辛いこと

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ー冒険ー(遠くの街へ)

電車が揺れている。
知っている人は、どこにもいない。

ポケットの中。
折れないようにそっと入れた切符を、何度も指でなぞる。

窓の外には、いつの間にか知らない景色が流れていた。

―――――

圭太(けいた)は初めて一人で電車に乗った。

「降りる駅忘れないでね」
母の声が響く。

忘れたら、どうしよう。
手にじんわり汗が滲む。

空いた車内に、圭太の事を気にしている人は誰もいない。
胸がキュッとした。

「次は〜〇〇」

アナウンスが流れる。
知らない駅名を、何度も繰り返していた。

ここは、違うはず。
読めもしない駅名を確認しようと、圭太はポケットから切符を取り出した。
触れた硬い感触は、圭太を安心させる。

(なんとか駅……あれ見ればいいか)

ドアの上に表示される文字を見ながら、圭太は思った。

もう一時間経った気がしたのに、
時計を確認すると、三十分しか経過していないことが分かった。

落ち着こうと、靴を見た。
新品の靴を交互に揺らす。

特にすることもなく、足元や窓の外を見ながら、圭太はひたすら待っていた。
実際に十分くらい経った時、

「次は〜〇〇」

と、聞こえる。
弾かれたように顔をあげた。

この駅か?

圭太は切符の文字と、ドアの上に表示された文字を交互に見比べた。

良かった、ここだ。

電車が止まるのを待ってから、圭太は立ち上がった。
緊張していたのかもしれない。

ドアが開く。
圭太は一歩足を外に出した。
もう一歩。

そう思ったとき、なにかに躓いた。

あ。

体が前に傾いた。
新品の靴、汚れちゃうかな。

その瞬間、
誰かが圭太の腕を掴んだ。

――――――――――――――――――
切符って、確か駅名書いてありましたよね…?
おやすみなさい。21:34

2/28/2026, 12:34:07 PM