか経過していないことが分かった。
落ち着こうと、靴を見た。
新品の靴を交互に揺らす。
特にすることもなく、足元や窓の外を見ながら、圭太はひたすら待っていた。
実際に十分くらい経った時、
「次は〜〇〇」
と、聞こえる。
弾かれたように顔をあげた。
この駅か?
圭太は切符の文字と、ドアの上に表示された文字を交互に見比べた。
良かった、ここだ。
電車が止まるのを待ってから、圭太は立ち上がった。
緊張していたのかもしれない。
ドアが開く。
圭太は一歩足を外に出した。
もう一歩。
そう思ったとき、なにかに躓いた。
あ。
体が前に傾いた。
新品の靴、汚れちゃうかな。
その瞬間、
誰かが圭太の腕を掴んだ。
――――――――――――――――――
切符って、確か駅名書いてありましたよね…?
おやすみなさい。21:34
ー私の世界ー(現実逃避)
私はある時気づいた。
生きる世界を変えられることに。
異世界に行くとか、そんなんじゃない。
人の反応が変わるんだ。
例えば嫌いなあの人に
「これ…」
って物を差し出すと、いつもならダメ出しをしてくるのに、この世界だと過剰に肯定してくる。
それはストレスがたまらない素晴らしい世界。
現実とも同期していて、反応だけが違う。
私はこの世界を“逃避先”と名付けた。
私は理想の世界へ行けるように念じながら、ゆっくり目を閉じた。
―――――
俺は、目を開けた。
その時いきなり、視点が変わった。
気がした。
いつも通りの景色は、俺のそんな考えを否定している。
しかし、違和感は当たっていた。
嫌な人と、良い人がいる。
この違いに気づいた時、俺は初めて呼吸をした気がした。
例えば、ぐちぐちダメ出しをしてくる人がいる。
俺は人に気を遣おうと、努力するようになった。
例えば、些細な変化に気づいてくれる人がいる。
指先の絆創膏に気づいて気にしてくれる人に、胸がじんわり熱くなった。
噛みしめるように、目を閉じた。
―――――
目を開けた時、私はちゃんと現実にいた。
約1ヶ月ぶりに来た現実は、数段濁って見えた。
出社する。
私はなぜか、周りの人から「気の遣える人」という評価をもらっていた。
しかしそれはすぐになくなり、周りの人からのあたり方もいつも通りになった。
これだから現実は。
避難所での生活は実に快適だった。
誰も否定しないし、転んだらみんな駆け寄ってきてくれる。
わざと嫌なことをするやつもいない。
髪を染めても、怒られなかった。
……というか、反応がなかった。
まぁ、それは、しょうがない。
…とにかく、俺がそんな世界から帰ってきたのはお金がなくなったからだ。
どうせ現実じゃないんだし…と思って散財しまくった結果、貯金が尽きた。
あーあ、戻ったら元通りになっていないかな。
―――――
また、視点が変わった。
俺は自分の姿を見て驚愕した。
髪が、変な色に…。
そして、貯金はすっからかん。
あくせくして働いたのに…。
俺がいなかった間、強盗が入ったのかもしれない。
久しぶりの部屋には、生活感があった。
物が散らかっている。
そういえば、俺が行ったあっちの世界の部屋も、散らかってたな…。
もう一回、なにかの間違えで、あっちの世界に行けないかな。
…はぁ、どうやって生きていこう。
―――――
私は約1ヶ月もの間現実で過ごしたが、耐えられなくなっていた。
もう一度、避難先へ。
―――――
目を開いた時。
俺は瞬間的に、悟った。
別の世界に、俺と同じ意識をもつ人間がいると。
そして今、そいつが俺と入れ替わっている。
もう、俺はこの世界を出るつもりはない。
散らかったものを整えながら、決心したように頷いた。
―――――
私の避難先は、貯金が貯まっていた。
……仕事が変わっている。
私は仕事を変えていない。
……どういうことだ?
胸騒ぎがして、急いで現実へ戻るように念じた。
しかし、戻れない。
どうして?
その時初めて、私は
私以外の私という生命体が
“こちら側の現実”を選んだのだと理解した。
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今日凄い眠いんですけど…。誤字あったらごめんなさい。
おやすみなさい。21:15
ー私の君ー(君は今)
私は毎日君に会う。
君と会う時はいつも、決まったフードコートで君の着ている決まった服装を褒めるところから始まる。
店員の姿はなく、いつの間にか、決まった料理が運ばれて来て机は一杯になる。
君は一度も狂わない。
決まった時間に瞬きをして、呼吸をして、体を揺らす。
君の頼んだドリンクは、決まった時間にシュワッと弾け、決まった時間に氷が揺れる。
君は静まりかえった店内で、
「映画みたいだ」
と控えめに笑う。
私もそれに合わせて決まったように笑った。
君は変わらない。
毎日会っているくせに、学生の頃と変わらない笑顔で
「久しぶり」
私はそれに少し眉を下げる。
異常なほど冷え切った店内。
真夏なのだと認識できるのは、微かに聞こえるセミの声と、窓ガラスの向こう側。
滲んだ景色のおかげだった。
まるであの頃の、夏休みのよう。
「今、なにしてる?」
私は聞く。
決まったみたいに。
君は答えない。
白い光が、瞼の裏に見えた気がした。
あ。
いつもの光が目に入った。
時計は早朝を指している。
今は冬で、あれは夢。
私はそれを、一拍遅れて認識する。
写真の中で、君が笑っていた。
私は再び寝てしまおうと、布団に入り直した。
もう一度、君に会いに行こう。
そして、答えを聞かなければならない。
もういない君。
私は所詮、未来の自分の行動をなぞっているに過ぎない。
君はきっと、私とは違う。
どこまでも自由で、
同時に未来が存在しない。
何も知らずに笑う君が、私はずっと羨ましい。
また、フードコートで君が
「久しぶり」
って笑ったんだ。
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おやすみなさい。21:10